第十五話
書き直しました。2019
翌日の会議にて、少女は目覚めないうちから、聖女と呼ばれることを義務付けられた。これを考えたのは青説殿下で、いの一番に賛同したのがムガイだった。
青説殿下が聖女だと主張したい理由は分かる。魔王を宿した者と言うよりは、魔王を宿した聖女が現れたと言った方が、民衆は安堵するし、何より危惧された問題もいったんは収束するだろう。
魔竜を倒せる力が手に入ったとなれば、各国から非難を受ける必要はなくなるし、力が自国にある分、優位にだって立てる。それが〝聖女〟なのだとすれば、なおさらだ。神の意、天の意は条国にあると見なされ、各国を黙らせることだって可能になる。
でもそれを、他国の人間であるムガイが喜んだのが引っかかった。大げさな言い方をすれば、母国が劣勢にたたされるという意味にすらなる。晃の一つの希望が叶ったわけだから、僕は嬉しいけど、普通なら複雑な思いになるんじゃないだろうか。
アイシャさんも引っかかったのだろうか、会議の後、ムガイを捕まえて何やら注意していたようだったけど、僕は紅説王に呼ばれて詳細を聴くことは出来なかった。
おそらくだけど、アイシャさんのことだから、他国の王族の決めごとに、あからさまに賛否を唱えてはならないと注意した可能性が高い。
思えば僕は、彼のことを何も知らない。彼がきた当初あれこれと詮索しすぎて警戒されてから、殆ど喋ったことがなかった。話しかけても返事を返すばかりで、まるで響かない。治癒能力者という意外はたいして特出すべき点もなかったから、彼への興味は日ごとに失っていってしまった。
でも、ムガイは本当に、僕が判断したようにつまらない男なのだろうか――。僕は、ミシアン将軍がやって来た日のことや、研究室でムガイを見かけた日のことを思い出していた。
ムガイは、青説殿下と交流を持っているんだろうか?
神経質で、警戒心がばか高い殿下と知己の仲であるという可能性が? ぐるぐると思案しながら歩いていると、僕は前を歩いていた王にぶつかった。
「痛っ――すいません」
僕が鼻を擦りながら謝ると、王は振り返って「いや」と笑った。
「ついたぞ。ここだ」
「ここですか?」
そこは、すみれの絵が描かれた襖がある部屋の前だった。あの少女が寝ている部屋だ。
一瞬心臓が高鳴った。昨日、僕がしたことが過ぎる。
「彼女、聖女がここで寝ている」
「ああ、はい……」
僕は軽く頷いて、
「どうして僕をここに?」
もしかして、昨日のことがバレたか? もしそうなら素直に謝って、ここに残してもらうように頼もう。密かにどきどきした僕だったけど、それはまったく見当違いだった。
「彼女は見たところ、どこかの国の少数民族だと思う」
「ああ……」
僕は一瞬呆けて、「そうですね。主だった民族の衣装ではなかったですから」と、話をあわせた。
聖女は少し変わっていた。服の見た目的には、僕の国が一番近い。だが、肌の色は驟雪国や条国、水柳国の者と同じだった。でも、そのどれの国とも服装が違う。
彼女はルクゥ国の者が着るジュストコールと少し違う感じの上着を羽織っていた。丈は短いし、豪華絢爛でもない。無地の紺色の生地だ。平服の質素さにも似てるが、ここまで刺繍がない物は初めてだ。
しかもルクゥ国ではジュストコールは男しか着ない。中に着ていたシャツは似ていたが、それもルクゥ国では男しか着用しない。決定的に違うのはスカートだ。スカートはルクゥ国でも女性が履くが、あんなに短いスカートは見たことがなかった。
膝より上にあるスカートなんて、破廉恥極まりない。娼婦だって履かないぞ。
「それでだな、レテラ。君を呼んだのは、他でもない。聖女が目が覚めたら、何語で話すか分からないだろう? 君は言語が堪能だから、少数民族の言葉も分かるんじゃないかと思ってな」
「はい。確かにいくつかの少数民族の言語も学んだことがあります。自己流ですが」
「では、聖女が目覚めるまで見張りもかねていてくれるか」
「それは構いませんが……僕より燗海さんの方が言語に関しては堪能なのではありませんか?」
どのくらい旅をしていたのか詳しくは知らないが、百年以上も旅をしていたんだから色んな民族や部族の集落にだって世話になったりしたはずだ。当然現地の言葉も覚えただろう。
それに、少し後ろめたい気持ちもある。
「それはそうかも知れんが、燗海がそういう経験になりそうなことは若い者に任せろと言ってな。老いぼれは戦って去るのみだとまで言っていたよ」
(燗海さんらしいな)
僕は思わず微笑う。だけど、なんだか少しだけ切ない気がした。
「分かりました。では、後学のためにもやらせていただきます」
僕が承諾すると、王は微苦笑した。怪訝に見返すと、不意に王は頭を下げた。
「すまなかったな。レテラ」
「どうしたんですか!?」
僕は驚いてあたふたとしてしまった。一国の王が頭を下げるだなんて、ありえない。
「晃さんのことだ。陽空に聞いたのだが、キミは晃さんのことが好きだったんだね」
「……はい」
「火恋も泣いて暮らしていると便りが届いたよ。彼女には乳母として、本当によく火恋の面倒を見てくれていると私も感謝していた。本当に、残念な人を亡くしたと思っている」
「ええ。そうですね」
王の悲痛に歪む表情を見ながら、僕は小さく頷いた。
「本当は聖女のことは、燗海に頼むつもりだったのだ。レテラには苦しいだろうと。だが、燗海が、レテラなら大丈夫だと胸を張って言ったのでね……大丈夫か?」
王は心配そうに僕を見た。
「頼んでおいてなんだが、辛いのなら辞めても良いぞ」
「いいえ」
僕はかぶりを振る。
「大丈夫です」
僕はきっぱりと答えた。出来うる限り、全てのことを記すと決めた。そしてそれを、後の世に残すんだ。
王は僕の決意を見て取ったのか、得心したように笑んだ。
* * *
王が襖を開けると、薄暗い室内の中心で布団から上半身を起こしている少女がいた。聖女だ。
(起きたのか)
年齢は十七歳くらいだろうが、目を開けている彼女は結構大人びて見えた。薄暗い室内に明かりが射して、黒々とした黒曜石のような、きりっとした瞳が妖しく光る。
(珍しい)
僕は彼女をまじまじと見た。
黒い髪に黒い瞳の者はごく稀だ。というか、同じ瞳と同じ髪の色の者が滅多にいない。それはどこの国の者でも同じだった。
「大丈夫だ」
紅説王が優しく宥めるように言って入室した。
聖女はどことなく脅えている風に見える。そりゃ、そうか。目が覚めたら知らないところにいたら、怖いよな。
僕はなるべく柔らかく笑みを作って、
「大丈夫?」
まずは、ルクゥ国の主要な言葉で話しかけた。
これで通じなかったら、ルクゥ国にいる少数民族の言葉で話してみよう。全然様相は違うけど、ヒナタ嬢の民族の言葉を試してみようかな。僕がそう思うと、彼女は口を開いた。
「~~~~? ~~~~?」
は?
僕は目が点になった。
思わず王と顔を見合すと、王もきょとんとした顔をしていた。ってことは、聞き間違いじゃないんだよな?
「え~と……今、なんて言ったのかな?」
彼女は泣き出しそうに顔を歪めて、
「~~~~?」
またわけの分からない言葉を喋った。
「すみません。紅説王。僕じゃ全然分かりません」
申し訳ない気持ちで謝ると、
「いや……」
王は言葉を濁して、何かを考えるように眉を顰めた。
僕は怪訝な思いで王を見やった。
王は、そのまましばらく考え込むようにじっと一点を見つめていたけど、突然思い至ったように顔を上げた。
「もしかしたら……」
王は一瞬ためらって、信じられないことを言った。
「彼女は、この世界の者ではないのかも知れない」
疑心に満ちた声音から、紅説王自身もその仮説を信じ切れてないことが窺えた。
(まさか、異世界なんてそんなことありえないだろ)
* * *
紅説王は、燗海さんも呼んで彼女に様々な言語でいくつかの質問をしていった。僕はそれを胡乱げな瞳で見つめる。
燗海さんは、世界中を旅して回ったが、こんな言葉を聞いたことはないと言って困惑していた。
王はどことなく確信を持っているようだったが、半信半疑といったようすは拭えないようだった。
常識的に考えて、異世界から人がやってくるなど、ありえない。でも、もし本当にそうなら――僕は、隅の方で踊り出す心を感じていた。
結局色んな言葉で色んな質問を投げかけてみても、聖女の答えはちんぷんかんぷんだった。
不安げな聖女を一人残し、僕たちは廊下へ出た。
「どうします?」
「とりあえず、女子を置いた方が良いじゃろう。男がわらわらいるよりも安心するじゃろうしな。アイシャが適任じゃろうな。あの子は気が利くし、優しい。相手も心を許しやすい」
「確かにそうですね」
「分かった。では、当分はアイシャに頼もう。言葉が分からないのなら、教えていくしかない。それもアイシャに任せた方が良いだろうな」
「僕も一緒にいても良いでしょうか?」
「ああ。それはかまわない。私も暇を見つけて通おう。これでも、勉強を教えるのが上手いと褒められたことがあってな」
王は照れたように笑った。
「じゃあ、僕もアイシャさんと一緒に教えたり、暇を見て教えますよ」
「それは良い考えじゃな。言葉というのは、その言語が飛び交う中にいる方が格段に覚えやすいからな。なるべく大勢で、かつ、威圧感のない人材を配置すべきでしょうな」
「そうだな。燗海の言うことはもっともだ」
「して、何語を教えますかな?」
燗海さんの質問に、王は悩んで、「う~む」と唸った。条国って即座に言って良いのに。王は僕らに遠慮してるみたいだ。それとも他に考えがあるのか?
「では、まずは条国の言葉に致しましょうか。ここは条国。条国の言葉で満ち溢れておりますからな」
燗海さんの提案に、王は「そうだな」と、小さく頷いた。
* * *
この三ヶ月ほど、主立ってアイシャさんが聖女に言葉を教えるべく奮闘した。僕も参加してコトの詳細を記録していたけど、聖女はやっぱりアイシャさんの方が安心するみたいで、僕と二人きりになると緊張感が伝わってきていた。
燗海さんはもちろん、王も時間を見つけては聖女に言葉を教えていたけど、成果はあまり上がっていない。
異世界というのは突飛だが、どうやら聖女はどの国ともまったく違う言語を操るところからきたということだけは確かなようだった。
じゃなかったら、知ってる単語の一つや二つがあってもおかしくない。各国で共通の物だってあるわけだし。
例えばドラゴンを狩る武器の名とか、豚竜などの食材だってそうだ。
僕は清書をしていた筆を置いて、腕を組んだ。
じっくり言葉を教えていくしかないのは分かっているけど、こうも進まないと気ばかりが焦る。
晃が命がけで挑んだ結果が、目に見えてこないというのは、なんだかもやもやしてしまう。
魔王が消えてしまっていることから、多分魔王は彼女の中にあるんだと思う。でも、能力が発動しないんじゃ、その確信も出来ない。
魔王の中の何千という能力を発動して魔竜を倒すという悲願も、彼女が言葉が通じないんじゃ、説明のしようもない。
僕は文机の上に置いた時計をちらりと見て立ち上がった。
「時間だな。さて、火恋のところへ行くか」
* * *
転移のコインでオウスへ行くと、目の前に火恋が腕を組みながら立っていた。火恋以外に人はいない。
「侍女はどうしたんだ?」
軽い気持ちで尋ねると、火恋は肩を竦めた。
「人払いしたの」
「なんで?」
「もう、ここに来なくても大丈夫って言うためよ」
「え?」
「お兄ちゃんは、私が落ち込んでるかもって心配して、ちょくちょく顔を出してくれてたんでしょ?」
「うん。まあ」
その通りだけど。
「でも、私はもう大丈夫。勉強にも集中したいし、あんまり来られても迷惑なの」
「……そ、そうか」
僕は静かに項垂れる。内心でショックを受けている自分に驚いていた。火恋に会いに行くことは、僕にとってわりと大事なことになっていたらしい。
「じゃあ、どれくらいなら来ても良いんだ?」
「……」
火恋は眉間にしわを寄せて、口をぎゅっと結んだ。
「もう来ないで」
「どれくらい?」
「だから、一生」
「い、一生?」
火恋の撥ね付けるような口調と態度に、僕は愕然とした。そんなに怒らせるようなことしたか? 僕は必死で記憶を辿ってみたけど、この三ヶ月、該当するようなことはない。
「元々、おにいちゃんと私は他人だし。王族と他国の外交官でしょ? 外交官が王族と仲良くするなとは言わないけど、こんなに頻繁で、しかもこれ以上仲良くだなんて、内政干渉になりかねないもん」
(もしかして、火恋は僕の心配をしてくれてるのか?)
確かに火恋の言うように、ルクゥ国に国籍を置く僕が、あまり他国の王族と親しくしては良くない思いを抱く者もいるかも知れない。生真面目な青説殿下辺りがそろそろ痺れを切らすかも知れないしな。
「それに、私は次期国王だもん。一国の者とだけ仲良くなんて出来ないでしょ」
「そうだな」
寂しいけど、それが御互いのためか。
火恋が王になった時、僕と強い繋がりがあることで劣勢に立たされることもあるかも知れないもんな。
「それにしても、火恋は偉いな。もう自分が王になるときの事を考えてるなんて」
「当たり前でしょ」
極めて低声に呟いて、火恋は一瞬だけ眼光鋭く睨みつけた。僕の心臓は刹那的にぎくりと高鳴ったけど、すぐに落ち着いた。文字通り、本当に一瞬だけだったからだ。
火恋は次の瞬間には、にこりと笑んでいた。
(見間違いか?)
僕は、既に治まった胸を擦った。
「じゃあ、そういうことだから」
火恋はそう告げて、手を振った。
「ああ。そうだな」
僕はまだもう少しいたかったけど、火恋の笑顔に促されるように手を振り返した。名残惜しい気持ちで、転移のコインを転がす。
黒い闇が畳の上に浮かび上がった。
にこやかな笑みを浮かべる火恋を見ながら、闇に沈んで行く。
だけど僕はそのとき、何故か違和感を感じていた。ほんの少しの違和感。僕を睨み付けた、あの刹那的な一瞬。火恋は僕を見ていたけど、その視線は少し外れていて、僕を通してどこか遠くを見ているようだった。
そう、他の誰かを――。
* * *
僕はオウスから帰ると、自室に向って歩いた。
ふと見上げた先に、聖女がいた。縁側に座ってぼうっと手に持っている何かを眺めている。
(なんだあれ?)
遠目には、なにか箱のような物に見える。
僕は近寄って声をかけた。
「聖女様」
びくっと肩を震わせて、聖女は持っていた物を落としてしまった。
慌てて拾い上げると、壊れてないか確認してほっとした表情を見せた。
「すいません」
僕が謝るとなんとなく分かったのか、聖女はいいえと言うようにかぶりを振った。
「それなんですか?」
僕は伝わるように箱を指差して、出来るだけ不思議そうな顔を作った。彼女は気がついたのか、箱を一瞥して僕に手渡した。
手に収まるくらいの少し厚みのある四角い箱は、表面が水色で、中心付近に黒い丸がついている。穴のようなそれは、ガラス球がはめ込まれているのか裏を見ようと傾けると陽光に光った。
裏面は白かった。長方形型に線が入っていて、爪で引っ掛ければ外れそうな仕組みだ。側面のちょうど真ん中には繋ぎ目がある。
軽く力を入れると開いた。
真っ黒い長方形の面が現れて僕の顔を映し出す。
鏡か? いや、鏡なら黒いはずがない。
(どうして黒いのに映るんだろう?)
僕は首を捻りながら、その下を見た。黒い面と繋ぐ金具がある。けれど、金属でも鉄でもなさそうだ。つるつるしていて、硬い。これはなんていう鉱物から出来ているんだろう?
蝶番で支えられている黒い面と対になる方は、突起物が十五個ついていて、その全てに模様が描かれていた。
その少し上に二重丸の線があった。
僕は何気なく一番左端の突起を押した。
「~~~~!」
聖女の慌てた声音が聞こえて、彼女を振り返ると、彼女は眉間にしわを寄せて顔を強張らせていた。
「どうしたんだ?」
独りごちた瞬間、箱が光を放った。ほんわかとした光だったけど、僕は驚いて手を滑らせてしまった。箱が床に落ちる前に素早く掴む。
「ふう……」
僕は流れ出た冷や汗を拭った。
危うく箱を落とすところだった。危ない、危ない。
聖女に一瞥くれると、彼女は目を見開いて驚いた表情のまま固まっていた。
「ごめん、ごめん」
僕が軽く頭を下げると、伝わったのかほっとした表情に戻って、聖女はにこりと笑んだ。だけど、返してくれる? と言わんばかりに手を差し出してくる。
僕は、「もうちょっとだけ」と大げさに頼むしぐさをした。そうすると、どうやら伝わったらしく、聖女はうんと頷いた。渋々って感じがにじみ出てたけど。
箱に目を移した瞬間、僕は驚いて箱を放った。
「うわああ!」
「~~~!」
聖女は悲鳴を上げて、箱を受け止めた。
ほっとして箱を見やる聖女に、僕は恐る恐る尋ねた。
「それ、なんなんだ?」
聖女は僕を振り仰ぐと、開いたままの箱を見せた。
「~~~」
なにか言ってるけど、まったく分からない。多分説明してくれてるんだと思うけど……。
僕はまじまじと箱を見た。そこにはまだ変わることなく、さっき僕が見たものが映っていた。
それは、聖女と少女数人が楽しそうに笑っている絵だった。それが普通の絵ならば何も問題はない。僕だって、驚いたりしない。
だけど、その絵は、とても精巧に出来ていた。
まるで、その人物を生き映したように。背景も、人物も、陰影すらも、何もかもが立体的で、そこに本当に人がいるみたいだ。
宮廷画家だってこんな絵は書けない。
(不気味だ……)
だけど、すごく興味をそそられる。
聖女は僕が複雑な顔をしていたのか、僕の表情を嫌悪ととったのか、箱を折り曲げるようにして閉めてしまった。
「ああ……」
残念な気持ちがぽろっと口をついたけど、聖女はそのまま箱を後ろ手に隠してしまった。
そして僕を見据えると、唇に人差し指を押し当ててにこりと笑った。
(秘密にしてくれってことか?)
確信のないまま頷くと、聖女は安心したように頬を緩ませた。
(そうか。やっぱり秘密にしてくれってことか)
僕は、踵を返した聖女を見ながら確信した。
あんな物がこの世に存在するわけがない。
この世界中をくまなく探せば、相手の顔を写し取り、他に貼り付ける能力者はいるかも知れないけど、あれはきっとそういう類の物じゃない。
紅説王が言うように、彼女は異世界からやってきたんだ。