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物語の主人公

「・・・・くそ、さみぃなぁ!ああ、くそったれがぁ!」


無理やり足を踏みしめて暗い片側二車線のところどころに凍り付いた車が廃棄されているトンネルを進む。


凍り付いた車内に人影がみえる。逃げ遅れたのか、それとも事故を起こしたのか、はたまた逃げるのに疲れてここで死んだのか、どうでもいいと思いつつ、そうなりたくはないと気を引き締める。


「・・・よく非常灯ついてんなぁ、普通とっくに止まってるぞこんなの」


天井はひび割れてところどころ崩落して鉄骨が見えている。アスファルトには無残に亀裂が入っているしその亀裂を覆うように氷がへばりついて足を滑らせようとしている。


「がんばれ、もうすぐそこだ」


先を行く相棒の言葉、息切れもしてないし、まだまだ余裕ありそうなその声を妬ましいと感じつつ。少し力がわいてきた自分にちょっといら立つ。


「わかってるよ・・・・と、ん?あれは」


はるか先に道路をふさぐようなでかいトレーラーが横転している。


「ああ、あれの所為でこんなに車が詰まってたのか」


だからこんなに凍り付いた車が多いのだろう。


「軍の輸送トレーラーだな」


親友が嫌そうな顔で答える。道を軍の車が塞ぎ、そのせいで逃げ遅れた人がいる。事故とはいえそれがどうしようもなくやるせないのだろう。


まあ、ひょっとしたら事故じゃなくて故意かもしれないと、その場合の軍の利点はなにかとか勘ぐっている自分よりかはよっぽどまともだと思うが。


しかも、この大きさは、多脚騎士の運搬用の物である。そしてトレーラーにはシートで覆われているが巨大な荷物。


「・・・なんというか、ほんっとうにこいつは」


親友に聞き取れないような声でつぶやく。


偶然でしかないのだろうに、それを運命なのではと思わせるような天の采配。


「・・・気に入らない」


「ん?」


「何でもねぇよ」


操縦者は目の前にいる。


数か月以上放置された機体を、最低限動かせる用整備ができる自分がいる。


何かが裏があるんじゃないかという偶然に吐き気すらする。


まるでその為に俺は生かされたのではないか?


そんなバカげた思考。


まるで目の前の親友が、物語の主人公だと言わんばかりに、そして自分がその物語の便利なツールでしかないような感覚。


それを何度も自分は感じている。


兄貴の時もそうだった、義理の姉の時もそうだった。こいつを助けたときもそうだった。彼女に会った時もそうだった。


ただ、自分はそこにいるだけで、何もできない。


物語の歯車でしかない感覚。


「・・・・っ。おい、こいつを使おう」


歯をかみしめて、その感覚を振り払い親友に言う。


「・・・動くか?」


親友の瞳に期待の色。


「たぶんな・・・一時間待て、起動させてみる。手伝え」


「ああ、まかせろ」


少なくとも、英雄と言われた肉親の機体の整備を頼まれる程度の腕前はあるのだ。


たぶん目の前のこいつよりも、唯一これぐらいは上なのかもしれない。


まったく救いではないけど。


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