そして一人にする。
『いや、先に行った方がいいだろここは』
私の言葉を遮るようにそう相棒は答える。
『迷う時間はないぞ?俺たちがあれを言うときは、目前に敵がいるとき、敵を前にして剣を振るうとき、ならば、すでに戦端は開いているようなものだ』
そう、あれはよく俺たちが使う言葉。俺たちが自分を鼓舞するための言葉。
目の前に死が迫っていたとしても、絶対に退かないと。その決意の言葉。
ならば、それを言ったあいつは・・・・
「・・・了解」
そう、目前に敵が迫っている。なら、それ以外ないのだろう。
『んじゃ俺は後から帰るからよ。間に合わなかったら、諦めてくれや』
敵陣の中で、基地に向かって単身、帰らなければならないというのに、気楽そうに答える。
「・・・やっぱり一緒に」
ふいに、相棒が遠くに行ってしまうような、そんな気がしてそういってしまう。そんなことできるわけがないのに、どうしても言わなければならない気がしたのだ。
『少しは信用しろっての』
落ち着いた言葉に、なぜか不安がつのる。なのに自分には何もできない。
『お前が防衛線立て直したらこっちは無理に急ぐ必要ねぇだろ?強行軍でいかないなら帰る方法なんぞいくらでもある』
その通りなのに、何かが引っかかる
『彼女ぐらい自分で守れ、俺に押し付けようとした罰だそれは、さっさと行け親友』
最後まで、相棒らしい言葉で送られる。答えなければいけないんだろう。
「・・・すまん、お前も絶対戻って来いよ。相棒」
そういって機体を前に。
装備は剣と75mm突撃銃。
武器もある、機体もある、目の前に守るべき人が剣を取り、戦おうとしている。
「・・・ならば、やるべきことは一つ」
機体を走らせる邪魔な車や氷を破壊して突き進む。
時間にすれば30分ぐらいだったろうが、道の先に光が見え、一気にトンネルを抜ける。
外の光に目が焼けつく。
一面の銀世界。そこにいくつかの煙が立ち上り。轟音が響くその場所は。
私がいるべき場所だった。