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怒るだろう   泣いてやる

振るったその剣はひどく正確に、関節を切り裂いた。


右腕を飛ばされた巨人は無機質に左腕を振るう。それをのけぞるように避ける機体。その動きは以前乗っていた玖朔よりも圧倒的に速く、滑らかに動く。ろくな調整もしていないのに内部で勝手に調整しているのか、どんどん動きが最適化されてるように感じる。


K2-002H-C5


機体の名前は不明。モニターには機体の型式はKと表示されているがそんな形式番号の機体は存在しない。あえて近いのは小庄司重機の機体を意味するKHだが、Kだけの型式ではない。


そもそも多脚戦車はすべて型式の最後にHが入るのに入らない時点でおかしいのである。海外製ならあり得るが操縦システムはこの国独自の、玖朔と一切変わっていない。


のけぞって距離をとる。追撃を仕掛ける巨人にすれ違うように距離を詰め左足の膝を切って抜ける。わずかに関節から外れたためにダメージはない。


『撃ちます』


通信に入った声に従いそのまま走って距離をあける。振り返った巨人の左足に数発の弾丸が命中して振り返ろうとした巨人の足を掬った。倒れる巨人の轟音が響く。素早く距離を詰めて剣を振るう。狙いは首、だが、その前に


「終わりだ」


巨人がとっさに振るった右腕を予測通りに切り捨てて。返す剣を首に突き立て、そのまま首をはね上げる。


それでも動き続けるのを確認して冷静に両足を切り落とす。動きを止めたのを確認して指示を出す。


「巨人を撃破した。敵の後続が進出している。31、42はこちらに合流、全軍が来るまで迎撃戦を行う。助攻は指定ポイントに向かってくれ、相棒が孤立している。回収後素早く撤退、敵と交戦になるようなら回収はあきらめて後退してくれ」


少し胸が痛むが、逆に生身の相棒の至近距離で戦闘になった方が相棒の実が危ないためそう命じる。


『よかった・・・生きてた・・・二人とも』


通信機から漏れるように聞こえるその言葉に、俺は苦笑して答える。


「いろいろ言いたいことはあるが、ただいま。あいつも生きてる。さあ、さっさと終わらせて帰るぞ。まあ、あいつに怒られるのは覚悟しておけよ」


そう言って笑う。俺と同じような事したんだからあいつもかなり本気で怒るだろう。


『・・・今回は私だって怒りますよ。彼にも、あなたにも』


その言葉に、笑みが浮かぶ。


「・・・・確かにその通りだな」



『助攻は指定ポイントに向かってくれ、相棒が孤立している。回収後素早く撤退、敵と交戦になるようなら回収はあきらめて後退してくれ』


その言葉は私が聞きたかった最良の言葉だった。


生きている。二人とも


諦めていたわけじゃない。生きていてほしいと思っていた。だけど同じぐらい、生きているわけがないと思っていた。


ただ一人残ろうとしたのは、この人たちはこうするだろうと思ったから、最後はこの人たちのようにまっすぐ最後まで戦いたかったからだった。


逃げる仲間には無事を祈り、残る仲間には感謝を、


たとえ無駄死にだろうと、たとえ意味がなくても、少なくとも最後までこの人と心は一緒なのだと思いたかったからだった。


「よかった・・・生きてた・・・二人とも」


思わず出た言葉に、流れる涙に、感情が止められない。大事な人が二人とも無事だった。それだけでいい。


『いろいろ言いたいことはあるが、ただいま。あいつも生きてる。さあ、さっさと終わらせて帰るぞ。まあ、あいつに怒られるのは覚悟しておけよ』


茶化すような、それでいてこっちをいたわるような声、いつも通りの言葉に少し腹が立つ。


そもそもこんなに心配かけたのはどこの誰なのか、平然と命を投げ出して突撃したのはどこの誰なのか、この人は、本当に自分の事に無頓着だ。いつも怒ってる彼の気持ちが分かった、わかったけど、一緒になって私を心配させる彼にも理不尽な怒りがわいてくる。


「・・・今回は私だって怒りますよ。彼にも、あなたにも」


理不尽に泣きわめいて怒ってもいいと思う。それだけ心配かけて、悪びれもなくいつも通り私たちの前に立って戦うこの人に、せめて心の中をさらけ出して、泣きわめいて困らせても許されると思う。というか、この人は許してくれるだろうから。


『・・・・確かにその通りだな』


通信機越しのその言葉に、私は涙をぬぐって前を向く。


戦いはまだ始まったばかり、敵の後続を抑え前線を立て直す。油断して死ぬのも死なれるのもごめんだ。


かかってこい化け物ども、どんな敵でも倒してやる。


そして、生きてあの人の顔をもう一度じかに見て泣いてやるのだ。


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