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戦車

 バルーグは九十九里浜へ。

 地上には戦車、重砲、対戦車ミサイル

対艦ミサイルが。

 空には戦闘機が。

 「怪獣が姿を現した瞬間に、

我方は全火力を集中して

撃滅いたします」議長、

 バルーグが頭を。

 海中から現れた。

 「来た」

 師団長がテント張りの野戦司令部で。

 その様子は防衛省へも衛星回線で送られている。

 もちろん、テレビ局も

多数いる。

 バルーグは徐々に海岸線へ。

 「師団長」

 「よし行こう」

 155ミリ榴弾砲が。

 レーザー誘導爆弾が。

 バルーグへ。

 対艦ミサイルも達した。

 多連装ロケットも撃ち出される。

 ミサイルが、砲弾が炸裂。

 爆弾がバルーグの頭部で爆発。

 しかしバルーグは。

 上空の戦闘機へ向け

生物レーザーを口から。

 戦闘機が一瞬にして蒸発。

 重力波レーザーを。

 戦闘機が白く白熱した固まりに。

 バルーグは海岸へ。

 上陸した。

 バルーグが重力波レーザーを。

 海岸線に置かれた砲が溶け崩れる。

 戦車が滑腔砲を、

装弾筒付翼安定徹甲弾《そうだんとうつき、よくあんてい、てっこうだん》がバルーグへ。

 十数発の矢弾丸やだまが同時に着弾。

 厚さ一メートル余りの

鉄板をも撃ち抜く

 タングステン合金製の弾丸も。

 全く。

 「何ともないのか」師団長。

 バルーグが重力波レーザーを。

 戦車へ。

 直撃を受けた戦車は。

 複合装甲も全く用をなさなかった。

 瞬時に

内部から白熱。

 溶け、爆発していく。

 「ダメか」

 首相。ガックリと肩が。

 「全く-----。

 歯が立たないとは」大臣。

 声もない。

 「例のバースト・ビーム・ガンの

試射結果のDVDが届きました」隊員が。

 陸月が直接持参したのだ。

 「バースト・ビーム・ガン?」首相。

 「アレか」防衛大臣。

 声に力がない。

 「あんなものあっても

仕方がないんじゃあ。

 レーザーだろう」

 「戦車も大砲も効かない相手に。

 そんなモノ

通用するわけが」

 「マンガでは

大砲や戦車も通用しない怪獣相手に

充分効果があるようだが」

 “しかし結局は怪獣を倒せないしな”

 「その-----枠沢とかいう○○のイカれた先生の

思いつきで造ったそんなモノ」

 「そうだ。

 マンガの見すぎだよ。

 どう考えてもその先生」

 「マンガではそうなっているしな。

 大砲で撃ってダメなら

レーザー兵器でなら-----だろう」

 などと言う者もいる。

 「だからあんなモノでも

効果があるとでも思い込んでいるんじゃあないのか」

 口々に。

 レーザー開発の現状を知っているだけに

キビシイ。

 怪獣の吐くレーザーには

思いいたらないのか。

 それとも

怪獣はレーザーを吐いて当然。

 そのレーザーで戦車を蒸発させて当然。

 そう思い込んでいるのか。

 しかし

レーザー砲は-----だ。

 どういうわけか。

 そこで現実に戻るらしい。

 「とにかく見てみるか。

 確か、戦車を」

 首相。力がない。

 「はい。

 最新鋭の戦車を使って撃つように

指示しました」陸幕長。

 「戦車の複合装甲に対して

どのくらいの効果があるのかを」幕僚。

 バルーグは九十九里浜から陸上へ。

 東京へと一直線に。

 方向は変わらない。

 自衛隊は他方面からの増援を加え

東京の手前で防衛線を引くらしい。

 「しかし。

 あの怖ろしく高い戦車を」

 内局員たちが。

 小声で。

 「怪獣にやられた

装備の補充をどうするかだけでも

頭が痛いのに」

 「しかも-----新品を」

 「もし傷でもついたら」ボソボソと。

 「あの怖ろしく高い戦車を買うために

我々がいくら苦労したと」

 「そのツケをまわされて

○○も△△も買えなかったしな」

 「それを。

 そんな事に使うとは」

 「陸幕長にも

困ったものだ。

 まあ、レーザーだろ。

 たいした事は」

 口々に。

 「それでどのくらいの威力なのかね」

 その声を無視するように首相が

陸月に。

 「戦車の装甲くらい

抜けそうかね」

 陸幕長が冗談めかしに。

 声には力がない。

 大して期待しているようには思えない。

 “新品の戦車をそのまま試射に使えば、

そりゃ

内局からもクレームが来るはな”

 陸月もマズイという表情。

 「ごらん下さい」陸月。

 DVDが始まった。

 携帯ハイパワー・バースト・ビーム砲を

哲斗が肩にかついで構えている。

 「これが」首相。

 「例の」陸幕長。

 「何かオモチャみたいだな」幕僚。

 色も形もその手のキワモノ映画に出て来る

○○そのもの。

 「こんなので本当に」

 「まあ、色は塗りなおせばいいが。

 カーキー色に。

 いや。

 そのままでもいいか。

 この手のモノは」

 期待が大きかっただけに

落胆の色がという者も。

 やはりその手のものか

という表情の者もいる。

 砲口の先。

 数百メートルには戦車の前面装甲が。

 哲斗が砲を撃った。

 不気味な色の光が戦車へ。

 戦車が。

 大地が。

 「そんな」幕僚。

 「あの怖ろしく高い戦車が」内局員。

 「戦車の前面に値札をつけておけば

それにビビッて敵も逃げ出すだろうと。

 味方はもちろんだが。

 さんざん言われた

あの怖ろしく高い戦車が」

 あまりの出来事に。

 本人自身

何を言っているのかわからない様子。

 道路上を走る

高級車と勘違いでもしているのか。

 そんなもの。

 比ではない。

 あれより数十倍は値が張っている。

 その戦車にぶつけた日には

エライ事に。

 修理代はもちろん-----いくら請求されるか-----。

 踏み潰される事

間違いないのに。

 「予算を取ってくるのに

 どれだけ、苦労-----」

 一瞬にして白熱。

 溶解してしまった。

 「凄い」首相。

 「あの複合装甲の戦車を」陸幕長。

 「はい-----。

 私どもは-----まさか。

 一撃で戦車がこのように」陸月。

 「これでは-----とても。

 修理も」

 何せ完全に溶けてなくなってしまったのだ。

 「これは

DVDの続きを

見せればどうなるか。

 アッ、イエ。

 最低出力で撃ったのですが」陸月二佐。

 「あれで最低出力かね」陸幕長。

 「はい。

 枠沢先生がそのほうが良いと

おっしゃられましたので」

 「信じられん」首相。

 「しかし。

 これなら」統幕議長。

 「そうですね。

 これなら戦車の。

 新品の。

 あの怖ろしく高い戦車一両くらい」

 内局員たちも圧倒されたのか。

 「十億円の札束を

たき火代わりに燃やしたようなものだ。

 それでサツマイモを焼いて食えば

うまいのに」

 誰かがそうつぶやいた。

 「十億円のヤキイモか」

 「十二億円のヤキイモだ」

 誰かが訂正した。

 「石炭の代わりに。

 ダイヤモンドでイモを焼くようなものだ」

 吐き捨てるように。

 「エッ」

 「イヤ」

 そんな事をする者はいるはずも-----。

 「これで怪獣も」大臣。

 「怪獣を倒せればオツリがくるよ。

 これなら」

 内局員が陸月に。

 「それなら。

 よかったです」

 陸月も。

 一応、ホッと。

 「それと」陸月が続けた。

 言いにくそうに。

 「まだ何かあるのかね」首相。

 「はい。

 他にも

ライフルやガンも手に入れましたので。

 その試射も」

 「そうだった。

 それも戦車を撃つように」陸幕長。

 「拳銃やライフルで戦車をですか」内局員。

 「いくらなんでも

あの怖ろしく高い戦車が」内局員。

 「怖ろしく高い分。

 高性能だと。

 聞いていますし」

 “本当かな”

 「拳銃で戦車を撃って

何の意味があるのですか。

 それも。

 新品の。

 あの怖ろしく高い 

戦車を」

 「兵器の効果を見るためにする試射なんだろう。

 君」

 内局員が陸月に。

 「だったらもっと他のモノを使うとかの

機転はないのかね。

 君には」

 「効果があれば別だがね」

 「効果があれば。

 いいのですか」

 陸月は遠慮がちに。

 内局員たちは

“何を言っているんだ”という表情。

 「アッ、イエ。

 失礼しました」

 陸月もどうしていいのか。

 オロオロと。

 「申し訳ありません」ペコリと。

 「まあ。いいじゃないか。

 陸月君もああ言っている事だし。

 少々、装甲が傷ついても。

 時間もない事だし。

 そのほうが

結果が早く出る」

 防衛大臣もその様子に。

 「まあ、傷くらいなら

修理すれば」

 内局員たちも一応納まった。

 陸月は周りを見回した。

 困ったような表情で。

 「結果は」幕僚が。

 「戦車の装甲に傷でもついたのかね。

 少々の傷くらいなら。

 眼をつむるよ」

 半分。冗談交じりで。

 修理代をどうひねり出すか。

 「しかし本当に傷つくのかね。

 あの怖ろしく高い戦車が」

 「しかし。

 もし傷つけば-----。

 今の砲の威力から考れば

その可能性も。

 あの怖ろしく高い戦車を

試射して傷つけたでは。

 ○○省が。

 しかも新品をそんな事に使ったとは-----。

 どう説明するか」

 「それならいっそ。

 怪獣にやられた方が

言い訳もたつ」

 「それを問題にされて

歳出カットでもされれば。

 まったく

少し目を離すと何をするやら」

 「とばっちりは全て内局にかかってくるんだし」

 「マサカ、銃でそこまでは」

 幕僚が気を使って。

 「それもそうだな」

 内局員も。

 笑い。

 「取り越し苦労か」他の内局員も。

 陸月は。

 ゴクリと生唾を。

 覚悟を決めた。

 “明日は南鳥島か。

 砲の威力に圧倒されて

 そこまで考えがおよばなかった”

 「枠沢先生によりますと

ガンでも

都庁くらい。

 一発で消し飛ぶと

おっしゃっておられましたが。

 まさか都庁を実際に撃って

消し飛ばすわけにも。

 それで戦車を-----

というわけでは-----

ないのですが。

 アッ。イエ」

 陸月は周囲を。

 まわりの者はあきれ顔。

 笑い出す者も。

 「拳銃で都庁を」

 「まさか。君。

 そんな事あるわけが」

 「そこまで威力があるわけも」内局。

 「私もそう思っておりましたので。

 とにかく

ごらんください」

 DVDにはガンを構えたシオリが。

 戦車を。

 正面から最も厚い複合装甲を狙っている。

 「出力。

 まず最低で行きます」

 DVDの中のシオリが。

 距離は数百メートル。

 じっくりと狙いをさだめて。

 「装甲のヘコミ具合で

 威力がわかるはずです」

 解説がついている。

 「その結果によって

徐々に出力を上げていきます」

 シオリが引き金を。

 ビームが戦車へ。

 ビームを受けた怖ろしく高い戦車は。

 そのまま

内部から白熱化。

 完全に溶け崩れた。

 原形を全くとどめていない。

 全員。真っ青。

 「歩兵の。

 しかも拳銃で。

 あの怖ろしく高い戦車が」幕僚。

 「女の子に」

 「やられるとは」

 「本当に都庁を撃たなくてよかった」ポツリと。

 「戦車が二両か」内局員。

 「しかも-----あのいわくつきの戦車だぞ」

 「○○省が目のかたきにしている」

 「減額対象としてか」

 「戦術がどう変わるか」幕僚。

 「えらい事になった」内局員。

 「予算が」

 「どう説明すれば」

 「-----」陸月は無言。

 「まさか。

 威力がこれほどとは」

 「信じられん」

 「これなら勝てる」陸幕長。

 「怪獣もこれなら一撃で」幕僚も。

 「よくやった」首相も。

 「さっそく、前線に投入したい」陸幕長。

 「なに。戦車の一両や二両。

 気にするな」

 内局員も。

 陸月に震える手で。

 度量を見せようと。

 無理に笑みを造り。

 握手を求めた。

 しかし眼からは

あふれる涙を。

 必死にこらえているのがわかる。

 “どうしよう”内局員。

 「要は怪獣を倒せればいいんだ」幕僚。

 「それは-----。

 よかった。

 ですが」陸月。

 「ですが?」幕僚。

 「まだ何か」内局員。

 「もう一両」陸月。

 「もう一両-----って」内局員。

 「まさか」

 内局員たちの青い顔がさらに青く。

 「ライフルもありましたので」陸月。

 「じゃあ、君は。

 あの怖ろしく高い戦車を」内局員。

 「しかも新品を三両も」

 「申し訳ない」陸月。

 内局員の顔が-----引きつっていた。





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