玄希大学
東京。
玄希大学。
遺伝子工学研究室。
研究生たちが忙しそうに
研究を続けている。
「先生」
枠沢の顔を見るなり。
遺伝子工学教授枠沢は
研究生から渡されたデーターに
満足げにうなずいた。
玄希大学は国立。
ヒトの遺伝子全ての塩基配列を解明する試み
ヒト・ゲノム計画にも加わっていた関係で
遺伝情報のどの部分が何に-----
例えばどのような働きをするのか等々を-----
当たるのかを調べている。
その塩基配列のデーターだ。
ATGCの文字が並んでいる。
今流行のiPs細胞も。
他にも遺伝子による病気の発見。
バイオ野菜の開発。
何でもやっている。
「先生」
研究室のドアが勢いよく開く音とともに
助手の当未が飛び込んで来た。
「たいへんです。
テレビ。テレビ」
「なんだね。いったい」枠沢も。
“何か。遺伝子工学で重大な発見でも
先を越されたか”
一瞬。
そのような考えが頭をかすめる。
当未は部屋の片隅に置かれてあった
テレビのスイッチを。
枠沢は思わず吹き出した。
「ウソだろう」
研究生の一人が。
顔が引きつっている。
「映画じゃないんですか」
しかし他のチャンネルも
全て、そのニュースが流れている。
-----バーザス国において怪獣出現-----。
戦車が、航空機が。
さらに
-----全身、金属光沢の巨人出現-----。
その時の映像が流れている。
枠沢は声もない。
真っ青な表情で食い入るように、
全身の震えが止まらない。
「リドニテスか」枠沢。
「エッ?」
「テレビアニメの-----ですか」
だいぶ前にアニメでやっていたリドニテス。
しかし研究生たちはその頃は-----
年端もいかぬ。
まあ最近はビデオもある。
「しかし姿が-----違いますが」
「イヤ、そうだね。
だいぶ違うね」枠沢は。
「○○の方が近いかと」
別のその手のモノだ。
「そうかね」枠沢。
「同じシリーズですが」
その場の全ての者が
食い入るように。
「先生、これは。
いったい」当未。
「こんな事が」
大きく深呼吸。
「中生代の恐竜とも思えないし。
それに巨人とは」枠沢。
何を言っているのか。
動揺して。
「宇宙人ですか」
もう一人の助手の来積が。
「それは-----わからないよ。
しかし
遺伝子工学で造られたとすれば。
こんな事ができるのは
モンロー・スタール-----くらいか」
“それにあのリドニテスの姿形は確かに。
モンローの。
あれだけでは無理だと思っていたんだが”
「何かご存知なのですか」当未。
「そのモンロー・スタールとは?」来積。
「いや、忘れてくれ。
それより私は行かなくては
バーザスへ。
当未君。後を頼むよ」
そう言うと何かにとりつかれたように
研究室から出て行った。