表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

アラーム

作者: 遊罔

警告音で目が覚めた。



いつも通りのスマホのアラーム音だろうと思って伸ばした手は空を切った。

そこで初めておや、何かがおかしいな、と思う。

よく聞くと”ウィンウィンウィン”という音は上でけたたましく部屋中に鳴り響いていた。


火災報知器だ。


一瞬で覚醒した意識は自分の体を強制的に動かし、今までにない速さで自分の体をはね起こした。

その勢いで鍵と財布、ベッドの脇の机に置いてあるスマホを手に取り、玄関へと急ぐ。

こういう時だけは6畳一間の部屋で暮らしていることに感謝したくなる。

誰を気にかけることもしなくてよい、自分のことだけ考えていればそれでよい。

一人暮らしの気楽さは孤独の寂しさを埋め合わせてはくれないが、煩わしい人間関係に悩まされるよりはずっとましだ。

そう思いながら鍵を外して外に続くドアノブを回すと、ガチャ、という音がしてドアノブは途中で引っかかった。


…あれ、おかしいな。


いくら鍵を回してドアノブをガチャガチャしても、ドアノブは完全に回りきらなかった。

こんな時にドアが故障するなんて、全くついてないな。

ついてないと言えば、こんな朝っぱらから火災報知器に起こされたこともそうだ。

今日の講義は午後からだったから、少なくとも昼まではぐっすり寝られたはずなのに、と若干恨めし気にけたたましく鳴り続けている火災報知器を見る。

だが、目下の問題は睡眠時間ではなく、ドアが開かないことである。


しばらくガチャガチャを続けていたが、ドアは全く開こうとしない。

困った、まさか4階の窓から逃げるわけにもいくまい。

そう思いつつカーテンの開け放たれた窓を振り返った。




窓の外には、何も、なかった。




普段なら緑色のアパートの芝生と街路樹が見えるはずの窓の外には、何の景色も見えなかった。

いや、何もないはずなのだが、なぜか窓の外からは蛍光灯のようなぼんやりとした光が部屋中を差し込みまんべんなく照らしている。

そういえば今日は起きてから部屋の電気を付けていなかった、と今更気が付く。


ここまで来て僕はあまりにも非現実的な光景に急に背筋が寒くなり、必死にドアノブをガチャガチャした。

開かない。開かない、開かない!なんで!

窓を何度も何度も振り返る。ドアノブをひねる。開かない。

警告音は未だ耳をつんざく音量で部屋中を満たしている。


すると窓の外になにか黄色い点が見えた。

そして段々近づいてくる。

なんで、こんなことが起こる。

火災報知器はいつも通り誤報だろうと思っていたが、どうやら何か異常なことが本当に起こったらしい。

黄色い丸いものはどんどん近づいてくる。

やめてくれ、得体が知れない、怖い、近づいてこないでくれ!なんでドアが開かないんだ!

僕はますます必死にドアをガチャガチャしながら後ろを振り返った。

その得体のしれない黄色い丸いものは、まっすぐに急速な速さでこっちに近づいてくる。

ボールが飛んでくるように放物線など描いていない。一直線にこっちに向かっている。

理解できない、いやだ、いやだ、いやだ!なんだ、この状況は!

あんなものに追突されたら窓ガラスなど粉々に砕け散ってしまうだろう。というか、この部屋ごと押しつぶされそうだ。

いや、逆に窓ガラスが自分を守ってくれるかもしれない。

明らかにその黄色いものはこの部屋の5倍以上大きく押しつぶそうであるが、もしかしたら柔らかいかもしれない…

そうやってわずかな希望にすがりながらひたすらにドアを開けようとする。開かない。

黄色いものは窓のすぐそばまで来ていた。止まる気配はないし、表面はなめらかで固そうだった。突っ込んでくる!

もう間に合わない、そう理解して絶望すると同時に背後でガラスの割れる音が聞こえ、体の奥まで響くような一瞬の衝撃ののちに僕の意識は暗転した。


警告音はついぞ途切れることなく鳴り続けていた。


小説家になろうを利用している以上は読み宣でいるわけにはいかないと感じ、一筆書いてみました。

心の目で優しく見てください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ