戦、終わらず
三日目、
歩いても歩いても雪しかない道を歩く。木々の隙間から弱弱しい日光がさす。それすらもあったかいと感じるほど寒い空気を吸って歩く。
あの後簡単な食事をとって小屋をあとにして基地に向かうルートを進む。
昨日のように張り詰めたような空気はだいぶなくなり、ちょうどいい緊張感とともに歩く、
「この調子なら、明日か明後日ぐらいには基地につくかな?本来のルートからそれるが、あの山の地下には旧地下鉄道がある、あれは確か、町の近くまで通じているはずだ。あそこでショートカットしよう」
「ああ、そういえばそんなものあったな、よく覚えて・・・・っ!?・・・っ」
親友の言葉に俺もうなずく。と同時にわずかに振動がすることに気づき二人して跳ねるように木に張り付く、振動先から見えないように木のうらに身を隠す。
振動はゆっくりと規則的に近づいてくる。
やがて、木々をなぎ倒しながら、大きな甲羅に砲台のついたような物体が遠目に見える。その数四体、息を殺して潜む。視界にははいっていない。気づかれているとは思わないが緊張感に体が震える。
拳銃程度の武装でどう対抗できるというのか。
別の木の陰に隠れている親友と目くばせをして、じっと耐える。方向的にはこれ以上近づくとは思えない。
やがて、木々をなぎ倒す音は遠ざかっていき、緊張していた雰囲気も少しばっかり緩む。
「・・・大丈夫・・・か・・・あっぶねぇ・・・平気か?」
「たぶんな・・・」
俺のつぶやきに相槌を打つように親友が答える
「たぶん・・・なんかあるのか?」
濁した言葉を訝しく感じながら問う。
「移動先、基地の方角ってことは、集合してるんだろう。基地を攻撃するために」
「いや、それはないだろ?」
俺はさえぎる。
「そのための戦いだったはずだ。敵の攻撃を防ぐための戦い。そして、戦果は予定よりはるかに多い。少なくとも狼主体の化け物じゃ要塞は抜けない。その切り札であるはずの猪は全部倒した。違うか?」
そうあってほしいという願い。だが、親友は首を振る。
「なら、基地の近くに、偵察すべき狼ではなく、数が減った亀で偵察にきていると?威力偵察するなら狼も相当数いたはずだ。単独行動する亀、つまり、ここいらは安全。ということは?」
「敵の本体がさらに前方に展開している・・・・となると基地手前に集合してる・・・か」
その後方だから無警戒に進んでいるということになる。
「急ごう、なんか嫌な予感がする」
親友の言葉に俺もうなづく。
「てことは、基地の連中も気づいているだろうな、迎撃の指揮を執るとなると・・・」
俺の言葉に、おそらく親友とほぼ同時に同じ奴の顔が浮かぶ。
「36の隊長か・・・」
頼りにはなる。頼りにはなるが、
「守り固めて、基地防衛線、打って出ることはまずない。膠着状態にはなるだろうが、避難はかなり遅れるだろうな、防衛ラインをぎりぎりまで下げそうだ」
親友の言葉に俺もうなずく。
自分と仲間の保身を第一にする男だ。それが悪いわけではない。防衛ならば守備隊を広げないで狭めて層を厚くするのは定石だ。それは正しい。だが、問題は脱出も同時に考えなければならないのだ。
だが、俺と同じで36の隊長には民を守るや、友軍を助けるという考えを持たない。自分の隊が被害のないような安全な戦いしかしないのだ。
だが、下手をするとそれは町に被害が出る可能性があるということ。
そして、俺はそれを是とするだろう。考え方は同じなのだから。
だが、
「・・・・・急ごう、被害が出ないように」
目の前のこいつはそれを決して是としない。
「・・・そうだな」
止めても無駄だろう。なら、やることはいつも通りに。
だが、そのいつも通りという言葉に、小さくしこりが残る。
どうせ、俺は目の前のこいつとは違うのだ。ならば、無理して、従い、戦う必要なんかあるのだろうか?
くだらないその考えが、いつまでも頭に残った。




