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交渉


もともとは、軍の宿舎だった建物の将校クラスが使う執務室に入ると。そこでは予想した通りの光景が広がっていた。


「・・・いい加減銃を突きつけるのはやめてもらいたいんですが・・・」


「そっちがその殺気をしまって背後のお仲間の銃を下げてくれないと承服できないな」


そう言って真正面に対峙して銃を向ける厳しい親友と。両手を挙げて降参しつつも左右の部下が銃を親友に向けて余裕を装って笑っているリーダーに呆れつつ。


「それぐらいにして銃を引け」


「いや、むり」

「だが、相棒」


「じゃあこうしよう」


拳銃を抜いて二人に向ける。


「下げた方につく。3,2,1、」


「・・・・・了解」

「・・・む」



リーダーが慌てて下げるように部下に指示し、ほぼ同時に親友も銃を下げる。


「よしっと」


素早くこちらも銃を下げる。緊張感が少し緩んだのを確認。


「状況はなんとなく察してる。負傷者は?」


北戌の兵士がアジトに近づく親友に警告で威嚇。

親友が敵と判断して反撃。


俺ならまだしも親友が銃もった素人に負けるわけもなく圧倒するだろう。


そうなると親友一人に潰されまくる北戌。


おそらくリーダーは大佐とつながっているので作戦の生き残りと思って話し合いしようとする。


親友、信じないで銃を向ける。


とりあえず寒い野外で膠着するのもなんだから牽制しつつここに到着。


んで、今に続くのだろう。


「・・・・潰された人はいませんね」


少し安堵する。再起不能になるようなけがはなかったようだ。


「・・・・まあ、少々手荒に扱ったが、市民を傷つけるつもりは鼻から無い。それが他の者を傷つけるなら扱いは変わるがな」


そういって軽くリーダーをにらむ。リーダーは肩をすくめるだけだったが。


「・・・・とりあえず状況の確認だ。まずなんで俺たちがここにいるかというと・・・・」


軽くこちらの現状を報告する。



「・・・・・てことで、猪ども倒したはいいが、お互いに機体を失ってここまで来たということだ」


「・・・それで?帰還する手伝いをしろと・・・・その代価は?」


言いたいことを察して、リーダーは少し考えるように視線を上に向けてソファーに身体を預けて質問する。ちなみに親友はこちらに任せているのか黙ったままリーダーの動きを警戒している。まあ杞憂だとは思うけど。そういうところは頼りになる。


「猪がいないってなると、飛行機が使える。そうすれば少なくとも民間人の避難は確実に終わる。北戌も大佐がうんと言えば本土に行ける・・・・どうだ?」


「そんなの、基地に行って大佐に言えば普通に通りますよ?それぐらいの手助けはしてきたと思いますが?」


「・・・まあ、そうだな」


「・・・・それとも口でも封じるために見捨てる前提で語ってます?」


「まさか、さすがに大佐がそれを許しはしないだろう?」


お互いの視線が絡み合う。


「・・・・・・何が言いたい?」


「いえ、町や基地に行ったら、本土に行くことになる。大佐が、あんたらを残そうとするわけがない・・・」


「・・・・で?」


「帰りたいか?」


俺の問いに、リーダー小さく鼻を鳴らす。


「・・・少なくとも大佐よりは自分たちのことを理解しているみたいですね」


そう言って少し楽しげな笑みを浮かべる。


「あんたらは化け物を倒したいから武器をとった。守りたいものも、帰りたい場所もないから、徹底的にあいつらを倒したいから。武器をとってこんなところにいる」


そう言って視線を向ける。正解か否か。


「・・・それで?大佐に行かないと伝言するだけが代価になるわけないでしょう?本題は?」


「退却するなら武器弾薬はいらないだろうな。廃棄し、万が一にも利用されないように焼くか爆破しておくだろう」


なんせ、砲塔のついた亀のような化け物だっているのだ。こちらの兵器を取り込むような化け物がいないとは限らない。


「・・・それを、こちらに回すと?」


「正確には破棄しないで、市外に隠す・・・・今までと同じだ。補給の為に町に行く代わりにそこから好きなだけ持っていけばいい・・・無論化け物に利用される可能性は高いが・・・歩兵の武器弾薬程度なら悪用されてもそれほどでもないだろう?」


「・・・・・なるほど、確かに大佐に帰らないといって、かりに納得させても、私たちがそれを頼むのは頼みづらい・・・なら帰って来いと言われかねない。ふむ・・・確かに交渉の材料にはなる・・・」


何度かリーダーはうなづく。


「だが、一つ問題がありますね」


そう言ってこちらを見る。


「信用。俺が実際にそれをするかどうか。知らんぷりして本土に帰るかもしれないと」


「正直いって、大尉殿を信用できるかどうかといわれると・・・個人的には信用できかねない」


お互いの視線が絡む。


「軍人の誇りでもかけて誓ってみようか?」


「・・・・・一番軽いものでしょ、それは」


呆れ半分の笑みにこの場の、俺とリーダーの二人だけ空気が緩む。親友の気配が一瞬剣呑になった気がするが気にしない。


「北利の軍人にそんなもんないわな」


そう言って笑う。一瞬親友がこっちをにらんだ気がするが。気にしない。見捨てたのは事実だ。同じ軍の、同じ兵士がしたことだ。


「・・・信じましょう」


そう言ってリーダーはまっすぐにこちらを見る。


「一番軽いぞ?」


「重い物をかけない時点でだます気は無し・・・そう言いたいんでしょう?」


「そうだな」


「そして少なくとも、負い目があると、あなた自身が思っているということも伝えたい」


「ご名答」


「・・・・・・まあ、正直あなたは全く信用はしていないんですけどね」


そう言って視線を親友に向ける。


「隣の方はそれを重い物だと認識していると、そして相棒というならそれを違えようとすれば止めてくれると・・・一瞬本気で焦りましたよ。軽いってのでそんなに怒りますかねぇ」


「・・・・・・あんたらがそう思うのは仕方ないと思っている」


どこか、辛そうなその言葉。リーダーは一瞬だけ、目に迷いが浮かぶ。


ああなんとなくわかるぞその気持ち。


「・・・じゃあ、協力させてもらいましょうか」


すぐに視線をこちらに向けて話を続けてくる。もうほぼ決まったのでこれからは話を詰めるだけだ。大きく息を吐き出す。


すこしは腹芸を覚えてほしいよ。本当に・・・・


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