理解と許容 中(3)
フリーです!
ちょっとずつですが、この書き方、疲れてきました汗
もしかしたらまたごっそり書いて投稿するスタイルに戻すかも知れません!
それに、この書きかただとつまらない部分だらけになる可能性があるので笑
今回は移動だけのお話なので、さらっと読んでいただければと思います。
それではお楽しみください!
「私ね、あの街を出ることが夢だったの」
裏路地での買い物を済ませ、逃げ出すようにモロニカを後にする。時計の針は3時を指している。普段はコルクもこの時間には床についていたが、若い頃は深夜に活動することが多かったため、疲れより懐かしさを強く感じた。コルクの横をスカイがピッタリと離れずついてくる。魔法技師は王政の制約の中でしか製造が出来ない。その中には決まった土地の中でしか活動を許されないという内容もあり、当然彼女も例外ではない。そのため1度も街の外に出たことが無いのだろう。だから、コルクのそばを離れない。
「そんなに出たけりゃ魔法技師なんて辞めちまえばよかったのに」
「魔法技師にならなかった魔法使いは他に宛なんて無いわよ。待ってるのは死だけ。医者っていう例外は初めて知ったけど」
この娘に強い意思がなかったと言ってしまえばそれまでだが、魔法技師にならずにひたすら逃亡生活に身を置くことも出来たはずだ。ただ、この娘の場合はあまりにも若かったのだろう。自分に選択できるほどの判断力と自意識が弱いうちに、この時代がやって来たのだ。仕方ないといえば仕方ない。
「王様はこの時の為まで俺を飼い慣らしてたんだろうな。散々恩を着せて利用するため。飼い主のつもりなんだろう」
「でも、蓋を開ければ王様が手も出ないほどお高い番犬だったわけね。今のあなたを見ている限り、そう思う」
「はは。それか、あまりにも小汚くて、触りたもない野良犬かな。そっちの方が俺にはお似合いだよ」
野良犬は時として番犬とは違う強さを見せる。生きるため、自分の持つすべてを発揮するのだ。食料を探し、邪魔者は咬み殺す。それは時として、定型的な動きをとる番犬より恐ろしい脅威になりうる。ただ、コルクは生きる為に力を発揮しているのではない。彼を突き動かす大きな力の正体は、スカイには到底理解出来なかった。
「それよりさ、プラヴィンってどんな街? 色んな人がいるのかな? どんなお店があるのかな?」
「色んな人……あぁ、沢山いるとも。それはそれは」
彼女に嘘はついていない。ただ、彼女は後悔するだろう。もしかしたら街を見て引き返すことになるかもしれない。なぜなら、プラヴィンはソアラの街やモロニカ市場の様な綺麗な町並みとは真逆に位置する存在だからである。もし、スカイがあの街の惨状に耐えきれないようであれば、そのままモロニカに帰そう。コルクはそう考えていた。
「そろそろかな」
コルクは短く呟くと、カバンから黒いフードローブを出し、ワイシャツの上から羽織った。辺りに霧は出ておらず、夜の黒が二人を取り巻いていた。ランタンは足元だけを照らすばかりで頼りない。暫く歩くと、鼻にツンとくる異臭が漂う。スカイもそれを感じたのか、顔をしかめている。2人がその場で一旦立ち止まると、コルクがランタンを高く掲げる。
「着いたぞお嬢ちゃん、プラヴィンだ」
仄暗い闇から、パイプが這いまわる鉄の要塞がうっすらと、二人の前に現れた。