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道を違う。

久しぶりの更新

徒歩で二日といってもそれは最短の直線距離を疲れることなく一定の速度で二日間歩き続ければつくといった簡単な計算で出したものだ。



敵に発見されないようにルートを変える必要もあれば、敵から身を隠す時間。休憩、その他諸々合わせればさらに時間はかかる。



歩き出して6時間はたったか、日が昇る前の薄暗い時に出発してすでに太陽の光が雪に反射してまぶしいと感じるまでになっている。


雪の上を歩く。どうやら雪は余り降っていなかったのだろう。少し硬くなった雪は歩きやすい。が雪は雪。体力の消費は思ったよりないとはいえ、疲れることには変わりない。



「大丈夫か?」


「・・・・・・ちょい無理かな、少し休もう」


親友の問いかけに、俺は息を吐くように答える。


「そうだな、いったん休憩するか」


そう言って比較的日当たりがいい場所にあった倒木に座る。それに倣って自分も似たような別の倒木に座る。


「すまんな」


俺はそういって息を整える。冷たい空気が肺に入る。痛みを伴うような空気を吸うたびに体温が奪われるように感じる。


「・・・私も疲れていた。気にする必要はない」


そう言って軽く笑っているが、おそらく目の前の親友はそれほど疲れてはいないのだろう。


おそらく、こいつなら本当に二日で基地にたどり着くだろう。自分を放ってさっさと行けばいいのに、俺のためなんかに、気にしないといって笑っているのだろう。


それは気遣いなのだろう。だが、それをうれしいと思う反面。劣等感やらなんだらが、どろどろとしたものが湧き上がってくる。


「・・・・すまんな」


ため息とともにどろどろとしたものを吐き出すように大きく息を吐く。


「気にするなっての。どうせ先は長い。それに、先を急いでいて事故になるよりかはましだろう?」



別に自分の体力がないわけではないと思う。平然としている親友の方がおかしいんだと、間違いなく断言できる。


だが、それでも足を引っ張っている事実は変わらないのだ。



とにかく身体を休ませる。少し暖かい陽気だが、調子に乗って汗をかくほど歩けば日が沈むころには凍傷まっしぐらである。



落ちついて身体を休ませる。先が長く、足手まといだから、せめて迷惑は最小限にしなければいけない。



「・・・・・・・っ・・・・」




みじめだ。どうしようもなく・・・・・・


そして、目の前のあいつが、どうしようもなく羨ましくてしょうがないのだ。


憎悪と憧憬、妬みと羨望、いろいろ混じりあってぐちゃぐちゃの感情を抱えつつ。


今は休むのだ。





「・・・相棒、一つ聞いていいか?」


休んで十分は過ぎたぐらいか、会話をすることもなくぼんやりとしていた時に、ふいに話しかけられる。


「嫌な予感がするけど、どうせ何言っても聞くんだろう?親友」


めんどくさい気がする。


「かなり真面目な話になる。もしも、私たちが無事に帰れたとして、相棒はどうするんだ?」


その問いに、一瞬いぶかしむ。


「どうするって?とりあえず脱出までの防衛に参加する・・・・となると、機体がないな。支給される機体のタイプか?とりあえず前のと同じのがいいだろ。いきなり狙撃仕様なんぞ乗る気は・・・・ああ、まず機体が配備されるかも怪しいな、そこんところは姉貴に頼むしかない。ん?いや、これは質問じゃないな。確定事項だな・・・・となると違うか」



「ああ、そうじゃない」


親友が首を振る。


「基地を放棄してからのことだ」


その言葉に、一瞬言葉に詰まる。


「・・・・・ああ、帰るってのは本土にってことか」


なんというか、そうか、そういうことを考える時期ということか。


関係ないから忘れていた。


あ、そっか、帰れないと思っていろいろやってたな俺。


「いまさら帰ってもなぁ、想像はつくが、俺はどうでもいいなぁ」


まあ、本土で部隊の再編成ってことにはなるだろうとは思うが、それぐらいだ。再編成っつっても、大佐にとって、直属ともいえる親友の部隊を手放すとは思えない。大佐もおそらくは昇進して正式に一軍の将ぐらいにはなるだろう。親友だってやったことを考えれば、撃破するのが至難といわれた猪型を六体撃破。下手したら二階級ぐらい特進してもおかしくはないだろう。



まあ、それを近くで見ることはないだろう。帰ったら俺は・・・・



いや、それはどうでもいいことだ。よくはないが考える必要ない。どうせそうなってもいいと思ってやってきたんだ。その選択を、間違っていたとは思わない。まあ、たぶんその時になったら後悔して、逃げだしたくて、言い訳を重ねる見苦しさを見せるだろうけど。


「・・・帰れば、私たちは英雄だろう。負けて逃げて、守ることもできなかった無残な敗残兵が、多くの民を守れずに、わずかに救った少なき民を逃したことを、讃えるのだろう。度し難い、実際は守って死んだ者たちが英雄なのに、踏みとどまって剣を向けた仲間たちが称賛されることはない。なら、せめて、剣を持ち戦い続けることで、仲間に答えねばなるまい」


そう言って真っすぐにこっちを見る目は、焼けつくような強い光を持っていた。


「大佐に頼んで、部隊は再編してもらう。あの子は戦うのはうまい。けど、戦い続けるべきじゃないと思っている。あれは幸せになるべきだ。部下だって、ここまで文句を言わずについてきてくれた。幸せになってほしいと思ってる」


ずいぶんと、おせっかいなことで、それに異論はない。あの子が危険な目に合わないならそれに越したことはない。会う機会も減るだろうが、そっちの方がいいだろう。俺の心は納得しないだろうが、そんなのはいつものことだ。


「・・・・・・つまり、再編しても、ついて来いってか?」


当然だと思って口にしたその答えに、なぜか強い光の瞳の表情が、あっけにとられた顔になる。


「・・・そう思ってくれるのか・・・お前は」


親友はくしゃりと顔をゆがめるように笑う。


「言うわけないだろうが、お前も幸せになればいいって言いたいんだよ私は」


その言葉に、俺は胸に痛みが走る気がした。


「ずっと、共に戦ってくれたんだ。これ以上、相棒、いや、君は俺についてくる必要はない。そう言っても、君はついてきてくれた。そして、何度も助けてくれた」


その笑みはうれしげだった。


「・・・・え、いや、待て、それは」


感謝されることじゃない。それは俺なんかに向けていい物じゃない。


「今回はっきりした。君と私は、会うべきじゃなかったんだと」


その言葉に込められた意味を知ることはできないだろう。それは、俺みたいな心根のやつにはわからない。かつての兄のように、最初から違う人間の答えだから。


「・・・・・・おい、だまれ、怒るぞ」


辛うじてつぶやく。この寒空の下、凍傷になりかねない汗をかいてはいけないとわかっているのに冷や汗が出る。


「・・・君は本当に、いいやつだな。私とのつながりを、切ろうとしている私に怒ってくれる」


そう言って笑う。


「やめろ!それはここでいう必要ない。帰ってからでもいいだろ?そんな場合じゃ・・・」


やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ


「ここじゃないといけないんだ。たぶん君と二人きりしかいない。ここでしか」


そう言って。まっすぐこっちを見る。


「今までありがとう。ここから先は護国を守る鬼の道、人ならざる者の道、私は戦える。君とあの子と部下を守る為に歩いていく。民を守る為に歩いていく。ここから先に人は来てはいけない。人である君は来てはいけないんだ」


それは、違う。


「違う!俺は!」


きづけば、親友に掴みがかっていた。


「俺はお前の部下ではない!そんな命令には聞かない!俺は俺の意思でここにいる。だから、俺は」


視界が暗転する。数瞬で自分が足払いから投げられたのだとわかる。素早く組み伏せられて背中に回られる。地面に倒れ背中をとられる。


「ならば私は、私の意思でお前を拒絶する。ここから先にはいくな。ついていくな。お前は優しいし、本当は戦うべき人間じゃない!」


「違う!俺は、お前の思ってるような奴じゃない!俺は、俺は・・・・・」


最低のクズだ。そう言ってくれるお前すら殺してやりたいと思うほどの馬鹿で、好きな人を奪ってやりたいと思うほどの馬鹿で、そのくせそんな勇気のない自分が消えてしまいたいほど嫌いなのだ。


「それでもだよ。相棒」


優しげな声が抵抗する気を奪っていく。


「君じゃこっちには来られない」


それは知っている言葉。自分の兄を見て言わずとも知っている答え。


「・・・・・・・わかった。とりあえず放せ、わかったから、今は休もう」


無力感が心の底から湧き上がる。どろどろとしたものが自分を飲み込んでいく。


それにあらがうものは、心のどこにもなかった。


BL要素はないんだけどなぁ。勘違いされそうだ。

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