怪獣
モンローは枠沢、哲斗たちと部屋を出た。
研究所の建物を出、
外へ。
自動車で別の場所へ。
バドたちも同乗している。
小さなコンクリート製の建物が見えてきた。
「あれだ。
あそこから地下へ降りる」
枠沢たちは建物の中へ。
エレベーターへ。
そこから狭い通路を
電気自動車に乗り換え。
進んだ。
「ここだ。
その前にこれを」
放射能防護服を渡された。
全員、それを着け中へ。
そこにはテレビのモニターが。
モニターが明るくなり
怪獣たちが。
眠っているようだ。
「今のところ五頭しかいない」
枠沢は
その怪獣たちの姿を見るや
何か考え込むような仕草。
「この中で」哲斗。
「そうだ」
「しかし
逃げ出したりはしないのですか。
現に」シオリ。
「それは-----。
全くその心配はないはずだったんだが」
モンローは枠沢の方をチラリと見た。
ニヤリと微笑を。
「中へ入るかね」モンロー。
「是非」哲斗。
「危険では」シオリ。
「いや、心配ない。
奴らは今。冬眠状態にある」
「冬眠?
と言いますと」シオリ。
「いや
これは枠沢の考えなんだが。
もし怪獣を造った場合
その怪獣が暴れだせばどうする。
その手の○○モノでもそうなっているんだろう。
その手の○○モノでは必ず暴れだすんだろう。
造ったはいいが、暴れでもされれば
それこそ大変な事になってしまう。
そう考えたわけだ」
「それで」哲斗。
「しかしだ。
怪獣の遺伝子というか胚は造った。
たとえ遺伝子はできても実際成長させなければ
うまくいったのかわからないだろう。
だが成長させて暴れられればどうする。
それで枠沢が思いついたんだが
冬眠状態のまま
成長させればいいのではないかとね。
もちろん死ぬまでね」
「冬眠状態のまま大きく。
ですか」シオリ。
「一生か」哲斗。
「そう。その通り」モンロー。
まあ冬眠状態にしてあっても
今回のように暴れだすようだが。
その手の怪獣モノの製作者は
何が何でも怪獣を暴れさせたいのだろう。
まあ、当然か。
その証拠に枠沢の奴。
誰でも簡単に、バスワードさえ知っていれば。
その気になれば怪獣を起こせるようにしてある。
普通、目覚めさせることが出来ないようにしておくものだろう。
もっと複雑にするなりして。
まあいいか。
枠沢がそう言うんだから。
日本ではそれが正しいんだろう。
しかしそう思って、そのように作ったはいいが。
実際、怪獣が暴れたとなると。
枠沢には言えないし。
どうする。
本人は気づいているのかいないのか。
「しかしそんな事」
「見ての通りだよ」モンロー。
「一生を冬眠状態のままというのはかわいそうだと
私も言ってしまってから思い直してね。
やはりやめようという話に
なっていたはずなんだが」
枠沢はモンローを。
「しかし他に方法が」モンロー。
「でも、それならなぜ。
クルール市の怪獣は」哲斗。
「だから誰かが人為的に目覚めさせたとしか。
もちろんこちらのミスで
目覚めた可能性もあるのだが。
電源の切られていたカメラやハードディスクの件も。
他にもあるしね。
やはりあれは破壊工作だと」
「そういう事ですか」哲斗。
「人為的とおっしゃいますと。
怪獣を目覚めさせる事もできるのですか」シオリ。
「もちろん、やろうと思えばできる。
と言うか、この怪獣たち
ある特定スペクトルのガンマー線を照てなければ
死ぬまで目覚めないように造られているんだよ。
遺伝子レベルでね。
かわいそうだが仕方ない。
もし暴れでもされればね」モンロー。
「それで枠沢先生は反対を」哲斗。
「そういう事ですか」シオリ。
「もちろん全ての怪獣を
そのようにしてあるわけではないがね。
最初に造った奴らは
一生冬眠状態でという機能は持っていなかった。
しかしそれでは危なくて成長させられないしね。
あの協力者たちがね。
どうしても成長させろと
うるさくてね。
それで仕方なくね。
そういう機能を持つ怪獣を
造らざるを得なくなったわけだ。
不本意ながらね。
まあ彼らにしてみれば当然の要求だろうしね。
それでそういう機能を持った
怪獣を造ったわけだ。
とにかく冬眠状態のままなら
だいじょうぶだと思ってね。
それで安心していたんだがね。
私もウカツだったよ」
「ですが冬眠状態から目覚めさせられるのなら、
もし暴れだせば
またその装置を使って眠らせればいいのでは」シオリ。
「それは」モンロー。
「それは-----。
技術的に無理だろう」
枠沢も苦笑を。
「まあその手のマンガでは
そういう怪獣もいるがね。
スイッチ一つで
起こしたり眠らせたりできるモノもね。
しかしその装置が破壊され-----。
何度も繰り返すうちに耐性が出来。
他には何があったか。
いや-----何でも」枠沢。
「そういう怪獣もいるのか?
いるのならそういう怪獣もつくらないと」モンローは枠沢を。
「いや。
まあ-----
しかし技術的に」
「それはあるか」
モンロー。
考え込んだ。
「とにかくそうするには
最初からそうなるように造っておかなければね」枠沢。
哲斗たちは無言。
「ン?」
哲斗が壁に掛けられた
武器のようなものに気づいた。
それはまるでアニメに出てくる
○○のようなモノにそっくりだった。
アニメファンが見れば○○して喜ぶ。
「これは-----何ですか」
「これは」
モンローはニコリと。
「君は目ざといね」
そう言ってロケット発射筒のような形のモノを
壁からはずした。
枠沢の方をチラリと
「これは何かの武器ですか」哲斗。
「携帯用の重力波レーザー砲だよ。
こうやって肩にかついで撃つ。
対戦車ロケット発射筒のように。
私はこれを
携帯バースト・ビーム砲と名づけた。
枠沢は反対だったが。
まあいいか。
このレーザーが命中すると
命中した物質は反物質反応を起こす」
二人とも-----どうしていいのか。
「イヤ、小さな砲だ。
殺すまでにはいたらない。
追い払う事はできるーーーーーかな。
まあその程度のモノだよ。
持ってみるかね」
モンローは哲斗へ。
「君はいい体格をしているねえ」
モンローは携帯BB砲をかつぎ
構える哲斗へ。
「御刀さんは空手、柔道、合気道。
何でもやっていますから」シオリ。
「ホウ。それはすごい」枠沢。
御刀をジッと。
「カメラマンはこう見えても体力勝負ですから。
ですが季沢君も」哲斗。
「武道を」枠沢。
「はい。
一応」シオリ。
モンローは携帯BB砲を元の場所へ戻した。
枠沢たちは空洞内へ。
天井までは百メートル以上あるだろう。
巨大な怪獣が一匹、二匹と。
全部で五匹いた。
モンローの話した通りだ。
みんな眠っている。
「なるほど」枠沢。
「凄い」シオリ。
「本物だ」哲斗。
間近で見ると
相手が眠っているのがわかっていても
その迫力に圧倒される。
「モンロー。
いったい何体くらいの怪獣を造ったんだ」枠沢。
「成獣にまで育てたのは
ここにいる五頭を含めて
全部で十頭だ」
「十頭。
じゃあ、残りの五頭は」枠沢。
「一頭はご存知の通り
クルール市で。
残りの四頭は
うまく-----いかなくてな」
歯切れが悪い。
リドニテスの力を試すために。
「そうですか」哲斗。
「それで他には。
カテゴリーは」枠沢。
「ワンからスリーまで」
「カテゴリー?」シオリ。
「イヤ、何でもない。
それで」枠沢。
「それ以上のは造っていない。
心配するな。
冬眠状態のまま置いておけるようにするには
手間もかかるしな。
そうでない怪獣はたくさん造ったが
成長させるわけにはいかんだろう。
それで
卵のままで-----というか、
遺伝子の状態で保存してあるのが
二三百はあるだろう。
はっきりとした数は-----」モンロー。
「遺伝子のまま」シオリ。
「どうしてそんなにたくさん」哲斗。
「イヤ。研究目的というか。
例えば怪獣の遺伝子をいじってキメラを造ったり
様々な機能を持たせようとしたわけだ。
重力推進で飛べるようにしたり
生物レーザーを撃てるようにしたり。
怪獣というからには
火くらいね。
吐かないとね。
シメシがつかないしね。
アッ。イヤ。
例えば
怪獣のイラストがあるとする。
子供のラクガキでも何でもいい。
そのイラストの形通りの怪獣を造ったり
いろいろだ。
遺伝子のどこをどう変えれば
どうなるとかね。
試したわけだ。
そうこうしている内にね。
気づいたら
そのくらいの数になってしまっていたというわけだ。
中にはワシにダマって勝手に造っておった者もな。
もちろんそういう事はしないように
クギをさしておいたがな」
「それは-----大変だ」枠沢。
「心配するな。
だいじょうぶだ。
チャンと手は打ってある」
枠沢はその言葉に-----だいじょうぶかな。
哲斗たちは一応-----。
「絵にして渡せばその絵の通りの怪獣が
次の日には出てくるわけですか」シオリ。
「次の日とはいかんが。
その気になれば半年から一年後にはね。
成獣になってね。
もっと早くもできるがね。
リドニテスのように」モンロー。
「他の怪獣たちはどうするつもりだ。
卵のままというか
胚のまま置いておくつもりか」枠沢。
「いや。
破棄する事も考えてはいるのだが、
下手に海に流しでもすれば
それこそ成長を始めてしまうしな。
まあ今のところは安全に管理されているので
だいじょうぶだ。
私個人としては成長させてみたいのだが。
とても現状ではね」
「どうしてですか」シオリ。
「本当に設計図通りに仕上がったかを見るためだよ。
もちろん
遺伝子をそうなるように造っておいても、
実際成獣にしてみて
そうなっているかを確めないとね」
「なるほど」哲斗。
「そう、それで-----。
仕方なく等身大くらいのも多数造ったんだよ。
巨大でない奴はね。
やはり実際そうなっているか
姿形や能力がね。
しかし巨大な奴は
そう簡単に成獣にまでできないし。
その代用だよ」
「それは今どこに」
「この島にはいない。
別のところだ」
「それで先生。
エサは」哲斗。
「えさ?
そんなものいらんよ。
無機物を直接
栄養に変えることができるようになっている。
そして成長する。
中にはリドニテスのように
宇宙線を体内に取り込んで
必要な物質に変えるモノもいる。
いや-----その方が多いか。
今では」
哲斗もシオリも感心もしきり。
「それで破壊工作とは」哲斗。
「遺伝子に冬眠ですか。
そのような機能を組み込んだつもりでも
それがうまく機能していなかった。
可能性はないのですか」シオリ。
「それは。
怪獣を冬眠から目覚めさせるには
特殊なガンマー線スペクトルを照てる必要があると
さっき説明したね。
そのガンマー線スペクトルを発生させる措置を
しまっておいた金庫が壊されていてね。
そういうことだ」
「ではその装置を使って」シオリ。
「だから遺伝子の設計ミスではないという事だ」
「犯人は」枠沢。
「今、調査中だ」
「その装置は」哲斗。
「まだ見つかってはいない」モンロー。
「それでは」
「またやるかも知れん。
しかし警備も強化している。
二度とあのような事はさせないつもりだ。
今度やれば、必ずつかまえてやる。
しかしだ」
モンローは枠沢を。
「もし枠沢さえ協力してくれれば」
「どういう事ですか」哲斗。。
「いや、枠沢は怪獣をコントロールする技術を
開発していた。
それさえ完成すれば。
怪獣を思いのままにコントロールする事も可能だ。
その機能を怪獣やリドニテスに組み込めれば
今度のような事はなくなる」
「怪獣をコントロールですか」シオリ。
「そんな事可能とは。
それは-----。
リドニテスの活動時間をのばすために
枠沢先生のお力を-----では」哲斗。
「いや。それもあるが。
もちろん。
しかし、メインはそれだ」
「ですが本当に-----そんな事」シオリ。
「枠沢によれば
できるかも知れないと思っていたらしい。
その当時は
昆虫の本能というか。
昆虫には様々の本能がある。
それを解析するらしいが。
例えばハチやアリは
女王のために様々な仕事をする。
クモは巣を誰に教えられる事もなく造るしね。
それにホ乳類にしてもハ虫類にしても
天敵やエサ
仲間を認識し
それの応じた行動を取る。
つまり先天的に。
生まれる前から
学習してではなく
脳にそのような記憶や行動ができるように
なされているらしい。
遺伝子には脳の記憶も入っているという事だ。
コンピューターでいうROMとRAMの関係だ。
遺伝子によって脳が先天的に持っている記憶と
学習のよって脳に記憶されたもの。
もちろんCPUにあたる機能もあるだろうが。
その先天的な記憶というものから、
こちらの都合のいい記憶が
脳内につくられるように
遺伝子に書き込んでおけばいい。
それらから
コントロールできないかと考えていたようだ」
「枠沢先生」哲斗。
「そんな事。
できるのですか」シオリ。
「もしできれば
スタール先生の言うように
クルール市のような事は」
「いや。
それに関する研究は
今は-----やっていない」枠沢。
「どうしてですか」シオリ。
「それは」
枠沢はモンローを。
「枠沢によると
人の洗脳につながるかも知れないと言うんだよ。
遺伝子レベルでそんなものを組み込めば
怪獣でも何でも」
「それは」哲斗。
「ありますか」シオリ。
「当然か。
悪用されれば大変な事に」哲斗。
「ですが。怪獣が人を襲わないようにするだけなら」シオリ。
「モンロー先生はその研究を」哲斗。
「私も手をつけたんだが。
いろいろ試してみたんだが
なかなかうまくいかないんだ。
やはり枠沢の協力がなければ」
そのやり取りはライグたち二人も聞いている。
「とにかく考えてくれ」モンロー。
枠沢は困ったよう。
モンローたちはそこを後にした。
哲斗たち二人は
ライグたちに連れられ、研究所の一室へ。
軟禁状態。
外からカギを掛けられ
見張りもいる。
モンローと枠沢はコンピュータールームの端末へ。
モンローが枠沢へ。
「これがリドニテスの遺伝子だ」
コンピューターに取り込まれたデーターを。
「人と違うところは」枠沢。
「すぐに出せるが。
人のDNAサンプルが必要だ」
モンローはニヤリ。
モンローは枠沢から血液のサンプルを取った。
枠沢は-----あっさりと提供した。
それに特別な処理をし
顕微鏡にかける。
「該当部分はここだな」
人とリドニテスの遺伝子の相違部分のみを
次々に画面上に。
「これだけ違うのか」
「そりゃそうだろう。
空を飛べるようにしたり
武器をつけたり。
それより何より
変身できなけりゃあ、話にならん。
リドニテスに変身しようと思っただけで
遺伝子から酵素が分泌し
それによって人の遺伝子が
金属人間のものへと変わる。
巨大化する時も同じだ。
それが遺伝子のこことここ。
他にも
-----に組込んである」
「すごい」
「苦労したよ。
一人でこれをやるのは。
それに武器も。
しかし変わらんな。
お前の遺伝子は。
お前なら私に内緒で
リドニテスをとおの昔に
完成させているかと思ったが。
いくらガンマー線スペクトルを照てても
全く変わらん」
モンローはがっかりしたように。
「それで私の血液をか。
まあいい。
しかし-----。
やっぱり
研究所員たちにも、あの協力者とやらにも
リドニテスの薬を」
「ああ、飲まさんわけにはいかんだろう」
「しかし-----その-----。
暴れ出せば。
人というものは強大な力を持つと」枠沢。
「何をするかわからんか。
しかし変身していられるのは数十分だ。
今の段階では
そんな事せんだろう。
だが」モンロー。
「クルール市の件は」
「あれは。
それなんだ。
予想外だった。
それにこのまま-----」モンロー。
「長時間変身できるようになれば-----か」
枠沢はニヤリ。
「そうだ。
そうなれば何をするか。
何が起こるかわからん。
その前に」
「それで-----。
変身時間を決めているのはどの部分だ」枠沢。
スタールはニヤリ。
「やっぱり知っていたのか」
「もちろんだ。
変身したままにする方が簡単だ。
一定時間経てば元に戻す技術は
非常にむつかしい。
それに人の姿に保つ方が問題であって
リドニテスの方は問題ないはずだ」
「その通りだ。
私もお前の言うほど
お人好しではない。
やはり何であれ
歯止めは必要だ。
しかし
お前が協力してくれれば
人を完全なリドニテスへと変えられる」
「全人類を変えるなら必要ないだろう」
「一度に変えられればな。
一部の者だけがリドニテスになり
他の者を支配しようとするかも知れん。
このままでは
みんながそうなってしまう前に。
みんながなってしまえば
結局は今までと同じ事だしな。
支配も何もできないだろうし。
そうなると結果は眼に見えている。
それを防ぐためだ。
例の怪獣騒ぎも
そのような考え方の輩がした。
のかも知れん」
「そういう事か」
“モンローの奴は何も知らんからなあ。
全人類を一度にリドニテスにしても
人は急に巨大な力を持てば。
いや-----モンローは”
「そうだ」モンロー。
「コントロールか」
「お前ならできる」
モンローは何か言いたそう。
「何年かかるか。
それでもできるかどうか。
それより
リドニテスの大量生産は待った方がいいのでは」
「それは無理だ。
薬は今日。明日中にもできる」
「そうか。
考えさせてくれ」
枠沢は自室へと戻った。




