無人島
スタールはタクシーを見送った後
枠沢を振り返った。
「さあ。邪魔者はいなくなった」
スタールが口を開いた。
「行こうか」
枠沢は別棟の方へ行こうとした。
「枠沢。そっちじゃない」スタール。
「エッ?」
「こっちだ。
急ごう。時間があまりない。
大事なスポンサーを待たせてはな」
そう言うと研究所の中へ。
屋上へと。
そこにはヘリコプターが待機していた。
「どこへ行くつもりだ。
あの別棟で研究をしているのじゃ
ないのか」枠沢。
「ああ、お前がこの前来たときはな。
何年にもなるな。
もう」
なつかしそうに。
「あの時は助かったよ。
どうしてもわからないところがあってな。
枠沢がいなければ」
「イヤ。そんな。
それで」枠沢。
「別棟か。
今は倉庫になっている。
内部の装置は全て別の場所に移したよ」
「どこへ」
「これから行くところだ」
スタールはそう言うとスマフォの地図アプリを。
「ここだ」
無人島を指差した。
ヘリは無人島へ。
ヘリの中でスタールが口を開いた。
「困った事になった」
「やはりあの怪-----。
いや」
枠沢はヘリを操縦しているパイロットに気づいた。
「いや、構わんよ。
彼は全て知っている」
「と言うと」
「無人島で研究している。
何人かの協力者と一緒にね」
「なるほど。
それじゃあ、怪獣は」
「そうだ。私が造った。
リドニテスもだ」
「リドニテス-----か」
枠沢にも思い入れが深い名前だ。
「この名はお前が付けたんだったな。
日本のテレビアニメをもとに。
まあいい。
やっと成功したよ。
苦労したが。
理論も全て二人で検討した時とほぼ同じだ。
基本的にはな。
あれから相当研究したが
その成果ももちろん盛り込んである」
「とにかく。おめでとう」
枠沢は感無量の表情。
スタールもそれを見て満足げ。
「枠沢。お前の方はどうなった。
研究の方は。
あんな形でケンカ別れしたが
私も後悔しているよ。
もっと話し合えばよかったとね」
「全人類をリドニテスにか。
私はその考えには反対だよ。
やはり人は、人として生まれたからには
人として生きるべきだよ。
いくら科学が発達したからといっても、
全人類をリドニテス化するのは。
それも本人の意思とは無関係に」
「しかし、特定の人間のみをリドニテスにすると
どうなるか。
考えてもみろ。
人というものは
そんな善良な者ばかりはいない。
いつ思い上がって
何をしでかすかわからん。
マンガの主人公気取りで。
だったら全人類をリドニテス化した方が」
「本人の意思を無視してかね」枠沢。
“モンロー自身。
主人公、入っているからなあ”
「じゃあ、なりたい者だけなればいい。
なりたくない者はのぞく」スタール。
「それでも反対だ。
自然の摂理に」
「枠沢。
オマエが言うな。
オマエが一番になりたいのではないのか。
それに
リドニテスになりたくない者がいると思うか。
それならば国民投票でも何でも全人類挙げて」
スタールはニヤリ。
笑い出した。
「変わらんなあ」
「そっちこそ」
枠沢も笑っている。
「よそう。もう。
とにかく、今は、
私の研究成果を見てくれ」
“そうすれば”
無人島が見えてきた。
コンクリート製の研究棟が姿を現してきた。
「モンロー。
さっき言った困った事とは」
「もうわかるだろう。
造った怪獣の一頭が逃げ出して。
そういう事だ」
枠沢は大きく息を吐いた。
「どうするつもりだ」
「どうにもならん。
今は様子見の段階だ。
私の研究に同調して資金協力してくれている者たちにも
相談しなければならん。
もうここに来ているはずだ。
お前も参加してくれ。
オブザーバーとして」
「いいのか。部外者が」
「水臭い事を言うな。
枠沢は特別だ」
ヘリはヘリポートへ。
白衣姿の研究員風の男が迎えに出た。
「これは枠沢先生。
御高名はかねがね」
「枠沢。
ウチの研究員のジャック・ハードだ。
皆さん。もうお着きか」
「いえ、まだです。
それと-----。
エリオットが-----。
帰りましたが」
「なに。あの○○-----。
それで」
「御指示通り。
自室で謹慎させてありますが」
「よし。待たせておけ」
モンローは枠沢を振り返り。
「行こうか。
君も」
ジャックにも。
三人は建物の中へ。
「エリオットは例の。
クルール市で暴れた」スタール。
「リドニテスか」枠沢。
「そうだ。
全く困った奴だ。
困った事をしてくれた。
怪獣を。
ゴーザスという名を付けたんだが。
ゴーザスを処分しろとは命令したが
よりにもよって。
戦車や、
人を殺すとは」
「どうするつもりだ」
「どうすると言っても
まさか殺すわけにもいかんし。
元の人間に戻すか。
それとも、
しばらくどこかへ閉じ込めて置くくらいしか」
「まあ、そんなものだろうな。
しかし
元の人間に戻すって。
そんな事までできるのか」
「イヤ。まだそこまでは。
リドニテスが完成して、
まだ数週間しか経っていないし。
怪獣にしてもここ数ヶ月だ。
もっとも怪獣の方は
造ろうと思えばもっと以前から作れただろうが」スタール。
「どうして怪獣などを」
「研究の成果を確めたかったのと。
協力者の要請だよ」
枠沢はむつかしい表情。
「オマエの方は」スタール。
「イヤ。ある問題にぶつかって。
今は-----やっていないよ」
スタールは-----やはりという表情。
「やっぱりな。
研究をやめたか。
残念だよ。
変わっているからな。
お前ならあのまま続けていれば
私より先に完成させていたかもな」
「いや。そうじゃないよ。
技術的な問題だよ」
スタールはまさかといった風。
「どこが」
「それを-----。
御教えをこおうと思ってね」
枠沢はニヤリ。
そのやり取りはジャックも聞いている。
「ここだ」
研究室の一室へ。
セキュリティーを解除し
中へ。
金庫が一つ。
それを開ける。
そこから
小さな金属ケースを。
中から-----錠剤が。
「これが“リドニテス”だ」
「これが」
枠沢は錠剤の一つを手に取った。
ジッとそれを見つめる。
「それを見ればリドニテスになれる」
「飲めば-----か」枠沢。
スタールはニヤリ。
「枠沢。こっちを見ろ。
ジャック」
スタールはジャックに合図を送った。
枠沢は顔を上げた。
それは劇的だった。
ジャックの身体が
急激に変化していく。
そして数秒後。
「これがリドニテスだ」
そこには等身大の。
全身メタリックな
人型の生物がいた。
「信じられん」
スタールも満足げ。
「もちろん、巨大化もできるんだろうな」
「もちろんだ。
お前の“超縮小理論”を使った。
それと
“重力子・反重力子理論”もな」
「武器は」
「一応。
二人で考えたものは全て」
「全部か。
たいしたものだ。
しかし-----彼がリドニテスとすると
あのクルール市で暴れた-----」
「エリオットか」スタール。
「じゃあ、リドニテスは一人じゃあ」
「もちろんだよ。
私以外に五人いる。
現在のところは」
「お前も。
じゃあ。自分をモルモットにして」
「まあ。そんなところだ。
しかしまだ増えるかも知れん。
今、薬の在庫は
それと
こっちのケースにある数錠だけだが」
スタールはもう一つのケースを示した
「それも、数ヶ月の内には大量生産が。
ウチの研究員で成りたがっている者も
何人もいる。
その連中に飲まそうかと思ったが
お前が来るとわかって残しておいた。
それに成りたがっているのは研究員だけではない。
部外者も」
「部外者?」
「いや。
今日、協力者たちが来る事になっているだろう。
まだリドニテスが完成した事は
彼らにも伏せておいたのだが
あの事件だ。
今日リドニテスの事を彼らに知らせる。
大量生産が軌道に乗るまでは
伏せておきたかったのだが、
まあ仕方ない。
そうなると
ぜひ成りたいという者も出てくるかもな。
こっちのはその連中用に
せざるを得なくなったわけだ。
お前は反対だろうが。
協力者の頭数分を引いた残りが
この二錠だ」
枠沢はモンローと眼があった。
しかし何も言わなかった。
「それとだ。
枠沢」
スタールはあらたまって。
「お前もリドニテスになる気はないか。
その薬を飲むだけで
胃から遺伝子が侵入し
全身の遺伝子がリドニテスのものへと変化し
そして細胞も。
数十分後にはリドニテスになれる。
どうだ」
枠沢はゴクリと生唾を飲んだ。
ジッと手にした錠剤を。
「少し考えさせてくれ」
スタールはニヤリ。
「いいだろう。
私もその薬を飲む時は悩んだものだ。
その薬。
お前にやる」
そう言って金属ケースごと枠沢に。
「いいのか」
「ああ。
そのままの状態で使わなくても何年も保つ。
しかし、使わないと決めたのなら
捨てずに私に返してくれ。
それとその薬は人にしか、
しかも男にだけにしか効かないからな。
念のために」
「男だけか」
「ああ。女性用は別に造らなければな。
男に飲ませれば男のリドニテスに
女性に飲ませればリドニテスレディーになるようには。
いや、レムルレディーか。
そうだったな。
リドニテスとは別に
そういう名の別?番組を放送していたんだったな」
「よく覚えていたな」枠沢。
「当たり前だ。
アレだけ御教授いただければ誰でも覚える」
枠沢は苦笑いを。
DVDも大量に持ち込んだ。
バーザス語のものだ。
「とにかく
まだそこまではな。
研究できてはいないんだ。
残念ながらな。
現段階では男は男用。
女性は女性用と
別個に造らねばならん。
今造っているところだ。
研究員には女性もいるしな。
女性用はもうすぐできる」
「わかった。
しかしどうして一緒に造らなかったんだ」枠沢。
「まあ-----そう言うな。
こちらにも都合がある。
遺伝子の構造解析に手間取ってな」
モンローは苦笑した。
「なるほど。それで。
どちらの粒も内容は同じか」
スタールは口元をゆるめた。
「もちろん違う。
変身した姿も
能力も
少しづつだが変えてある」
「やっぱり」
「錠剤にナンバーが打ってあるだろう。
これが説明書とDVD-ROMだ」
枠沢はその内の一つを選ぼうと。
「両方持っていけ。
後は研究用だ」
「いいのか」
「ああ。
お前が私の仲間になってくれると信じている。
DVDの中身も見てくれ。
見ればその気になる」
枠沢は手にした薬をしまい。
金属ケースを背広のポケットに入れた。
DVDも同じポケットへ。
説明書も。
モンローがコンピューターを。
その画面には。
「姿形はどっちも少しづつ違う。
その二錠はこれとこれだ。
私のデザインだ。
しかし中にはどう思う。
言っておくが私の責任じゃないぞ。
協力者の要望を入れてな。
しかし
宇宙人のようなものもあるし
もっとマシなものはないのかね。
いや。よそう。
とにかくそのイラストにあるように。
そのイラストと同じ姿になるように
遺伝子をいじってある。
枠沢が考えたデザインもあるだろう。
α《アルファ》シリーズだったな。
そう言えばどっちをαシリーズにするかでもめたな」
「ああ。そうだった」
枠沢も懐かしそうに。
「それでジャンケンで私が負けて
私のがβ《ベータ》シリーズになったわけだ。
まあいい。
後は開けてビックリだ」
「本当にこんな姿にしたのか」枠沢。
「いや
協力者の要望だしな。
それはγ《ガンマ》シリーズだ。
全て。
しかし
大部分は私のデザインを優先したよ」
「なるほどな。
少し調べてみたいが。いいか」
「その言葉を待っていた。
やっとお前もやる気になったか。
また二人で研究を続けよう」
枠沢は複雑な表情。
「いや、すまん。
その件はまた-----後で-----話し合おう。
それよりこっちへ。
ジャック。いつまでその姿でいる。
早く元へ戻って」モンロー。
ジャックは元の姿へ。
それを見つめる枠沢は複雑。
別の部屋へ。
そこには様々な機器が並んでいた。
「全部そろっているなあ」枠沢。
機器の間をぬうように。
「顕微鏡に。
これは分子合成装置か。
完成させたのか。
分子合成装置を。
まあ、そうでなければ
リドニテスも怪獣もできないか」
「もちろんだ。
お前と別れてからな。
苦労したが
なんとかな。
理論は
お前の考えたのとほぼ同じだ」
「んーーー」
感心もしきり
「理論はそうでも
これを実現させたのは
君の力だよ」
モンローは顕微鏡を-----開けた。
「中を見るか」
「見てもいいのか。
なつかしいなあ」
「もちろんだ」
モンローは顕微鏡内を。
「原理は走査型の電子顕微鏡に近いが
これは枠沢の考えだな。
あの時造ったモノと原理は同じだが
だいぶ改良してある。
それに同じような形で重力センサーも配置してある」
「なるほど。
精度は」
「充分だ。
これなら原子核内の。
いや
電子内でダイポール(双極子)状になった
重力子・反重力子も見分けがつく。
ダイポール状の電子・陽電子はもちろんだ。
それに
こちらにはガンマー線のスペクトル発射機がついている。
これで超縮小原子も分析可能だ。
ジャック。
サンプルを」
顕微鏡に遺伝子のサンプルをセットする。
(双極子とはプラスとマイナスの物が一つづつ
一定の間隔で存在しているもの)
「これがリドニテスの遺伝子だ」
顕微鏡から得られたデーターが
コンピューターを経て、ディスプレイに。
「普通の人の遺伝子と変わらん。
こうして見ると
間違いなく
第二周期の人のモノと同じだ。
しかし。ガンマー線のスペクトルを
これに照てると」
遺伝子が、
遺伝子を構成していた水素が酸素が
他の様々な原子が
その姿を劇的に変化させた。
分裂し、
水素の原子核内の陽子が-----増えていく。
中性子も発生した。
他の原子も同様、
さらに重い重原子へと変化していく。
「今のは、わざと人の目でもわかるように
ゆっくりやった。
実際はもっと早いが」
枠沢。
「超縮小理論か」
思い入れ深げに。
「そうだ。
鉄でも何でも
数十個の中性子、陽子の固まりの原子核に
特殊なガンマー線スペクトルを照て
一つの陽子にまとめる。
つまり鉄の原子を水素原子に変えるわけだ。
ジャック」
ジャックが別のサンプルを。
重金属の原子を中へセットする。
「あの頃もこうして二人で
よく実験したものだ」
モンローは思わせぶりに。
そしてガンマー線を。
見る見る
陽子が、中性子が数を減らし
ついには六個の陽子と六個の中性子に。
「これで炭素原子の完成だ」
水素にすると気体のため。
分析しにくいらしい。
「重さは」
枠沢はニヤリと。
「これも枠沢の理論だが」
モンローもニヤリと。
枠沢は
「私は理論屋であって
実験屋でも技術屋でもなかったからな。
それで
分子合成装置ができなかったのかな」
自嘲的に。
「本音か。それ」モンロー。
信じられないという表情。
「顕微鏡にしても-----にしても-----。
いや、
まあいい」
モンローはジャックの方を-----チラリと。
他の者に聞かれては。
「原子は重力子と反重力子の集合体である。
重力子と反重力子がある間隔を置いて
結合しているわけだ。
ダイポール状に。
その証拠に
重力子と反重力子のダイポール同士には
引力しか生じない。
その重力子と反重力子の
ダイポールの間隔によって
質量は決定される。
だったな。
それにお前と二人で成功した。
どうだ。
なつかしいだろう。
くだらん今の研究など捨ててしまえ。
なにがATGCだ。
くだらん。
また二人で始めよう」
「おい、モンロー。
それは-----。
今の私のメシのタネなんだからな」
モンローも枠沢のその言葉に。
「なるほど。
私もそれで
今の大学に籍を置いていられるのだしな。
とにかくこれはここだけの話だ。
まあいい。
重力子と反重力子の間隔を変える事により、
質量は炭素原子と変わらん。
重力子・反重力子の間隔の定常状態が
二つ以上あるわけだ。
重力子と反重力子のダイポールの間隔が
長くなったり短くなったりするわけだ。
つまり同じ原子でありながら
重さが何種類もある事になる。
その重さの定常状態を
触媒により自由に往き来できる。
陽子というか、
電子を構成している物質内にある
双極子状態の
重力子と反重力子間の距離を、
コントロールできれば質量は思いのままだ」
スタールはジャックへ。
ジャックが顕微鏡からサンプルを。
「この炭素は
今、形は炭素だが
質量は最初の原子と変わらない。
この一部を取り出す。
そして残りは元へ」
取り出した一部を質量分析器へ。
「重金属原子と同じ質量を持った。
炭素原子か」
枠沢は何か-----考え込むように。
「これを見れば
我々を○○あつかいして大学から追い出した奴らも
きっと腰を抜かすぞ。
これをあの時発表できてさえいれば
二人とも」モンロー。
(本書の内容について。
この部分および以後の内容について
現代の科学とはかけ離れているものであっても、
それはあくまで
モンロー・スタールの○○サイエンティストぶりを
示すためのものであり、
その点、御留意願いたく、
本書へのクレームは御容赦願います
-----筆者注)
「おい、スタール。
それはもう」
「わかっている。
言わない約束だったな」
それが原因で二人とも
スタールはローク大学を追われパース大学へ。
枠沢も留学を取り消され
玄希大学へと帰らざるを得なかったのだ。
「まあいい。続けよう。
ジャック」
顕微鏡内に残ったサンプルに
さらにガンマー線スペクトルを。
最初のものとは波長も組み合わせも違う。
それを再び取り出し質量分析を。
「今度は炭素と同じ質量だ」枠沢。
スタールは満足げ。
「リドニテスももちろん」
「もちろんだ」
「まあ-----そうだな。
これがリドニテスを造るための
必須技術だしな」
枠沢も苦笑い。
「じゃあ、
変身時にはガンマー線スペクトルを照射する必要が。
そのガンマー線スペクトルを発生させる装置を
みんな持っているのか。
まさか-----アレも」
「そうだ。
そのようなモノは必要ない。
精神をある状態にまで高めると
特殊な酵素が発生する。
そのように遺伝子に組み込んである。
その酵素によって変身できる。
つまりガンマー線のスペクトルを照てるのと
同じ機能をその酵素が。
いや、これも枠沢の」
「それも可能にしていたのか」
「どうだ。枠沢。
また研究を始める気にでもなったか。
リドニテスをお前も造ってくれ。
そして」
「そして?」
「どちらが優れているか
競争しよう。
お前には負けん」
枠沢はニガ笑い。
「変わらないな」
枠沢はリドニテスの遺伝子を。
「これが」
「そうだ。
人の細胞はメンデレーエフの元素の周期表の
第二周期。
炭素、窒素、酸素でできている。
アミノ酸の構造式を見れば一目瞭然だ。
それを同じ族の別の周期に置き換えられないかと
枠沢。
お前は考えたわけだな。
同じ族の元素同士
化学的性質は似ているしな。
怪獣はそれを第五周期。
スズ、アンチモン、テルルに置き換えられるように
遺伝子を造ってある。
もちろん第六周期
第四、第三周期
もしくは金属周期のも造ったが。
しかしリドニテスは」
「超重核子か。
金属周期の」
「そうだ。
陽子、中性子よりも
はるかに重い核子を使っている。
怪獣も同じだがな。
こちらはもちろん第五周期だ。
しかも重さはお前の
重力子・反重力子理論により
普通の陽子・中性子と変わらん。
それを使って金属原子を構成させている。
通常の陽子、中性子でできた原子同士では
結合強度が弱いのでな。
もちろん超重核子でできた陽子、中性子を使っても
原子間の結合力がむしろ弱くなるものもある。
それでその中から強くなるものを選んで使っている。
これも枠沢の。
だから強度はただ単に
人の細胞を
金属原子に置き換えて造った生物よりも
はるかに強力だ。
つまりリドニテスは
人の細胞を金属周期に置き換えた
金属生物だ。
金属生命体と言おうか。
しかも使っている金属原子は
それよりもはるかに重い原子を
超縮小してある」
「金属生命体。
金属人間か」
枠沢は何を思ってか
考え深げに。
「全てお前の考えた理論だ。
それを自分で作りたくはないのか。
枠沢。
これも見てくれ」
モンローは分子合成装置を開けた。
枠沢は食い入るように。
「どうだ。見ただけでわかるか」モンロー。
「いや-----」枠沢は。
何か言いたそう。
しかし
モンローは何とか枠沢をくどきおとそうと
昔を思い出さそうと必死だ。
「先生。
みなさん、
お集まりになられました」研究員の一人が。
「そうか、わかった。
すぐ行く。
枠沢。これから会議だ。
どうだ。
参加するか」
「いいのか」
「大歓迎だ」