私の昔語り(紹介2)
隊長バージョン
もし、親友や家族を護りたいとして、自分に何の力も無かったとしよう。そして、圧倒的な力を持つ怪物に、彼らが殺されそうだと知ったらどうする?
守る為の力を手に入れようとするだろう?
私はそう思ったから中学を卒業して軍の士官学校の入学試験を受けた。
そうしたら、特殊機動兵器特性でAという最高評価を受け。相棒(無論、彼も護りたい者の一人である)と二人、学費免除で士官学校に入学できたのである。
これは天恵であろう。
私は彼らを守れるだけの才能を持っていたのだ。
士官学校はなかなか刺激的で、厳しくもあった。実戦も何度か経験したし、その度に私はその才能(まあ少しは役に立った)と努力の成果(基本的に役に立ったのはこちらだ)を発揮し、教師や軍人内での評価を高めていったのだ。
三年のはずの教育課程も悪化する戦況の為に、一年で卒業させられ、そのまま正式に軍に入った。私と相棒の二人は元々予備パイロット兼整備兵のような扱いだったが、悪化する戦局はパイロットを無駄にできるはずも無く。軍令に違反したものの、無事に多脚騎士の操縦者に任命され、各地を転戦し、その都度結果を出してきた。
多くの戦場を駆け抜けた。それは一方的な負け戦であり、多くの戦友を、上官を、先達や守りたい者達を亡くしていく痛ましい戦いが続いた。
―――力が足りない―――
軍に入って二度目の冬が来た。その間にも半数を超える同期の仲間がそれぞれの護りたい人のために戦い。散っていった。死んだものは二階級特進となるそうだが、私も相棒も、着実に結果を上げ、階級を上げていき、それから五年だった今では死んだ彼らと同格になった。くだらないことだが、少し感慨深いのではと最近思う。
理不尽に、本土の民を護る為に戦えと、ここで果てよといわれても、それでも、私は守りたい者を最後まで守るだろう。
―――ちからがたりない―――
死んで本土を守れと命じられたが、それを了承できはしない。死んだら誰も守ることできずに、ただ朽ちて土となる。
それはできない。
―――ちからがあれば―――
例え軍が見捨てても、この地で朽ちる運命でも、俺は絶対に守り抜く。それがただの夢想でも、その一念を砕かれるわけにはいかないのだ。
―――すべてをまもれるちからがほしい―――
全員を守る力が欲しくても、私ができることは限られている。それが、無念であり、それを何とかしたいと足掻き続け絶望する。それでも護りたい者に手を伸ばす。たとえこの身が朽ちて果てようと、最後までそうあるのだろう。守りたい者も守れずに死ぬ。それはわかっている。それでも、最後までそれを続けようと思う。
傍らにいる彼女や、相棒を守れるだけの力を手にしないといけないから
相棒と呼んでいる親友と、私が愛する部下の女性。
せめて、最悪でも二人だけでも・・・・・いや、最高の結末を掴むのだ。やり方はわからなくても、生き残り続ければいつかは状況が好転する日も来るだろう。それまで生き残り、守りつづければいいのだ。もう二度と、あの人を失った時のようなことはしない。
例えそれが叶わなくとも・・・・・・
あと小さいことだが、出来れば、悩んでいる相棒の助けになりたい。まったく悩みを言ってくれないが、それは相棒なりの優しさだと考える事にしよう。
少なくとも、こんな自分にずっと付いて来てくれる奇特な友人なのだから。
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