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護る為に動く

少し遅れたなぁ。週一で出したかったんだけどねェ

トラックから荷物をおろしている男たちをしり目に一人街をうろつく。


商店街はシャッター街になっているがこれは化物が来る前からそうだったので、化物のせいにするのもおかしいだろう。


いくつか開いてる店で服や日用品を物色。まあ石鹸とか肌着とか基本的に必要なものは多いが、嗜好品や化粧品はかなり少ない。


揚げ物やでコロッケやらを買って喰いながら歩く。


商店街の通りの人通りはまばらだが、大通りにでるとそれなりに人は多い。


「・・・・・・・・」


小道を覗くと、段ボールでできた簡易住居のようなものが目に入る。まあ、逃げてきた者全員を収容するスペースはさすがにないのだろう。鉄道も壊され、役目をなさなくなった無人の駅などに行けばそこは段ボールやら木材でできた小部屋がある。よく言えばホテルみたいなもんになってしまっている。


「・・・」


まあかわいそうだとは思うが、何ができるわけでもない。配給はあるから死にはしないだろうが、生き続けることもつらいだろう。


いくつか買い物を済ませ、整備工場に戻り空になったトラックに乗る。いくつか買った物を助手席に乗せてトラックを走らせる。


街は全体的に暗い。人々は不安におびえ、それを安心させるであろう軍は逃げだし敗残兵だけが何とか防衛線を張って守っている状況。逃げる為の船は潜水艦でしかなく。順番が来るが先が、化物に蹂躙されるが先かといった状況。


「・・・・・・まあ、かわいそうだとは思うけどねぇ」


自分の命は掛けられんと、やっぱり思うのだった。


トラックを元の場所に戻して自室でデータを確認する。

敵がどの程度集まっているかわかれば、いろいろなことがわかる。


攻めてくるだろうところの周辺の敵は増大するし、逆に最低限の守りだけ置いておくようなところはこちらが攻める場所に最適だ。


「・・・・・・・・やべぇな・・・全体的に増えてやがる」


殆どの都市を失い、港街まで追い詰められている今、敵の侵攻ルートは三つ、北西、北、北東、その全ての方面の化け物どもの数が増えている。つまりそれは


「本格的な侵攻が近いってか・・・・・・・まあ、どうにかなるさね」


データを大佐のパソコンに送る。


「さてと、俺にはどうにもできねェけど、足掻くとしますか」


とりあえず。これを生かせる者に相談ってことで。



「・・・・・・・攻めるしかないだろうな」


データを一瞥しただけで答えを出すのは相当だと思った。


「攻めるってあんた、こっちが攻められてるってのにどうすんのよ?」


親友の答えに、どうせ、納得する理由があるんだろうと思いつつも尋ねる。


「何でわざわざ分散してる敵をまとめて相手する必要がある?ならば最低限の防衛兵力を残して、全勢力で敵の出鼻をくじくしかあるまい」


要は総攻撃が始まる前に敵の一軍を潰して、動きを止めるしかないという事か、だが


「だが、三つのどっかつぶすとしても、こちらの損害もでかいぞ?そもそも二つが本格的に攻めに転じたらそれだけで基地が壊滅するぞ?」


「・・・・・・たぶんだが、北西と北東の化け物は動かない・・・・増えてる化物の種類を見てくれ」


データを照合する。北西と北東は狼型の化け物が多くなり、逆に亀型が数を減らしている中で、北だけが狼が減り亀が増えている。


「・・・・・狼がメインってことは機動力重視だろう?攻撃が速いとなると、こちらの展開が遅れる可能性もあるからやっかいだ。北は荒れ地で機動力がそがれる分、砲台(亀)を多くするのは当たり前だろう・・・・・・・・とはいえ、さすがに狼の数が少なすぎるな」


「そうだな。つまり連中はフォワードなんだ。そして、北の化け物は砲撃系統が重視されてる。つまり、後方支援に適した軍勢。つまりだな、攻める時の敵の動きはこうなる」


北西と北東の化け物がまずこちらの防衛線を機動力にものを言わせて突破し、基地前方に展開する一部の狼が北の防衛線を背後から強襲し北の亀主体の砲撃部隊を南下させて敵基地を砲撃する。


「狼の突撃ぐらいなら基地の防衛隊で対処できるだろう?だが、急速に展開した狼は攻め込まずに後方の亀の砲撃で防衛隊を損耗させられたら、どうしようもない。迎撃しようにも狼が邪魔をする」


筋は通っている。だが


「それが何で、動かない事につながる?」


「つまり連中は狼では要塞を抜けないと判断してるってことだろう?」


小さく笑う。


「こちらの兵力は向こうさんも正確には知らないだろう?それゆえの疲弊を狙った亀の砲撃だ。ずっと、防御に徹してるこちらの動きで向こうも結構大胆に部隊を編成してるってことだ。いや、慢心といってもいいか」


仮に動いたとする。北西、北東の防衛ラインが破られて敵が基地に押し寄せた場合。


「そうすれば、基地の防衛隊で対処しているうちに俺たちが背後をつける。逆に基地に向かわず俺たちの背後をとるっていうなら基地の防衛隊が背後を突けばいいだろ?」


「・・・・・・ということは、問題は」


そう言って俺は小さく唸り、続ける。


「・・・・・問題は、上の連中が攻勢に出ることを是とするかだな」


俺の答えに隊長も苦々しげに答える。まあ、向こうが攻めてくるわけないとたかをくぐっていられるほど、こちらには攻める意思がないという事でもあるのだ。


「・・・・・・まあ、動かないだろうな、そうなるとこちらは圧倒的に不利だが、姉御にどうにかしてもらうか?」


「・・・・・・・・・ああ、まあ、そうだな」


その言葉に俺も頷く。頷くのだが、なんというか少し。


「・・・そんな微妙な顔するな、といってもしょうがないか、相棒、嫌なら私が伝えられるが」


気遣うような言葉に、俺は首を振る。正直、あの人は苦手だが、親友一人行かせるとなると、あの人は落ち込むだろう。


一瞬、悲しげにゆがみ泣いている顔が浮かぶ。それは五年ぐらい前だったか、俺が大切な家族を失ったとき、俺以上にそれを悼んでくれた。あの人の顔だ。


さて、どうなることやら

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