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会合

 広い会議室には十人ほどの男が。

 スタールが部屋に入るなり。

 「スタール教授。

 いったいどういう事か説明願いたい」

 「あのリドニテスは」

 「怪獣が逃げ出したのは」

 矢のような質問が。

 「怪獣の事は」 

 枠沢≪わくさわ≫がスタールの耳元で。

 「ああ、みんな知っている。

 何ヶ月も前に完成していたんだ。

 知らせておかないわけにはいかないだろう。

 リドニテスの事は知らないがな。

 リドニテスが完成したのは

つい最近だし、

まだ彼らには話していない」

 スタールは向き直り。

 「皆さん、お静かに」

 一同、一斉に静まり返った。

 全員、スタールの言葉を待っている。

 「今回の事件はまことに不幸な事故でした。

 怪獣の管理は徹底していたはずなのですが、

その内の一頭が不運にも逃げ出し

あのような大惨事に」

 「本当かね。

 まさか、

 ここにいる誰かとはかって

わざと逃がしたんじゃあ」 

 ロイ・スミス。

 有名企業のオーナーだ。

 「誰のことを言っているんだ。

 まさか。君は私がそんな事を」トム・ワット。

 「君が?

 まさか。

 そんな事は言ってないよ。

 私はその可能性があると言ったんだよ。

 誰かが

軍事目的に利用できるかを確めるために

怪獣を逃がしてあのような事を。

 宣伝にはもってこいだしね。

 だから言っていたんだよ。

 そのような危険な人物は

最初からはずせとね。

 しかし君は-----。

 確かーーーーー。

軍事産業の会長だったね」

 トム・ワットはその言葉に真っ赤。

 「貴様こそ。

 リドニテスの製造権を独占しようと。

裏でコソコソと。

○○研究所で何をしているんだ。

あの時、ハズしておけば」

「貴様こそ。

似たような事を」

 「待ってくれ」

 スタールが割って入った。

 「ここは争う場ではない。

 今はそれよりも

この事態にどう対処するかだ。

 それと今後の対応と」

 「とにかく教授。

 我々は、当初の約束どおりの

利益配分を要求します」ロイ・スミス。

 「もちろん。そのつもりです。

 他の皆さんもそれでよろしいですか」

 「私はそれでかまわない」ワット。

 「もちろんだ」

 口々に

 「後は補償問題か。

 怪獣が暴れた。

 -----。

 いや、何でも」

 誰かがポツリと。

 “まあ責任はモンローが取ればいいし

必要なデーターはすでに確保してある”

 「補償問題は

リドニテスの薬から得られる利益に比べれば

たいした事は」

 「それでも文句を言う奴には

薬を売ってやらなければいいんだし」

 「なるほど」

 「それはそうだ」

 “リドニテスになってしまえば

後はどうとでも”

 「それでは-----話を」

 「待ってくれ。

 少し質問があるんだが」

 リーム・ケラーという大財閥の会長だ。

 「なんですか」

 「そのリドニテス。

 完成すれば、

我々もそうなれるという事だったが」リーム。

 ジッとスタールの目を。

 「なれるのかね」

 場内が静まり返った。

 「もちろん。

 不完全ですが

すでに完成しています」

 「本当かね」スミスが。

 「本当なら-----。

 ぜひ成りたいものだ」

「大丈夫なのか」

「副作用とかがあるとかないとか」

「その検証は」

 「それよりも-----あのリドニテス。

 彼に会わせてくれ」

 口々に。

 「彼は今、自室で謹慎中です。

 あのような事件を引き起こした後ですから」

 「謹慎中。

 しかしだよ。

 我々がこうして要求-----。

 いや。頼んでいるんだ。

 いいだろう」

 「それで、彼をどう処分するつもりだね」

 「それはまだ。

 決めてはいません。

 それもこの場で決定したいと」モンロー。

 「バーザス政府に引き渡すしか」

 「リドニテスを政府にかね」

 「しかし他にどういう方法が」

 口々に。

 「処分などはどうでもいい。

 とにかく見てみたい」

 「会わせてくれ」

 「我々にはその権利があると思うが」

 スタールはニヤリ。

 隣りにいたジャックをチラリ。

 時間は。

 時計を確認する。

 さっきジャックが変身してから

すでに数時間。

 充分だ。

 ジャックに合図を。

 ジャックは。

 ジャックは劇的に変化を。

 この場にいた全員

アッと息を飲んだ。

 「すばらしい」

 「彼もリドニテス-----なのか」

 全員、席を立ち。

 ジャック-----リドニテスの方へ。

 「気-----気分はどうだね。

 何か変わった事は」

 「だいじょうぶなのか。

 何か副作用のようなものは」

 「いえ。全く何の異常もありません。

 全くだいじょうぶです。

 副作用もありませんし

気分も爽快そうかいです」

 ジャックがそう答えた。

 「しかし

あんなに急激に変化して、

細胞分裂というか

身体自体に負担はないのかね」

 「その心配はありません。

 発生する熱も有害物質も

全て遺伝子レベル、細胞レベル、あるいは肝臓で

それらを全て吸収、分解、

無害化できるようになっていますので」モンロー。

 ジャックの肩を、胸をこづいている者もいる。

 「例えば

何ヶ月も経って異常が生じるという事は」

 「それは

これから。

 しかしだいじょうぶですよ」モンロー

 自信たっぷりに。

 「巨大化は」

 「それも可能です。

 しかしここでは」

 「なるほど」

 「確かに

ここで巨大化されては」

 「それで我々はいつ」

 「それは

今すぐにでも」

 スタールは金属のケースを

例の錠剤を取り出した。

 「どうします。

 今ここで飲まれますか。

 これを飲めば

人の遺伝子は全てこの錠剤内の酵素の働きで

次々にリドニテスの遺伝子へと

置き換えられていきます。

 様々な酵素の働きで

人の第二周期生物の遺伝子が

そのまま金属生物のものへと置き換わります。

 そして全身の細胞も

同時に金属周期元素へと。

 もちろんリドニテスの持つ能力は

新たに付け加わりますが」

 全員、顔を見合わせた。

 人数分-----ある。

 やはり不安らしい。

 「我々は-----もう少し」

 「それで、リドニテスは

彼-----ジャックと

誰だね。もう一人は。

 その謹慎中の」

 「クルール市で暴れた」

 「エリオットですか」スタール。

 「エリオットか」トム。ワット。

 「エリオット・スパークス。

 奴か。

 ワット会長がここへ送り込んだ。

 確か、

研究員」ケラー。

 「そうだ。確か」スミス。

 「何が言いたい。

 とにかく、ワシは知らん」ワット。

 「お静かに

 ここは争う場ではありません。

 それにリドニテスはあと三人」

 「他にもまだ」

 「全部で五人か」

 「そして私も」スタール。

 「教授も。

 もう」

 「なるほど」

 「教授自身がリドニテスになったのなら

我々も」

 「だいじょうぶですな」

 失敗例を知っているだけに。

 失敗した者たちは今。

 一同、安心した様子。

 「それでその薬。

 いつ、飲んだのかね。

 ジャック君」

 「それは-----。

 半月ほど前ですか」ジャック。

 「半月か」

 一同、目を伏せた。

 “まだ半月か-----”

 “それでは-----”

 「それで-----失礼ですが。

 先程から気になっていたのですが。

 そちらの方は」

 ケラーが枠沢に気づいた。

 全員、枠沢を。

 「教授。困りますなあ」

 「部外者を」

 「誰を入れるかは

教授自身が決めればいい事でしょうが。

 どこかの産業スパイという事もあります。

 そういう事は我々に一応

ことわってからにしてもらいませんと」

 「身元を含め

イロイロと調べてからでないと」

 「彼ならだいじょうぶ。

 私の友人の枠沢です。

 ご心配なく」

 「枠沢?」

 「じゃあ、あの枠沢教授。

 教授の共同研究者でいらした」

 「それは失礼しました」

 「枠沢先生ならば

我々も大歓迎です」

 かわるがわる握手を求めてきた。

 「それで

リドニテスの件は」モンロー。

 「それは」

 「もう少し考えさせてくれ」

 やはり怖いらしい。

 何かあるのか。

 「では御決心なさった順にという事で」

 モンローは金属ケースをしまった。

 全員

その金属ケースから眼を離せない。

 モンローの上着のポケットにしまわれてからも。

 他の議題も

少し様子見

という事で決着したようだ。

 客たちは全員。

 忙しいはずだが

数日間か-----数週間か

ここに泊り込む事にしたらしい。

 全員。用意された部屋へと消えて行った。





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