隊長の夢、相棒と親友
一応隊長さんが主人公と話した後、自室で寝ているときの夢です。
夢を見ていた。相棒と一緒に近所で悪さをする不良たち相手に殴り合いをしていた中学生のころの夢。どんな時でも、負けそうな時でも、相棒は楽しげに笑っていた。
その頃は自分も相棒もただの少年でしかなく。自分という可能性に疑問も持っていなかった。
ヒーローになることだったできると信じられていた時代の夢だ。
場面は変わる。燃える家、壊れるビル。止まぬ銃声と兵士の怒号、情けない悲鳴、爆発と血と汗と獣の匂い。
銃を取る。予備のパイロットではあるが、それがこの場で免罪符なるわけがない。乗れる機体すらないのに何の意味がある。
既に同期の仲間を含む味方のほぼ全軍が逃げ散り、戦場には歩けない負傷兵や、自分のように覚悟を決めた軍人しかいない。
化物相手に、小銃一丁が何の役に立つというのか。
それはわかっていた。だが、せめて、逃げる仲間を追う化物の足をほんの少しでも止められるのならと、自分は抗うことを決めていた。
ふと隣を見る。いつもそこにいて悪態をついていた相棒がいない事に、少し悲しみがわくのと多量の安堵がわく。
「俺はここで死ぬのはごめんだから、勝手にさせてもらう」
そういってあいつはこの場を去って行った。前線から逃亡する事に対する詫びやら、引き留める言葉は最後までなく。相棒は、ここで死ぬ俺のことを少し苛立った声でそう告げるだけで、止めはしなかった。無論、私も相棒を引きとめるような馬鹿なこともせず。別れは一瞬。それが、本当にうれしかった。相棒は、私の性根を心から理解しているのがわかったから、まあ、逆に私は相棒のことがいまいちわからないのが悲しくもある。
「・・・・・・・・・・」
街が焼ける景色を目の前に、逆向き(町の侵入を防ぐ目的だった)の防衛陣地で必死に抵抗するために兵士が武器を運び弾薬を入れ。野砲や通常の戦車が簡単な陣を構築していく。せめて、敗走する味方がここにいれば戦況は変わったかもしれない。時間が稼げたかもしれない。だが、現状の兵力でやるしかないのだ。
街を闊歩していた巨大な狼二体がこちらに気づいて突撃したとき。野砲が空しく敵の横にそれていくとき、それでも自分は、銃を撃ち、一歩も怯むことは無かった。
味方が蹂躙され、突破されるだろう突撃は一瞬で終わった。
狼二体が多脚戦車の銃撃で倒れた時、自分が目を丸くして、その他脚戦車を見上げているのを、多分相棒は、いつものように楽しげに笑っていただろう。
『はは、本当に馬鹿だな。お前』
そう言って多脚戦車が銃を向ける。鋼鉄の騎士。それに乗った相棒が楽しげに。
『まあ、そんな馬鹿助ける為じゃなけりゃ、勝手に蔵からこんなもんもちださねぇけどな!』
その言葉に、勝手に軍の倉庫から機体を持ち出したことがわかる。多脚騎士を無断で操縦は重罪だ。こんな戦況でも下手すれば罪となる。
「な・・・おい!お前・・・・・・」
私の言葉など聞いていないというようにスピーカーからの声が遮る。
『332倉庫の奥に、廃棄寸前の試作機が残り一機、お前は守る力があるのに手を出さないのか?』
それは、かつて私が相棒に向けて言った言葉。
『解除コードは俺が解除済み。どうする?武器も機体も、すべてそろってるのに、くだらない規律で、ここの仲間も、逃げてる屑どもも、みんな捨てて死ぬのがお前の誓いか?』
だったら俺は死にたくないから本当に逃げるぞ。そう言って相棒が機体を動かして町の方へ、見ると狼二体がこちらに向かってくる。先ほどの二体は強襲したことで何ら問題なく倒せたが、向こうも多脚戦車相手に無策で挑むことはしないだろう。
『それが、俺が親友だと思った人間か?俺を相棒だといってくれた人間か?』
銃を捨てて走る。あいつが言った場所は知っている。ならば、いかなければならない。
「・・・・・・・・」
目を覚ました時に、どっと汗が噴き出した。
「・・・・・・・はは」
懐かしい夢だった。本当にあの時の相棒はかっこよかった。
実際そのあと、廃棄品の横流しをした伝手で、機体の存在を知っていたと聞いたときは感謝すると同時に叱るという高度な言語を言わされたが、それすらも懐かしい。
敗走する味方を逃がすために、軍規を無視した事が問題になったが、それを罰するよりは兵力がたらない現状の方が切羽詰っていたことで、無罪放免。だが、かなりの始末書を書く羽目になった。
それでも、私は仲間を守れたのだ。
数年たった今では私が隊長で、相棒は部下の一人。だが、頼りになり、最も信頼できる相棒だ。
向こうがどう思っているのかがわからなくて困ってはいるが、それでも・・・・
とりあえず。次は人物紹介的な話やるかな?