2-2-07 リドニテスアルファ
ターゲットは彼の部屋にいた。
彼はまだ独身。
軍人だった。
名はロイド・ハード中尉。
「モンロー教授」
枠沢の姿を見た男は
思わずそうつぶやいた。
彼の部屋にはテレビが一台。
何やら娯楽番組が流れていた。
枠沢は流暢なバーザス語で
話しかけた。
モンローのクセは
イヤというほど知っている。
それをまねて。
声紋はリドニテスとなった
モンローのものを
完全に復元しているはず。
ちなみにバーザスは英語圏だ。
「何も心配する事はない。
私は今回の事態を
非常に残念に思っている。
そして心からすまないと思っている」
相手はその言葉に。
「それならば-----先生
ぜひ、我々とともに。
我々と怪獣を」
「それは-----出来ない。
こうなった以上」枠沢。
「どうしてですか。
先生のお造りになられた
リドニテスさえあれば」ロイド。
枠沢はニヤリ。
「リドニテスさえあれば
どうするね」
男は一瞬
とまどったように。
「リドニテスさえあれば怪獣など。
バーザス国民は今や
怪獣の影におびえています。
いつ現れるかも知れないのですから」
「それで」枠沢。
「ですから
リドニテスさえあれば」
「リドニテスさえあれば-----
君が-----かね」枠沢。
「私?
私で良ければ
私が怪獣を。
しかし-----私でいいのでしょうか」
もしリドニテスになれれば
どんなにいいか。
夢がかなう。
枠沢は-----
小さなケースを。
リドニテスβ1(ベータ・ワン)を。
「中に三錠入っている。
一気に飲みたまえ。
リドニテスになりたいのなら」
男は一瞬
ためらうかのように
枠沢の方を。
そして-----腕を-----
ケースへ。
受け取ると三錠とも
飲みくだした。
「ケースは返してくれ」
枠沢はケースを
こんなところから足がついては。
男はイスに座り込んだ。
全身が-----。
「言っておくが
そのリドニテスα(アルファ)は」
「わかっています。
変身時間は数十分。
それに-----
二三年で元のヒトに」
「そうだ。
それに-----」
「他にも何か」男
「他人には
君がリドニテス・アルファだという事を
バラしてもらっては困る」
「なぜですか」
「それは-----言えない」
その手のモノの定番なのだが
バーザス人には-----。
「しかし-----
コレはリドニテス・アルファ
-----ですか」
「そう。
アルファだ」枠沢。
「では他にも」
その時、テレビが。
いつの間にか-----。
娯楽番組のはずが。
「先生。
アメリカに怪獣が」
ニュースに切り替わり-----
怪獣の出現を告げていた。
「先生。
さっそく私が」
男はリドニテスへと
変身。
その瞬間
男は空間を数キロは移動した。
空中で静止している。
“何が起こったのか”
すぐに枠沢が現れた。
「先生。
コレは」
「言い忘れていたが
リドニテスは変身と同時に
空間移動するように
遺伝子レベルで組み込んであるんだ」枠沢。
「どうして」
「どうしてって-----。
リドニテスが
君のいた場所から現れてもらっては
都合が悪いのでね。
そうなれば正体がスグにバレてしまう。
もっとも
変身しても空間移動しないように
意識していれば
せずに済むが。
まあいいか。
必要ないだろう」
「そういう事ですか。
-----。
では私はアメリカへ」
「イヤ。君はいい。
君はバーザスとその周辺を
カバーしてくれればいい」
「ではアメリカは放っておけと」
「イヤ。
アメリカはアメリカ人のリドニテスに
守ってもらえばいいという事だ。
リドニテス・ベータに」枠沢
「なるほど。
では、すでにアメリカにもリドニテスが。
リドニテス・ベータ-----ですか」
「イヤ-----残念ながら-----
まだいない。
これからス・カ・ウ・ト・に行くところだよ。
君の次にね。
それとリドニテスについての
必要な知識は
遺伝子レベルで組み込まれている。
それで充分だとは思うが
まあいいか。
では」枠沢。
男は彼の部屋へと-----
戻ったのだろう。
消えた。
それを見届けるや
枠沢も空のかなたへと飛び去る。
そして空間移動。
枠沢のクローンは
彼の研究所内の一室にいる。
枠沢はそれを
バーザスにいても確実につかんでいた。
まだ自衛隊に動きはない。
急がなければ。
すでに怪獣はアメリカの
ニューヨークまであと数百キロ。
どうやら太平洋から大西洋へと
移動していたらしい。
アメリカ西海岸、日本やオーストラリアを
素通りして。
“どうしてだ”
わからない。
コレでは太平洋岸だけではなく
全世界にリドニテスが必要となってくる。
“ヨーロッパか”
怪獣は男の部屋で見たニュースによると
“ボグル”のようだ。
ガンマ線レーザーによる怪獣識別装置は
すでにアメリカも持っている。
アメリカではそれをすでに
戦闘機に搭載していたらしい。
しかもその戦闘機を
大西洋岸にも配備していたとは。
奴はカテゴリー“3(スリー)”。
無人島にいた怪獣の一頭だ。
とてもアメリカの持っている
肩撃ち式携帯BB砲では
歯が立たない。
枠沢はニューヨークへと
空間移動を終えた。
ニューヨーク上空数千メートル。
眼下には巨大なビル群があった。




