2-2-06 βシリーズ
その夜。
枠沢は
研究所内の一室にいた。
すでに研究所内のいたるところに
隠しカメラが仕掛けられている。
枠沢にはそれを見つけ出す
能力があった。
盗聴器専門の業者に頼んで
調べてもらったのだが-----。
盗聴器は発見できなかったーーーらしい。
まあやって来たのが
全員自衛隊員の変装だから
仕方ないか。
いくつかは持って帰ったようだ。
あれは無人島の
核爆発以前からあったモノだし。
モンローか他の誰かが
仕掛けたモノだろう。
それをそのまま放っておいたものだ。
以前泥棒に入られたこともあり
一度調べてもらったのだが
その時はなかった。
その後。
そういう事だ。
数も限られていたし
別段問題はなかった。
しかし今回は数は多いし。
研究所中となるとさすがにだ。
“急がなければ。
モンローの島には
あと二頭の怪獣がいたし
いつどこに現れるかも知れない。
私の行動の自由も-----
だんだん狭まっていた。
知らないフリをしていた方が良いか。
それに業者がグルだし
どうしようもないか。
自分で装置を買って来て
調べるという手もあるが
使っている周波数帯は
どうなのか。
スクランブルがかかっていれば。
まあ電波が出ていればわかるかな。
有線というモノもある。
アレやコレやと。
枠沢は部屋を出た。
カメラの死角はわかっている。
といっても
わずかな空間でしかない。
“やるなら今か”
人の目は大丈夫だが
カメラとなると
まあ大丈夫だろうが-----。
枠沢にはクローンがいた。
以前、ある事情があって
このような状況に追い込まれた事がある。
そのために造っておいたものだ。
用心のために。
そのクローンには枠沢の記憶を移植し
-----全てではないが
-----リドニテス等の製造能力はない-----
まあ特殊金属やBB砲の製造くらいは
できるようにしておくべきか
-----どうか。
しかしもし-----勝手に-----。
どうするか。
今は宇宙にある枠沢の研究所にいる。
そのクローンとは
枠沢と亜空間通信により
つながっている。
だからクローンが宇宙にいても
枠沢との間で
記憶の齟齬はない。
つまり今現在
枠沢の記憶と同じものを
共有しているのだ。
今、何をしている事やら。
もちろんこちらからわかるが-----
まあ、おかしな事はできないように-----。
そして枠沢のコントロールで
動かす事もできる。
全て、
必要になり
そのように遺伝子に組み込み
そう造ったのだ。
枠沢はそのクローンと
枠沢の体内にある
亜空間通信装置を使い
-----通信機といっても遺伝子レベルで
生物通信機だ-----
“伝える”
“亜空間移動”
枠沢はクローンと入れ替わった。
身体のみ。
着衣はそのまま
身体の表面ギリギリに
亜空間場を造り
身体のみを瞬時に移動させたのだ。
もちろん人の目では
ハイスピードカメラでも
捕らえられないほど早く。
空間のゆがみも補正してあるため
全く見えない。
クローンは枠沢の今いた場所へ。
着衣の中へ。
枠沢は
現れたのは全く別の場所。
地球から遠く離れた
別の太陽系内の一惑星上の
地下深くにある研究所。
枠沢はここで研究を続けていた。
地球上の地下深くにも
数箇所
研究所を持っているが
たいしたモノは置いてはいない。
枠沢は
研究所内の金庫の前へ。
すでに薬は完成していた。
その薬は人の遺伝子に作用し-----
そして。
確認も終えていた。
確認には当然この研究所の
コンピューターと顕微鏡を使った。
むこうの-----地球上の-----研究所のものは
使えない。
全て自衛隊がモニターしているからだ。
「コレさえあれば」
その薬を枠沢は飲んだ。
身体中が熱くなる。
それはリドニテスになった時と同じ。
イヤ、今回の方がはるかに軽いか。
数十秒間
そうしていただろうか。
枠沢は眼を開いた。
「結果は。
うまくいったか」
枠沢はリドニテスへと変身した。
「変化無しか」
鏡の前に立ち、前や後姿を。
「ここまでは良しと」
さらに-----。
枠沢-----
。いや、リドニテスの姿が変化した。
そこには-----。
モンローの-----リドニテスの姿があった。
「やったか」
入念に鏡でチェックする。
「問題ないか」
枠沢は今までのリドニテスを改良し
モンローのデザインしたリドニテスへも
姿形だけだが
変身できるようにしたのだ。
ある目的のために。
「モンローに全てを
なすり付ける様で
申し訳ないが。
仕方ないか」
もし枠沢の事が知れれば
どうなるか。
惑星ラーグの悪夢が。
枠沢は元の人間の姿に戻った。
そして-----今度は
金庫内から。
「リドニテスβ(ベータ)シリーズか」
リドニテスになるための薬は
二分割されている。
それを五人分。
五人で充分だろう。
取り合えずは。
枠沢はその薬を
β1、β2と-----β5まで
五人分。
ナンバーごとに
小さなケースへ。
ナンバーが異なると
姿形も違う。
さらに別の薬を各ケースへと
一錠づつ加えていった。
しかしこのリドニテス。
βシリーズには
ある重・大・な・問題があった。
それは名前だった。
リドニテスも何人にもなれば
個人ごとに識別が問題になってくる。
その名をどうするかが。
リドニテス○○
とするのだが。
それをどうするかが。
太陽系の惑星名のするのか
星座にするのか。
ギリシャ神話の英雄にするのか。
モンローともよく話し合ったものだ。
女性名を男に付けるわけにはいかないし。
他にも
結局モンローのデザインのモノには
ギリシャ文字が
アルファ、ベータと付いている。
そのデザインを元に造ったのだが。
そう言えば
例の無人島では
本名で呼び合っていたか。
まあ、あのデザインは
本人たちが考えたものか。
いわゆるガンマ・シリーズか。
それらの名は本人たちで考えればいい。
と、
モンローと私の間ではなっていたわけだが。
まあいいか。
しかしβシリーズにもかかわらず
最初のリドニテスが
“リドニテス・アルファ”とは。
βシリーズはモンローがデザインしたもの。
枠沢のデザインしたモノは
アルファ・シリーズとなっている
まあいいか。
怪獣と区別がつかないような
名を付けるよりもいいだろう。
「はたして適当な
人間が見つかるか」
インターネットを使い
アメリカやバーザス等の
軍関係者、科学者などのデーターは
ハックしてある。
その数、数百万人分。
もちろんバレてもいいように
別の場所の
バーザス国内の全く枠沢とは関係のない
コンピューターを使って行った。
監視カメラも大丈夫だ。
枠沢はモンローのリドニテス姿へと
変身した。
バーザスへ空間移動。
バーザスは夜だった。




