実験
翌日。
枠沢もモンローたちも建物の屋上にいた。
研究員たちもいる。
「どうするつもりだ」枠沢。
「まあ見てろ。
始めろ」
ジャックに。
ジャックは-----リドニテスに。
全員
息を飲んだ。
何度見ても。
ジャックは等身大のリドニテスに。
「あそこに大きな金属の塊があるでしょう」
スタールが客たちに説明する。
戦車も数両
その付近に置かれている。
中古品だ。
「あれが標的です。
あれは特殊金属製。
ジャック」
ジャックは。
リドニテスは。
「飛んだ」ロイ・スミス。
「あれが重力推進か」
「そうです」
ジャックは上空へ。
巨大化していく。
「この眼で直に見ても
信じられんよ」リーム・ケラー。
リドニテスは上空を旋回。
着地した。
リドニテスが標的の一つへ。
「レーザーか」
「そうです」
一撃で溶け崩れる。
戦車など一瞬に。
次の目標へ。
今度は光の帯が命中した途端
それは白熱化。
明らかにレーザーとは違う。
高熱を発しながら
溶け崩れるように
標的は消滅した。
「どういう事だ」
「レーザーが命中しただけであのように。
そんな事。
ありえない」
口々に。
「怪獣の。
ゴーザスの時と同じだ」
クルール市の件はテレビで。
「あれは
特殊な重力波を組み合わせた
重力波レーザー。
物質にある組み合わせの重力波のスペクトルを照てると
物質が反物質に変わります。
対出現ですか。
まあアレを応用したようなものです。
いかなる物資であろうとも
物質を反物質に変化させ
さらに反物質反応を起こさせ
メルトダウンさせる、
リドニテスの必殺兵器です」
「反物質反応?」
「では
大量のガンマー線が飛び出すのじゃ。
この距離で-----我々はだいじょうぶかね」
「ご心配なく。
全て双極子理論によって
相殺されるようになっています。
中性子にしろ
別のガンマー線を発生させて
陽子と電子に崩壊させていますので、
ほんの十数メートルも離れれば
もうだいじょうぶです」
「なるほど」
周囲に配置された様々な計器のデーターも
それを裏付けている。
“もっとも
反物質化すると言ってもわずかな量だが
あまり多いと-----大変な事に。
それに-----技術的にも限界がある”
「教授」
その時、傍らにひかえていたリックスが。
「なんだ」スタール。
「侵入者のようです」
「何?」
スタールが耳をすます。
“いた”
「侵入者?」ロイ・スミス。
「それは-----」トム・ワット。
「時期が時期だけに
今これを知られては」
「どこだ。
すぐに捕まえなければ」リーム。
モンローはリックスへうなずいた。
リックスは
急激に。
「彼もリドニテスか」リーム。
「けがはさせるな」モンロー。
“例の日本のテレビ局員のようだ”
等身大のリドニテスは
首を縦に。
空へ。
「実験は中止だ」スタール。
「そうだな。
これだけ見れば」ワット。
ジャックにも聞こえたようだ。
巨人は等身大へ。
リックスもすぐにもどって来た。
両脇に二人の男女をかかえている。
「放してよ」女性が。震えている。
「やめろ」男。
モンローは二人お見るや。
「君たちか」
大きなため息が。
困ったという表情。
リックスは二人を放した。
「教授。
こんなものを持っていました」
リックスの手にはテレビカメラも。
「彼らは。
知り合いか」客の一人。
「日本の。
テレビ局の人らしい」スタール。
「テレビ局?」
全員。困惑気味。
「困った事をしてくれた」スタールが。
二人の脇には二人のリドニテスが立っている。
「やはり。先生が
巨人を」御刀哲斗。
「怪獣もですか」季沢シオリ。
スタールも。
他の者も。
「こうなっては隠しても仕方ない。
そうだ。
巨人と怪獣は
私が造った」
「では、クルール市で。
-----怪獣を-----暴れさせたのも」
哲斗が恐る恐る。
スタールはニヤリ。
「アレは不幸な事故だった。
飼っていた怪獣が逃げ出した。
それを処分するためにリドニテスの一人。
巨人の事だ。
金色の巨人。
リドニテスを差し向けたんだが。
あの○○者が
クルール市で怪獣が暴れる前に
処分するどころか。
事もあろうに
自分でもあのような事を。
まことに申し訳なかったと
思っている」
その言葉に二人は幾分安心した様子。
「奴は今。
自室で謹慎処分にしてある」
「それでこの二人の処分は」トム・ワット。
「処分といっても」リーム。
「どうするつもりだ」枠沢も。
「枠沢先生」
二人は枠沢に気づいたようだ。
「先生も。
やはり」シオリ。
「仲間だったのか」哲斗。
枠沢は-----口ごもった。
「イヤ、枠沢は関係ない。
怪獣とリドニテスが暴れたので、
私が造ったのではと気にして
あわててここへ来ただけだ」
哲斗とシオリは枠沢を。スタールを。
かわるがわる。
枠沢もうなづいた。
「そうでしたか」哲斗。
「とにかく
この二人の処分は私にまかせてくれ」モンローが。
「どうするおつもりですか」ワット。
「仲間になるように説得してみる」
「仲間というと
彼らもリドニテスに」
「何の働きもない者を。
かね」
「我々は反対だ」口々に。
スタールは渋い表情。
「どの道
地球人全てをリドニテスに。
もちろん、本人の希望でだが。
だから-----問題ないのでは」
モンロー。枠沢の方を。
「教授」ワット。
「それはあくまで-----商売として。
協力者の我々を無視してもらっては」
「それは充分にわかっている。
しかしこの場合。
他に方法が」モンロー。
「それにこの二人。
リドニテスになるのを
拒否した場合はどうします」
「まさか。
そんな人間。いるわけも。
アッ、イヤ」
モンローは枠沢を。
「その時は」
「その時は?」ワット。
「記憶の一部を消せばいい。
あまり-----やりたくはないが」
「それなら最初から。そうすれば」
「とにかく私にまかせてくれ。
リックス、ジャック。
いつまでその姿でいるつもりだ。
それと-----御刀君に季沢君だったな。
枠沢、お前もいっしょに来てくれ」
リックスとジャックは元の姿へ。
哲斗もシオリも声もない。
残りの者たちは。
「教授も甘いな」ワット。
“こんな甘い奴ならどうとでもなるか”
「しかし。
殺すわけにもいかんし」
「ンー。
イヤ、それはそうだ。
まあ、教授にまかせておけばいいだろう」ワット。
「それに下手な事をすると
後がウルサイし」
「それはそうだ」
何とか。
治まったようだ。