手紙と《ステータス》
窓からの日差しが眩しい。
「うん・・・朝か・・・」
寝ぼけた頭で朝なのかーとぼんやり考える。
なんだか、やけに明るいような気がするなーなんて考えていて一気に体をおこす。
「ヤバイ!遅刻か!!」
辺りを見回して違和感に気づく。
いつもの目覚まし時計がない。
いや、それどころか・・・
「えっと・・・ここどこ?」
俺がひとり暮しするマンションは確かにオンボロだ。
家賃が安いのと仕事場から近いので借りた1LDKのいわくつきの物件だ。
だけど、今俺がいる部屋はほとんどの家具が木で出来ている上にまったく見慣れない部屋。
今の技術での建物というよりも時代が異なるログハウスのような造りだ。
「どこなんだ・・まだ夢の中・・・って感じでもないよな。」
夢にしては触ってる物体の感覚がリアル過ぎる。
俺はふと窓の外をみて絶句する。
いつもの部屋から見える光景は若干整備された歩道なのに、今見えているのは完全な木々。
「どうなって・・・誘拐なのか?」
真っ先に思い付くのはその線だが、俺を誘拐しても何のメリットもない。
可愛い美少女ちゃんならその価値もあるだろうけど、こんな普通の男を拉致してもね・・・
思わずため息をつき、ベッドに腰をかけると、枕元に手紙が置いてあるのに気づく。
「なんだろ・・・今時手紙って・・・。」
裏返してみると俺の名前が書いてあって、とりあえずあけてみる。
『川崎蓮さまへ。このお手紙を読んでる頃には恐らく混乱されていることでしょう。いきなり見ず知らずの場所にいることに戸惑っているでしょう。まず、先に自己紹介します。私は神です。』
神さまからの手紙だった。
えっと・・・神さま?
『神と名乗ってもあなたは恐らく頭のおかしい誘拐犯からの手紙としか思わないでしょう。まあ、そこは置いておいてください。』
スルーしろと?
『本題にいきましょう。あなたがいるのはあなたの世界とは全く異なる別の世界。いわゆる異世界です。』
は・・・・・?
『信じる信じないは自由です。とりあえず信じるための証拠としてこの手紙を読み終わったら《ステータス》と叫んでください。まあ、叫ばなくても大丈夫です。念じればいいので。』
・・・・・・・・
『さて、何故あなたが異世界にいるのか?それは特に理由はありません。』
無いのかよ!
『・・・・というのは冗談で本当の目的はちゃんとあります。ですが、今はあなたは知らなくていいです。時がきたら教えてあげますので。それまでは心置きなく異世界生活を楽しんでください。 P.S.どうしても困ったことがあれば、家を出て一番近くの町の協会に行ってください。 女神より。』
内容はこれで終わりだった。
色々突っ込みたいけど、とりあえず・・・
「えっと・・・《ステータス》?」
言葉にするとめちゃくちゃ恥ずかしいけど、なんとか言えた。
すると、目の前に仮想のようなステータス画面が表れた。
内容は以下の通り
ネーム 川崎蓮
種族 人間?
性別 男
level 1
一般ステータス
攻撃力 100
防御力 100
魔法攻撃 100
魔法防御 100
スピード 100
精神力 100
食欲 50
性欲 200
睡眠欲 150
スキル
《禁欲》、《支配欲》《?(level5で解放)》《?(level10で解放)》《?(level20で解放)》
うん、色々突っ込みたいけど・・・
まず、種族人間?ってなんだよ!?
人間だよ俺!
それから、ステータスのところに何故3大欲求あるの!?
しかも、性欲だけが他のステータスより高いってなんだよ!
スキルもなんか変だしさ・・・
効果は見れないのかな?
そう思ってタップしてみると詳しく出た。
スキル 《禁欲》
効果 欲求への耐性。食欲、性欲、睡眠欲の完全な耐性がつく。
この効果は本人の任意がないと解除されない。
スキル 《支配欲》
効果 他者への欲求を完全に支配できる。効果は使用者のlevelによって変化する。
うーん。いまいちわからないけど、とりあえず3大欲求をコントロール出来るのかな?
ステータスをみると魔法とかもあるみたいだけど、食欲、性欲、睡眠欲がどう関係するんだろ?
そもそも欲求にステータスって・・・
「どうしよう・・・」
拝啓、お父様、お母様、妹、そして愛犬ポチよ。
どうやら、異世界に転移したらしいです。