ワット
その夜。
トム・ワットはモンローにあてがわれた部屋にいた。
誰かがドアをノックした。
「ジャックか。
入れ」
ジャック・ハードが音もなく中へ。
「わかったか」ワット。
「はい、何とか」
「それがデーターか」
ワットはジャックの持つDVDーROMの束を
受け取った。
「その中に全て入っているはずです。
モンローの個人用データーバンクから
抜き取りました」
ワットはそのDVD―ROMをジッと見つめた。
「しかし-----スタールの奴め。
喰えんタヌキだ。
変身時間が短いだの
まだ完成せんだの。
いろいろ難クセつけおって。
変身時間をワザと短くしておったとは」ワット。
「どうします」ジャック。
「これさえあればもう奴は必要ない。
変身時間さえどうにかなれば
むしろ邪魔だ。
最初の計画通り始末する。
奴め。
我々をなめおって。
奴の腹の底くらい
このワシが見抜けんとでも思っておったのか。
今までは
奴に研究の主導権を握られ
言いなりになるしかなかったが。
これさえ手に入れば」ワット。
DVDを大事そうに。
カバンにしまう。
「言われた通り素直に言うことを
聞いていればいいものを。
挙げ句のはてにこのワシに命令まで。
何様のつもりだ」
"どちらが主人公か思い知らせてやる”
「今までガマンしたかいがありました。
しかし-----枠沢という教授が」
「例の-----モンローによると
怪獣をコントロールするという」
「はい。
リドニテスでも何でも洗脳できれば
我々の意のままに」ジャック。
「そんな話
信用するのか。
どこの馬の骨ともわからん学者の言う事を。
それにモンローの奴
ズル賢い奴だ。
我々が変身時間の事を気づいたのに
感ずいているフシもある」
「それで-----あのような話を」
「そうだ。
そうとも取れる。
もし本当でも
今の我々にそんなもの必要ない。
また何年も待つ事になるしな。
あの信用できんモンローの下で。
それに逆に
モンローの奴に
こちらが洗脳されでもしたらどうする。
奴はそのつもりだろう。
そうなった場合、我々に防ぎようがあるか。
今回の変身時間の件にしろ
解析して奴の欺瞞を見つけるのに
何ヶ月かかったと思う。
データーを受け取ってからすぐに始めて
わかったのがリドニテス完成直後だ」
「他には本当にもうないのでしょうか。
もし他にも擬装されたものがあればどうします」ジャック。
「大丈夫だろう。
アレだけDNAを調べてもう何もなかったんだ。
奴の研究資料からも出なかったしな。
信じるしかない。
しかしモンローの奴。
全くこの私をナメおって
許さん。
思い知らせてくれる。
それに洗脳されてからでは後の祭りだ」
「確かに。
ですが洗脳方法を開発させた上でというのは」
「危険すぎる。
それとだ。
お前にはだまっていたが
あの枠沢という教授の研究は全て把握している」ワット。
「どういう事ですか」
「枠沢の存在を知ってからすぐ、
部下を使って
何度か奴の研究所へモグリ込ませた。
スミスたちも同じ事をやっているようだが-----。
いや。
とにかく
枠沢の研究については全て把握済みだ。
研究データもな。
手にいれて解析済みだ。
その結果から考えても
モンローの買いかぶりだ。
枠沢の遺伝子もコレまでに何度か調べたが。
一年以上前からだ。
定期的にな。
普通の人と変わらん。
つまり枠沢にはリドニテスは造れなかったという事だ。
モンローも今、調べているようだが。
枠沢の遺伝子を。
しかし何も出てこんさ。
それにモンローの言うとおりなら
枠沢の研究データをもとに、
モンロー抜きで
このワシが洗脳方法ぐらいすでに開発しておるわ」
「なるほど。それならば。
後は行動あるのみですか」ジャック。
「研究所の連中にしろ
モンローがいなくとも大丈夫だと言っているしな」
「それならば。
しかし大丈夫ですか。
モンローにはまだ利用価値が」
「大丈夫だ」
ワットはモンローにはだまって
別の場所にここと同じような研究所を持っていた。
そこの研究員を動員すれば
モンローなどいなくても。
すでにその段階に達している。
「そうだ。
エリオットはどうした」
「はい。
準備はすでに」
「怪獣の力もリドニテスの力も
すでに実証ずみだ。
それを知るために
エリオットを使って怪獣を逃がしたんだ。
それに政府の連中がここに気づくのも
時間の問題だしな。
グズグズできん」
「では-----ここは」
「放棄する。
向こうへ全て移せばいい。
すでに盗み出したデーターによって
怪獣の製造工場だけは稼動している。
全てコンピューター制御でな。
リドニテスの製造工場と研究設備もすぐ完成する。
後はリドニテスの完全化だ」
「はい。もちろん。
完全なリドニテスを造るための基本データーも
そのDVD―ROMの中にあります」ジャック。
トム・ワットはニヤリ。
「それで
リドニテスになる薬は手に入れたな」
「はい。ここに」
ジャックは例の錠剤の入ったケースを。
中には錠剤が十数粒。
「これだ、これだ。
これさえあれば」
ワットが奪い取るように。
「昨日。
これをモンローの奴が出してきた時は
よほど飲もうかと思ったぞ。
しかし
ワシだけではなく
他の。
あのいまいましいスミスやケラーたちまで
リドニテスにしてはやっかいだと思ってな。
苦労したぞ。
まあリドニテスになるのを許してやったにしても
すぐに始末すればすむ事だがな。
その点モンローもうまい事を考えたものだ。
変身時間が限られているとはな。
それにあの○○どもめ。
私の流したデマを真にうけおって」
「はい。
前の薬同様
最低一ヶ月は様子を見ないと危ないと」
「あれは効いたようだ。
ケラーにしろスミスにしろ
二の足を踏みおった。
しかし今度の薬は
本当にだいじょうぶなんだろうな」
「それはもう。
その証拠にあのモンローも」
「そうか。なるほどな。
それならば。
それで-----他のリドニテスたちは」




