理解と許容 中
フリーです!7話目くらいです!
読まれている方はお分かりになるかと思います。文章量が大幅にダウンしております。
理由としましては更新ペースを上げることにあります。一話分を数回に分けて更新することで、執筆速度を上げるようにしてみました。
もし読まれている方がいましたら、以前のように読み応えを重視する方が良いか、今回変更したように更新を早くするために文を減らした方が良いか、ご意見を頂けたら幸いです。
コメントご感想お待ちしております!
それではお楽しみください!
「あ、痛い」
コルクが思い出したかのようにポツリと呟く。その様子を見たスカイがにやりとしながら二つの錠剤を取り出し、コルクの前のテーブルに置いた。
「この薬はなんだい?」
スカイはシンクであろう桶の置いてある場所に向かい、コップに水を注ぐ。
「痛み止めの薬よ。薬はちゃんと薬剤師から買ったものだから、安心していいわ。これを飲んでいる間は血の流れが遅くなるから、眠くなったりするかも。あなたの場合は魔法が不安定な状態で発動されるから、しばらくは安静ね」
「つまり、魔法が使いにくくなるのかい? それはいけない」
「なんで? 今日一晩安静にするだけなのに。それに追っては追い払ったんでしょう?」
心底コルクの腕の状態を労わっているのだろうが、今のコルクには時間が無い。コルクは胸の底に息苦しい焦りを感じていた。
「いや、『ハジキ』が来たんだ。軍部はもう既に手を回しているはずさ」
テーブルを鉄の手で押し、椅子から体を離す。腕が以前より重くなった感覚はない。ただ、痛みは時間の経過とともに大きくなる。怪訝な表情でスカイが曖昧に、「わかった」と返事を返す。
「ここに来る前に裏通りで干し肉屋を見つけた。そこで一番安い干し肉を買おう。長い旅ではないから、800テルでありったけ。水筒はあるから水は着いた先で補給する」
先程までとうってかわり、部屋の中を慌ただしく動き回る。しばしの休息のために広げていた荷物を鞄にしまい直し、肩に下げる。
「ちょ、ちょっとまって! 着いた先って、どこに行くの?」
「ちょっと早めに返事を済ませようかな、と思ってな」
首を傾げるスカイを横目に、扉ではなく正反対側の裏通りが見える、大きな穴の前に立つ。穴は数枚の木板で塞がれている。板を剥がせば、屈むと人一人通れそうな大きさだ。
「剥がしていいかい? これ。君の家を壊すことになっちゃうんだけど」
「ええ、木の板一枚を高いなんて思わないわよ」
「それじゃ、遠慮なく」
木板を1枚ずつ外し始めるコルクの後ろで、スカイが大きめのリュックに荷物を詰め始める。
「君の、よいしょ、荷物は、なるべく少なめになっ!」
作業を続けながら背後のスカイの様子に気づいたのか、コルクが声をかける。
「あなた、魔法技師の最低限の荷物を知らないようね」
「何度も繰り返すようだけどっ、ふぅ……。自分の身は自分で守る事だ」
「分かってる? そっちは終わった? こっちは準備完了よ。いつでも行ける」
「お陰様で、いい景色ですよ」
普段あまり運動をしないコルクはこの程度の作業でも軽く汗ばんでいる。ぽっかり開けられた穴からは汚れた裏路地の淀んだ風が部屋の中に流れ込む。
「それじゃあ、いざ、夜の街プラヴィンへ」
二人はさっと、夜更けの裏路地に身を乗りだす。闇が二人を飲み込んで、静かになった。