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俺の昔語り(紹介1)

とりあえず、簡単に主人公の説明みたいなもの。

俺が軍に入った理由は、中学三年の秋頃になっても、特に目的も目標も将来の考えも何一つ無かった事と。兄が軍隊で活躍していた事、それと親友が高校ではなく軍に入ると言い出したので、それに付き合う程度の気持ちで士官学校の入学試験を受け。二人して特殊機動歩兵特性でA評価をたたき出し、軍の特殊召集権(士官学校に強制的に入学させられる)と呼ばれる一種の徴兵の対象になってしまったからである。


士官学校に入ってからは、もっぱら訓練を受け続けた。

特に正体不明のガラスと呼ばれる空間の穴から現れる怪物による被害が真那国全土、とくに北利大島で頻発するようになってからは、実習と言う名目で戦場での補給作業や、場合によっては砲撃戦など、もはや訓練や実習などとは言えない。実戦でしかないものまで経験させられた。


その後、三年の教育期間がいつの間にか一年で切り上げられ、そのまま自分と親友は軍人として正式に軍に入隊。それからは、あっという間の出来事だった。



一応は真那国軍部も、どうにかしようとはしていたらしい。近隣諸国に協力要請を出したものの、近隣で一番の強国であり周辺諸国の盟主でもあるガラエロム王国が、自国の治安維持の為に、要請を断って以降。周辺諸国もそれに倣い。自国にかかりっきりになってしまった事で、元々国力が低い島国の集合体であり。専守防衛をもっとうにしていた真那国には打てる手はほとんどなく。北利にはびこる怪物たちへの対策は、北利を放棄と時間稼ぎ程度しかできなかったのだ。


まあ、ガラエロム王国も安定はしているものの、化物の被害が深刻化しているらしいし、他人の尻を拭く暇があったら自分の尻を拭くのは当然だろう。

まあ、その結果周辺諸国の結束は完全に崩壊しているのだが・・・


 軍に入って春が過ぎてあっという間に冬が来て・・・そして、二度目の冬を向かえ本来なら教育終了で卒業式という時には、同期の連中のほぼ半数が人間を卒業して、ありがたい英霊とやらに就職していたのだった。

 

いつの間には予備パイロット兼整備兵だったはずが、試験も受けずに正式なパイロットになり、倉庫に眠って旧式化していた試製多脚騎士「玖朔」で戦って、北利の防衛のために奮戦して、負けて、敗走して、仲間や部下を失い、見捨てて、やっとのことで敵を食い止めながらの五年間。俺らは死んだ同期と同じ大尉とか言う、馬鹿げた地位(死んだ連中は二階級特進して少尉から大尉になった)にいつの間にか俺と親友はなっていた。


怪物どもとの戦いは激しさを増し。特にガラスの発生率の高く、俺たちが配属された北利は、南部全域を除く北部全ての主要要塞と都市が陥落。北利大島に最も近い一部本土などは住民の避難は終了し、防衛陣地を何十にも張って北利からの怪物の侵攻を防ぐ構えを見せていた。


本土に捨てられ取り残されても別に、どうでもいい。どうせ戦って死ぬ運命なんだから問題なんかない。まあ、実は問題になりそうなことはいくつかあるが、それとなく準備は終わっている。だから、自分の最後のその日まで人間として人生を楽しめればそれでいいと思う。楽しめればだが・・・



まあ、軍の思惑は置いといて、今現在、一つ嫌なことがあるのだ。



親友と一緒に戦うのは別にいい。


いろいろ個人的に疲れる事が多いのだ。いや、軍隊生活に疲れたとかそういうやつじゃないんだが、その・・・正直、居心地が悪い


部隊の仲間の一人を愛してしまったってのは別に悪くは無いと思う、そんなのどこにだって転がってることだ。



だが、その愛した人が、同じ隊の別の奴が好きってのは知ったらさ、話は変わってくる。



ていうかもう周知の事実だし、本人達も宣言している



さて、どうする?


好きな女性が、俺の親友と並んでさ

「つき合うことになった・・・よろしくおねがいします」


可愛らしく頭を下げるのを、おそらくは呆けた顔で見ていただろう自分。


「・・・まあ、そうなる、私はこいつを愛しているし、生涯を通じて護ってやりたいと思っている」


そう言って照れくさそうに笑う親友。



まあ、そんな宣言されたら、普通はけっこう落ち込むもんだろ?



いや、親友はいい奴なんだよ。本当に・・・


でもさ、あれだよ?向こうは一切こっちの気持ちなんぞ知らないから、普通に話してくるのさ。彼女も親友もさ・・・・・・


「どうしたの?なんか最近おかしいと、おもうけど」


すこし、自信なさげな問いに、俺は困ったように笑う。


「いや……」


そりゃそうだろうよ。初恋で失恋中だってんだから・・・・


「なにか心配事でもあるの?・・・私はいつでも相談に乗るよ?」


困ったような表情をしていると、そう言って気にかけてくる彼女に気づかれるわけにはいかないから、無理やり笑みを浮かべる。そのことにも、慣れていった。


「まあ、そうだな・・・特にないなぁ」


自然に笑えるようになったのはどれぐらいだっただろう?

本気で凹みながらも、それを表に出さないでいつしかそれが普通になって・・・・

まあ、それでも好きな気持ちに変わりは無くて。


「相棒。頼みがある・・・・・部下の一人を特別視するのは指揮官として問題だろうから、そうしないように指揮をするつもりだ・・・・・でも、君ならわかってくれると思うが・・・・・もし。あいつが危険な時は・・・頼むぞ。相棒」


真剣な顔で俯く親友に、作られた完璧な笑みで頷くのにも慣れた。


「ああ・・・・わかっている。まかせろ親友」


まあ、実際は


俺に頼むなぁぁぁぁぁぁあぁああ!ていうかバリバリするってぇの!

ていうか今まで普通に彼女が危険な任務に付いた時に俺は絶えず警戒してたし!

お前は指揮に夢中でそんな事すら気づかなかったのか?

いや、それがばれないように動いていたのは自分なんだけど、でも気づいていたら、居心地以前に空気まで悪くなっていたかも知れんからそれでよかったのか?


と表情変えずに思えるぐらい面の皮は厚くなった。


まあ、そんなこんなで今現在、すげぇ個人的な居心地が悪い部隊なんだが・・・・


それでも・・・・・



親友は大事だし、好きな子だって護りたいし、どっちも大切だから、折れるのを通り越して砕けそうな心を隠して何とかここに残っている。


まあ、たまには感情が表に出て、あいつらを困らせてしまうのはしょうがないだろう。


「どうした?悩みなら言ってみろ。相棒が辛そうだと・・・・・・なんだ。こっちも辛いからな」



いや、多分その辛さの何千倍もこっちが辛いから………



「私は、あなたに助けられた。私は馬鹿で、あなたみたいに何でもできる人じゃないけど、悩みがあるなら愚痴でも何でも吐き出してくれれば、いっしょにかんがえることぐらいはできるから・・・・」



言える訳ねぇだろうがぁぁぁぁぁぁ!



「………………………………」


もちろん、その心の声も言えず。ただずっと黙っていたんだが………



次は親友の簡単な説明に続く。

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