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天狗の花嫁  作者: 宮部ゆら
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その後(紫雲目線)

森での一件以来、娘とは会っていない。

もともと頻繁に会うような間柄ではなかったため、特に困ることもないが、どうもすっきりしない。


あの時の俺はどうかしていた。

娘が滅多に会わない・・・会うとしてもすれ違うくらいしかなかった俺と親しくなるよりも、何かと気にかけて頻繁に会っていた善丸や天丸と親しくなることは当然といえば当然のことだった。

しかし、俺に会いに来たのかと聞けば必死に否定していたのに、善丸たちとの散歩の話になると、途端に楽しそうな表情をするのが、なぜかどうしても我慢できなかった。

おかげで、あんな大人げない行動に出てしまうとは・・・。



樹から人間の娘を迎えるとは聞いていたが、まさかこんなに早く行動に移すとは思っていなかった。

しかも連れてきたその日に、俺の部屋に連れてくるとは・・・。あいつは昔からやることが突拍子もない。今回の人間の娘を里へ連れてくるというのも、樹の提案だった。


人間の女になら少しは興味を持つだろうとでも考えたんだろうが、樹の考えは存外間違ってもいないようだ。


最近考えることといえば、あの娘のことばかり。

あの娘・・・七瀬優希のことをみていると、どうしても昔のことを思い出してしまう。昔、里の外で逢った人間の少女のことを。


多分、同じ人間の女だからだろう。あの時の少女も生きていれば七瀬優希と同じくらいの年に成長していたはずだ。

もう二度と会うことが出来ない女の子。

我ながら、いつまでも未練がましく思い出してしまうことに、少なからず自嘲してしまう。


思い出の少女と同じく人間の娘が自分以外と親しくしていることが、あの時は気に食わなかったのだろう。



「失礼致します。紫雲様。」


「・・・樹? どうした?」


「いいえ。優希様とは如何かなと思いまして。」


「ふんっ。知っているくせに白々しい奴だ。」


「バレましたか。・・・優希様のこと、森に置き去りにしたらしいですね。善丸が随分と怒ってましたよ。どうしたんですか?」


「・・・なんでもねぇ。」


「ふふふっ。あなたは本当に分かりやすい方です。謝りたいんでしょう?」


「・・・・・。」


まったく、本当にむかつく奴だ。

樹とは本当に小さい頃から一緒にいる。俺にとっては兄のような存在だ。

・・・隠し事ができないことが癪なだけだ。


樹の言っていることは間違ってはいない・・・と思う。

確かにあいつは何も悪くなかった。非があるとすれば、完全に俺の方だ。

普通は謝らなければいけないことも、そうした方が良いことも頭では理解している。

ただ・・・


「・・・謝るとは、どうすれば良いと・・・思う?」


「・・・はい?」


「べ、別に謝り方が分からないわけじゃねぇからな!! ただ、その、あいつは人間で女だから・・・」


「普通に”ごめんなさい”で良いと思いますよ? 何事も正直な方が喜ばれるものです。特に女性はね?」


ニヤニヤと笑いながら言ってくるのは腹が立つが、仕方がない。

こんな話ができるのはこの里では樹ただ一人だ。


「分かった。・・・そのうち謝る。」


「明日、謝りなさい。あまり長い間ぎくしゃくされると、変に思う輩もいるでしょう。ただでさえ、優希様がこちらに来てから、二人でまともに会ってないんですから。分かりましたか?」


「・・・・善処する。」


「では、また明日、確認に来ますからね?」


そう言ってクスクスと面白そうに笑いながら、樹は部屋を出て行った。















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