2-3-02 装甲
枠沢は某航空機メーカーの
工場にいた。
工場の隣りには飛行場もある。
怪獣騒ぎのため
哲斗や防衛省の幹部は
遅れて到着した。
空自のパイロットもいる。
外国人の姿も多数見える。
「これが戦闘機ですか」守山。
守山防衛大臣は
眼前の戦闘機をシゲシゲとながめた。
機体の外装に触れる。
「特殊金属製の機体です」
「しかしこうしてあらためて見ると-----。
大きいね」
「はい。
現有の戦闘機より
二回りくらいは大きいかと。
武装としては
軽BBキャノン。
これは大型のBBキャノンを
戦闘機用に改良を加え
小型化したものを
胴体の左に一門。
さらに重力波レーザーを
右側に一門
装備しています」
ポットで覆い外付け装備している。
BB砲などの兵器が更新された際
換装しやすいようにだ。
しかし軽とはいえ携帯BB砲よりは
はるかに重い。
「枠沢先生にはBB砲の軽量化と
威力の増大につとめていただいていますが」技官の一人が。
「それは」
最重要課題だ。
「しかし-----」枠沢。
「何か」
「レーザー発振菅の効率化を図って
重量を下げるのはいいが。
それならそれで浮いた重量を
威力を増す方にとなるようだし」
「もちろん-----そうなりますか」陸幕長。
「そうなってきますと-----
少しくらい重量が増加しても威力重視となってくるようで」
「まあ、多少重くても威力の大きい方が。
怪獣を倒せなければ意味がないですし。
それで被害が減るのなら」
「現場からは-----重量などどうでもいい。
とにかく怪獣を倒せる武器を
という声が多いのも事実ですし」
そういう声しか聞こえてこない。
「個人で携帯出来なくとも
車載という手もありますし」
「二人がかり、三人がかりで担ぐ
という手もあります」
「長距離徒歩で移動する必要もないでしょうし。
対怪獣戦にかぎっていえば」
「怪獣の近くまではヘリなり車両なりを
使えますし」
「もちろん-----そうでしょう。
一応、運搬方法を目安に。
一人ならこの程度の重量。
二人でかつげば、三人なら。
車載すれば。
といった具合に現場の意見も聞きながら
何キロくらいまで大丈夫か。
現在、検討していただいていますが。
それをもとに強化はしているのですが」枠沢。
「枠沢先生には精力的に
開発を進めていただいております」技官が。
「私としては個人用携帯という所にこだわりたい
気持ちも多少あるのですが-----。
その手の○○モノにはないですが
-----。
それで怪獣が倒せたらと-----子供心に。
そういう思いでBB砲を作ったのですが。
アッ。イエ」ゴホン。
「怪獣を倒せなければ意味がないですし。
被害も-----。
ここは威力重視という事で開発を」
「とにかくその線でお願いします」統幕議長。
「それで」
「BB砲などというモノは
どの○○を見ても」
「BB砲などというモノ。
出てこなかったはずだ」小声でヒソヒソと。
「何がなんでもその手のキワモノ映画の通り
というわけでもないのか」
「しかし-----あまり叩くと」
「枠沢先生。
BB砲の研究をやめられかねんか」
「それはあるか」
「その手の手厳しい方々しだいか」
この軽BBキャノン。
海自の哨戒機等にも搭載予定だ。
しかし-----数が。
外国の武官たちも
機体のあちこちを
コックピット内を
手に持つカメラに収めている。
「重力推進装置はどこに」守山。
設計図は何度も見てはいるが。
「それは機体の中央より
少し後方に。
ちょうどこのあたりです」技官が。
機体は格納庫の外へ
飛行場へと移された。
全員かたずを呑んで
見守っている。
テストパイロットが乗り込んだ。
元空自のパイロットだそうだ。
機体が-----フワリと浮かんだ。
垂直に離昇する。
全員の口から
感心したような声が漏れた。
機はゆっくりと
前後左右上下へと。
「UFOみたいだ」哲斗。
「しかし操縦系のコンピューターの
プログラムと言うか
飛行方法がまだ手探り状態だしね。
今までのジェットエンジンとは違い
重力推進だしね。
ジェットエンジンでは推力の方向は
一方向だが-----まあベクターというのもあるが。
この重力推進機関は
推力の作用する方向がね。
それに合わせた飛び方があるしね。
だから-----現有の戦闘機のように
完全にコンピューターで
飛行をコントロールするところまでは
いっていない。
それをするには
何年もかかるらしい。
開発を急ぐ必要があったのでね」枠沢。
推力の作用方向は全方位ではないにしろ
前後左右上下その他だ。
「それで人の手で操縦を」哲斗。
「飛行のスタイルを
UFOのようにではなく
今までの航空機と同じに」シオリ。
「そうだそうだ。
防衛省によるとね。
それをするには
またパイロットを
イチから訓練しなおさなければ
ならないしね。
そんな時間的余裕は
今の我々にはないしね。
だから操縦方法も
飛行スタイルも
出来うる限り
今までの戦闘機に近づけてある。
もちろんそれプラス
静止、垂直上昇、下降等は可能だがね」枠沢。
機が水平に飛行しだした。
「低速での安定性は-----
問題ないようですね」技官。
「フラッターにしろ
問題が起きようもありませんしね」技官。
「どうして」シオリ。
「いえ-----
厚さ数十ミリの特殊金属製の外板。
桁にしても
それに合わせて頑丈すぎるくらいに
できていますし。
従来の戦闘機のように
運動性能を高めるために
軽くする必要もありませんし。
強度をギリギリまで落して
一つ間違えば
空中分解するかもしれない
というような造り方はしていませんし」技官。
「よくあるんですよ。
強度を落しすぎてね。
飛行中に異常な振動が起きたり
する事が。
飛行するという事は
いわば風にあおられているわけだし。
速度が増せばそのあおられる度合いが
増えるわけです。
だから機体にしろ翼にしろ
それなりに強く、その煽りに耐えられるように
作らなければならないわけで。
強度不足になれば
翼なり何なりが風に煽られて
ガタガタガタガタと振動しだすわけです。
振動が激しくなると
とても操縦なんて。
それがひどくなると壊れてしまう。
そういう事です。
昔のゼロ戦はそのあたり-----。
とことん削っています。
軽くするために。
軽くすればするほど
運動性能と言いますか
旋回性能がよくなりますので。
しかしこの機体?は。
頑丈すぎて」
「どうしてそのように」哲斗。
技官は枠沢を。
「怪獣相手に戦うためだよ。
空飛ぶ戦車という形にしなければ
怪獣の光線兵器の一撃で
やられてしまうしね。
まあ空自のパイロットの中には
装甲などどうでもいい。
運動性能さえよければ
怪獣の攻撃などかわして見せる。
という意見もあるようだが。
特殊金属を使えば
もっと軽くもできるしね。
しかし今回は
私の意見を採用してもらったわけだよ」枠沢。
「しかし先生。
その手の○○モノでは
戦闘機は怪獣の一撃で」誰かが。
「しかし
通常の戦闘機と違い
蒸発というか消滅はしないだろう。
ある程度の強度がなければ
特殊金属製でも一瞬で蒸発という事に
なりかねないしね。
その点を考慮してね」枠沢。
「それは-----ありますか」
「ではこの戦闘機も
そのように」哲斗。
「怪獣の攻撃で
消滅はしないが-----。
戦闘不能に」シオリ。
「いや-----。
私としては
そうしたい気持ちもあったんだが。
その手のモノのようにね。
しかしいくら何でもね。
だから多少の攻撃には
耐えられるようにはなっている。
要は相手次第-----。
ということだ」枠沢。
「カテゴリー-----ですか」シオリ。
「まあ、そういうことだ」枠沢。
「だから-----幸か不幸か。
試験飛行でも
ハレモノに触るように
一つ一つ段階を踏んで
行っていく必要もないしね。
ここの桁は大丈夫か。
板厚はどうだとか。
一応、計測器は
積んではいますがね。
もう、最大速度で飛んでいますよ」技官。
機は高空へ。
見ている技官たちはハラハラ。
いつもと違う試験飛行風景に
わかってはいても。
「機体が横に振られるとか
頭が振れるとかの妙なクセとかは-----。
どうかな」
ここからではわからない。
「ですがよくこの短時間で
造り上げられましたね」哲斗。
「いや--それは」技官。
「いや。枠沢先生がエンジンにしろ
機の外装というか
機体にしろ
ほぼ造っておられたので」別の技官。
「後は現有機のコンピューター関係や
レーダー、ファイアーコントロールシステム
等を流用しただけだよ」
「どういう?」
「いや。
特殊金属というのは
鋳物やプラスチックの成形と同じで
型を造って
そこへ何種類かの特殊金属液を
流し込むような方法で造っていきますので。
コンピューターで機体の形状を
デザインしまして
それに合わせて
鋳型をメーカーに依頼しただけです。
現有の戦闘機の構造を参考にね」枠沢。
「なるほど」
「BB砲関係と同じで
後は組み立てるだけ
ということですか」
「いえ-----そうでは-----。
やはり戦闘機となると複雑で
とても個人では-----」枠沢は。
“やる方法はあるが-----ここでは。
この地球上では”
「しかし-----。
本当にあの鋳型をといいますか
それを元に戦闘機を造るとは思いませんでしたよ。
私としては
防衛省の方で新く設計してもらって
それでやるものだとばかり
思っていましたので。
まさか素人の設計したものを」枠沢。
「いえ
時間もありませんでしたし。
これだけ頑丈なら
大丈夫ですよ。
コンピューターで空力的に
解析しましたが
解析も何も頑丈すぎて
壊そうにも
壊れませんしね」
「風洞実験にしても
機体表面の空気の流れの乱れも
ほとんどありませんでしたしね」
「しかし
次世代機は我々の手で
もっといいモノを
造ってごらんにいれます。
ご心配なく」技官。
「ご存知のように
すでに-----といいますか。
先生の重力推進装置を
提供していただいたとと同時に
設計にはいっていますよ」
その設計過程は-----
枠沢には見せてはくれない。
まあこちらも忙しいこともあり-----。
「それに-----レーダーも射撃システムも
全て流用品ですし」技官。
「例のフェーズド・アレイ・レーダーですか」シオリ。
「はい。もちろん」
「先生の開発なさっていた
レーダーですか。
あれはまだ開発に時間が」技官。
「○○波レーダーか」哲斗。
「ですがすばらしい。
運動性能ですね」外国武官。
「とんぼ返りでも何でも」武官。
「はい。
重力推進ですから
空中静止も可能です」枠沢。
「我国でも製造中ですが」アメリカの武官。
アメリカ、バーザスともに
すでに完成しているというはなしだ。
しかし本当のところは
枠沢には知らされてはいない。
「あの翼でよく」
「いえ、重力推進ですので
翼の揚力によって
浮いているわけではありませんので。
翼も-----なくてもいいのですが。
しかしその手の○○映画では-----
やはりないと-----。
いえ、なんでも。
まあ、極端に言えば
戦車に重力推進を取り付けて
そのまま飛ばしても-----
いいのですが。
戦車が空を飛んで
怪獣を攻撃するというのは
その手の○○モノでも
何を言われるか」枠沢。
考えただけで-----
思わず首を傾げてしまう。
まあ-----慣れれば大丈夫-----というモノもあるが
この件に関しては
どうだろう。
「戦車をですか」技官。
「まさか」武官。
「いえ、本当に。
その方が装甲も厚いですし。
しかしそれを飛ばす以上
空気中では空気抵抗がありますし
やはり運動性を考えますと
飛行機のように流線型にした方が
良いかと考えまして」枠沢。
その手の○○モノでも戦闘機は-----。
しかしUFOのような飛び方をさせれば
戦車でも。
-----。
イヤイヤ-----
このまま行こう。
この連中、気づかないだろうな。
もし気づかれれば
どうなるか。
そんなモノ、作らされた日にはーーーーー。
何と言われるか。
あの〇〇でもその手の△△でも。
そのようなモノはなかったし
どうするか。
まあいいか
その時はその時だ。
「なるほど。
戦車の重力推進ですか」
「まあ、大気圏外に。
宇宙へ出てしまえば
形状など
どうでも良くなりますが」枠沢。
「宇宙ですか」武官。
「なるほど」
「ですが宇宙に出るとしましても
大気圏内ではやはり-----。
大気圏を出るまでは
流線型の方が。
ロケットのように。
何せ、音速の何倍もの速度が必要ですし
その方がいいのでは」武官。
ロケットの発射シーンを思い浮かべながら。
「それに大気圏再突入の際には
抵抗をできる限り大きくして
スピードを殺しながら
大気圏に突入しなければ。
それこそ燃え尽きてしまいますし。
スペース○○○でも
そうなっていますし。
そうでなければ
いくら耐熱タイルでももちませんし」別の武官。
「特殊金属の耐熱温度は」
枠沢も技官もニヤリ。
「ご心配なく。
機は重力推進で飛んでいますので。
その気になれば
ゆっくりと垂直に上昇して
宇宙まで行って
ゆっくりと垂直に下降して
帰ってこれますよ」技官。
「そうか」
「ロケットの場合
宇宙から帰ってくる時には
燃料がなくなってしまっているから
あの様な方法で」武官。
“そうだった。
言われてみれば-----
それが普通だと-----”
「燃料があれば
ロケットを吹かしながら
ゆっくりと降りてくれば-----」
「もっと高性能の燃料でもあれば別だが」
行きも同じだ。
「しかし重力推進は」
「その心配がないのか」
機が着地した。




