自衛隊
哲斗たちは乗用車を出た。
本部からの連絡ではリドニテスが。
モンローが。
それにあろう事か
エリオットやライグまでもが
この日本へ現れたらしい。
今。テレビでその時の様子を。
誰かが、一般の視聴者が携帯で撮った映像を
流している。
グズグズしてはいられない。
それに
十数名の男たちが
数台の乗用車から続く。
枠沢邸のチャイムが。
哲斗だ。
シオリもいる。
枠沢はすぐ現れた。
「君か。
こんなに夜遅く。
何かね」
「昼間はどうも」陸月が。
「失礼します」
数人の男がドカドカと。
「君たち何を。
失礼じゃないか。
警察を呼ぶよ」枠沢。
「我々は自衛隊の者です」陸月。
「自衛隊。
そうか。
テレビ局にしては
どうもおかしいと
思った」
“やっぱり。
その手の○○モノではたいてい。
しかし現実にそうなるか”
「申し訳ありません。
職務上。
どうしてもそう言うしか」哲斗。
「そういう事か。
まあいい」
しかし表情は不快そのもの。
「エリオットたちの事は、
先生御存知ですか」
「ああ、今、テレビで見た。
やはり彼らも。
しかし-----これは
強引過ぎないかね」
「それが、怪獣が一頭。
発見されました。
それで先生に、ぜひ協力を」シオリ。
「怪獣。
いったいどこに」枠沢。
「それが日本近海です。
今、対潜哨戒機が監視中です。
報告では真っ直ぐ日本へ」哲斗。
「日本へ。
それで
協力しろと言われても。
私に何を」
「それは
例の“薬”を提出願いたく。
もちろん任意で」陸月。
「しかし
君たち本当に
自衛隊なんだろうねえ。
身分証を見せられても。
どこかのスパイとか。
考えすぎか。
マンガの見すぎかな」
「それは-----。
信じていただくしか」
「そうか。
それで-----やはり提出するしか」枠沢。
「ぜひ。
もし-----ダメなら法的に。
強制的に」陸月。
「何に使うつもりかね」
「もちろん
研究用に。
しかし
必要とあれば
こちらもリドニテスを」
「やっぱり。
しかし
そのリドニテスが
エリオットのようにならないとも。
世界征服とか何とか。
さっきのテレビでもそう言ってたでしょう」
さきほどのエリオットとモンローのやり取りはテレビで。
同時通訳付で。
「それは。
人選には完璧をきすつもりです」
「完璧-----ね」
「先生。
ぜひ」陸月。
「しかし-----私も研究用に」
「怪獣が。
そんな余裕は」哲斗。
枠沢は。
「あの薬は
半分の量があれば充分リドニテスになれますし。
せめて半分に分けて」
「それはこちらでやります。
事態は急を要しますので」陸月。
「リドニテスなんぞになりたがる輩は
どうせロクな者はいないんだが。
どうせ
理想のためとか何とか。
手前勝手な事のためにその力を。
君たちだって胸に手を当ててよく考えてみたまえ。
リドニテスになったら何をするつもりだ。
子供の時に見たマンガの主人公にでもなって。
そんなものだろう」
周囲を見回す。
しかし
とても拒否できそうな雰囲気ではない。
「仕方ないか。
いいでしょう」
枠沢は奥へ。
哲斗たちを。
金庫へ。
開く。
中から、ケースを。
「これが。
リドニテス-----ですか」
全員。ごくりと生唾を。
ケース内には薬が二粒。
「これを飲めばリドニテスに」堆星。
「そう」枠沢。
「半分の量でですか」シオリ。
「そうだ」
「どうやって分ければいいのですか」陸月。
「いや、粉々に砕いて。
それで天秤ででも計って分ければ」
「なるほど」
錠剤は丸い形のままだった。
「オイ」
陸月の合図でアタッシュ・ケースが。
薬をケースごと。
その中へ。
フタを閉じた。
「これは特殊な金属でできたアタッシュ・ケースでして
カギがなければ絶対に開きません」陸月。
「カギは」枠沢。
「それはここには。
防衛省の金庫内に」
「なるほど」
「これで安全なわけか」
「おあずかりします」
堆星が。アタッシュ・ケースを受け取る。
数人の男たちと外へ。
いつ呼んだのか
装輪装甲車に乗り、去って行った。
残った陸月と哲斗たちは。
「まだ何かあるのかね」枠沢。
「先程、ここへモンロー教授が。
お見えになられたはずですが」陸月。
枠沢は渋い顔。
「それで」
「先生。困りますなあ」
「何が」
「何がって。
我々に連絡してもらいませんと」
「どうしてテレビ局に」枠沢。
「-----」
陸月は詰まった。
「それは-----
ありますか。
しかし-----警察へは」
「モンローをかね」
「はい。
そうしていただかないと
先生にもご迷惑が」
「-----」
枠沢は無言。
「まあ-----いいでしょう。
薬も任意で提供していただいた事ですし。
それよりも
先生の研究についても
御教授願いたいのですが。
聞くところによりますと
この家の地下に研究室が」陸月。
「まいったな。
しかし-----どうしてそれを」枠沢。
「いえ、この建物の建築確認書を調べましたところ、
地下室があるそうで」
「どうしても」枠沢。
「ぜひ」
「仕方ないですか。
どうぞ」
地下へ。
「これは」陸月。
「電子顕微鏡-----ですか。
モンローさんのところにあったのと同じだ」哲斗。
「同じじゃあないよ。
性能はむこうの方が格段に上だよ」
「これでリドニテスや怪獣は
造れるんですか」陸月。
「いや。無理ですね」
「どうして」
「いや。
これはあくまで分析が専門で。
分子を合成する装置がなければ
とてもとても。
それに分子合成装置があっても
クローンならできますが。
人をそのまま金属人間に変化させたり
様々な能力を持たせるとなりますと、
もっと基礎データーを集めなければ
全く別の技術が必要になってきますので」
「そうですか。
しかし。
これもお貸し願えませんか」
“よくわからんが。
まあ専門家にでも見せれば”
「これも。
これを持っていかれては
私も困るしねえ。
モンローの血液の分析もしなければならんし、
それに使い方もわからんでしょう」枠沢。
「それは私どもの方で。
なんでしたら先生にも来ていただいて。
どうでしょうか。
それに今。
モンローさんの血液とおっしゃいましたが」
「アッ。イヤ。-----」枠沢。
「それは今どこに。
それもできましたら
提出願えませんか」
「リドニテスの血液ならば
我々もぜひ分析を」
「しばらく-----考えさせてもらえませんか」
「先生。
どうにかしたいのですが。
上からの命令でして。
ご提出いただかなければ
申し訳ありませんが」
陸月が本当に申し訳なさそうに。
「と言いますと」
「法的に」
“そんな法律あったかな。
まあ、あってもなくても。
まあいいか”
「すぐにですか」
「はい」
「モンローの血液を分析するくらいの時間は。
いえ、二三日で」
「先生」
「いたし方ありませんか。
しかし本当にあとで返してもらえるのでしょうな」
「それはもちろん。
受け取りも書きますし」
モンローの血液を受け取った者は
そのままそれをケースに入れ
装甲車で堆星たちの後を追うように。
装置類は隊員たちが外へ。
枠沢は装置類が運ばれていくのを
だまって見ていた。
本当に残念そうに。
コンピューターもデーターも
全て持っていくつもりらしい。
空はすでに白み出している。
外には大型のトラックが。
装甲車も。
ヘリまで。
迷彩服姿の自衛官が。
警官もいる。
「隊長。
怪獣が」
「何」陸月。
「護衛艦と交戦に。
今テレビで」
枠沢がテレビをつけた。




