理解と許容 中(2)
7話中編のその2です!
時系列の並びを明確にすることとキャラの口調を安定させることが難しい…
アドバイス、ご感想等、コメントお待ちしてます!
それではお楽しみください!
「やっぱりなぁ……」
一見すると廃屋と見間違うような工房の前で、ビネガーはぽりぽりと頭を掻いた。上司であるバジルの命令でコルク=ボトルの所在を追いかけてみたはいいものの、奴も過去の大戦を生き抜いたプロである。一般人ならともかく奴なら、すぐに逃げることは容易に予想できる。
「あの人も落ちぶれたな。戦績こそ優秀だが武功に目が眩んでいる。焦りで相手が誰だか区別もついていない。そのようではこの先の戦いは勝つことが出来まい」
ビネガーが傲慢で高飛車な上司への不満を吐露する。工房の中は人一人居なかったが、暖炉には小さい煙が燻っており、先程まで人間が生活していたのが分かる。
「足の速い……そうだな、シュガーはソアラに戻りこのことを伝えてくれ。この街には既に目標は居なかった。ただ今追跡中である、とな。それから、ソルトとソイソースはタギル鉱山へ向かえ。魔法技師を連れたとなれば向かうやもしれん。盗賊団との接触を避け、入口付近を偵察してくれ」
「は、了解しました。直ちに」
短い返事とともに、ビネガーの命令を受けた三人の兵士がそれぞれの方向へ散った。一人の兵士がビネガーの指示を待っている。
「タルタル、お前は僕と一緒に『ジャムゥ・ギルド』の付近に潜伏して待ち伏せだ。心して着いて来いよ」
「待ち伏せ? それはまたどうしてです?」
『ジャムゥ・ギルド』は少数民族のジャムゥ族が運営している傭兵団で、全てが炎筒使いで構成されている。炎筒の技術を持たない王政は当然この団を『摘み取り』の対象にあげており、当然彼らは兵士などが入れる好きを許してはいない。タルタルと呼ばれた兵士が疑問に思い首を傾げる。
「オイル様を殺害した炎筒使いがいただろう。それがコルク=ボトルの仲間だとして、この先に仲間を集めるとすれば必ず立ち寄るはずだ。残念ながら現在革命派が潜んでいるであろうと思われる場所で調べがついているのは、タギル鉱山の盗賊団、ジャムゥ・ギルド、それからプラヴィンだ。この中でプラヴィンは奴らも入りにくい街だろうから、手近な二つにあたるかと考えたんだ」
「はぁ、ただ奴もやり手ならその裏をかいてプラヴィンに向かうのでは無いのでしょうか?」
「あの街は身を潜めるのには向いているが、長期滞在は死を招く危険地帯だ。仮に先にそちらへ向かったとて、それほど仲間は集まらんよ」
プラヴィンははぐれ者や社会の除け者が自然と集まり、社会ができている街だ。いわばスラム街で、ゴロツキや盗賊、この世の悪が集まったような場所になっている。盗みや殺しは毎日当然のように起こり、それに心を痛める人間は誰ひとりとしていない。それはもちろん他の街にも、プラヴィンに住むものすらもそのような念を抱いた事は無い。
「独断で部隊を動かすことになるがこの際仕方が無い。結果として奴を追うことに変わりないんだ。上司の顔を立てるのは部下の役目だろう。行くぞ」
そう言うとビネガーはタルタルを連れて、昼間の陽気さは微塵も感じられない市場に踵を返して立ち去った。