遺志を継げる者達
「・・・・・・・・」
軽く目を閉じて、気持ちを落ち着ける。目の前には一面の銀世界、周囲を見渡せる高い丘に立つ。
「・・・ものずきだね」
自分でも驚くほどうれしそうな声に、咳払いする。
「なんで・・・私なんかに」
自分は隊長とは違う。あの人のように慕われ、部下を率いたこともない。
すでに射攻の隊長や部下たちは撤退してここには私の多脚騎士と、5機の多脚騎士しか残っていない。
いや、なぜか五機も残ったというべきか。
『隊長達はそうしたでしょうから』
その中の一人の返事に苦笑する。
「そっか、それなら私なんかについてくるより・・・全然納得できる」
『助攻4名、主攻1名、指揮権を貴方に』
隊長の部下は一人だけ、彼の部下は全員残っている。自分の同僚は射攻の副隊長について行った。
「ありがとう・・・でも、残っても何もないよ?・・・私はあの人みたいに死地を貫く力もないし、彼みたいに死地から生き残る力もない」
自分が信じたあの人たちのような力は自分には何もない。ついてきても全滅することには変わりない。それが、申しわけなく思ってしまう。
『・・・それでも、私たちは貴方について行きます』
「・・・・・・・」
自分は間違っている。そんな自分について行くという仲間がいる。死んでもいいという部下として立っている。
「・・・まいったなぁ」
あの人は、これほどの責任を背負って前に進んでいたのだろう。いや、これよりも重い物を、期待、信頼、希望・・・それを一心にあの人は背負っていたのだ。
そんな人たちを背負う事がこんなに重いとは思わなかった。
「ああ、そっか」
だから彼はそれを背負いたくないから、単独行動を好んでいたのだろう。
「意気地なし・・・でもなんでもないね。これは」
人が背負うようなものじゃない。こんなものを背負って平然と死地に行くのは。
心を持ってる人には辛すぎるだろうから。
『隊長?』
心配げな言葉と投げかけられた役割に、笑みを浮かべ答える。
「なんでもない。配置・・・といっても六機じゃねぇ・・・指揮なんかとったことないし、まあ、・・・うん」
あの人が背負っていたことの、たったほんの少しを背負うだけ。それ位、恋人の自分だってできるはずだ。いや、恋人ならば、しなければならないのだろう。
「臨時の、実際の命令でも、彼に確認すらしてないけど、それでも・・・断言できる彼の意志をもって命じる。敵を通すな。この先には守るべき町がある。護るべき民がいる。ここを防ぎ切ればすべてを守れる。それならば、私たちがやるべきことは一つ」
それはあの人が言うだろう言葉、私の言葉ではない。でもこの言葉こそふさわしい。
「敵の前に立ちふさがった仲間がいた、敵を抑えるために突撃した仲間がいた。彼らが死んだ理由を、逃げだした自分達でも、最後ぐらい守ろう」
『了解』
たぶん、自分たちがここで足止めしても、一時間も時間は稼げないかもしれない。意味がないかもしれない。それでもいいのだ。
「・・・もし・・・生きていたら、ごめん」
小声でつぶやく。確率はほぼないのだろうけど、謝っておきたかったから
あの人と・・・その横に立つ彼に




