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俺と親友

普通に始まる

基地といっても、それは城壁に囲まれた砦とか城、宿舎や滑走路がむき出しのごく一般的な基地ではない。


主要設備はもちろんのこと、格納庫や弾薬庫、兵士の宿舎や近隣の町などをつなぐ道などをすべて地下に埋めることで一見小さめの、ただの雪山にしか見えない地下要塞が俺たちの基地である。


岩肌のむき出した崖に作られた人工物の鉄の扉。機体を前に止めるとゆっくりと扉が開き。機体が入れるギリギリの通路が見える。


機体を自動操縦に入れる。後は勝手に機体が待機場所や弾薬の補給などを行うドックに向かって歩いてくれるので、その分手持ち無沙汰になってしまう。


操縦席の横の小物入れを開けて中身を確認する。


―携帯食料はけっこう減っているから後で補給して、飲み物はけっこう残っているな。あとは拳銃とサバイバルセット。後はガムが数種類といった嗜好品。


チェックしてパック状の飲み物を取り出して飲みながらのんびりと操縦席の背もたれを後ろに下げる。コーヒーをストローですいつつ。溜息を吐く。


『2番機の損傷は軽微、弾薬の補充、中足の取り換え!足もってこい足!』


外部集音機が整備班長らしき声を拾っている。


本体とつながる。六本の足はブロックのような構造になっているので、短時間での取り換え可能になっている反面、接続部の損傷はかなり修理に時間がかかる。今回は足だけの被弾だったのでほんの十数分で終わるだろう。


それとは別に、ちゃんとした回線から通信が入る。


『本部より通信。第31部隊は哨戒任務を36部隊に引き継ぎ、休養に入れとのこと。次の作戦時間は明日朝8時よりA5一帯の哨戒任務。それまでの自由行動を許可する』


それを聞いて、機体の周りに群がる様に動いていた整備兵にも通信が言ったのだろう、そいつらの動きが見るからに勢いがなくなる。まあ、すぐに出撃する事が無くなったのだから、そうなるのもわからなくもない。


座席のシートベルト(といっても車のと違って全身を覆うぐらい本格的なものだが)をゆるめて座席から立ち上がって座席のすぐ上のハッチを開ける人型部分の腰と蜘蛛部分の結合部のちょっと下側の部分から這い出すようにして出ると、既に目の前にアームで移動する形式の床があって自分が乗るのを待っている。


床に乗るとゆっくりと動いて整備の連中がいる機体の足元に降りる。


「大尉殿、体調に問題は?」


整備兵の一人がやってきて簡単な確認。


「問題ない。疲れたから部屋で休む。ここは何番ドッグだ?」


「28番ドックなので、31部隊の宿舎スペースは右にまっすぐのエレベータで行けます」


整備兵の言葉に従い。右へまっすぐ歩く。二、三機の多脚人型戦闘騎士(長いから次からは多脚騎士と呼ぶ)を通り過ぎで普通の町のエレベータの四倍近い広さのそれを操作して、自分の部隊の共通スペースの番号を打ち込む。


「・・・だるい・・・」


長時間の哨戒任務(実際、あと一時間後ぐらいに終わっていた)直後に敵部隊の迎撃。そりゃ、弾薬や燃料が残っていても、補給に戻る(実質作戦終了)ぐらい許してくれてもいいだろう。


隊長・・・親友もそう思ったから本部に提案したのだろうし、本部もそれぐらいならと軽く許可したのだろう。


部隊の共有スペースを簡単に言えば


個人の私室や会議室のような作戦室


風呂などの衛生施設


テレビや漫画、ビリヤードやゲーム。小さな運動施設などの娯楽施設などに分けられている。


とりあえずエレベータからまっすぐに自室に向かう。どうせ風呂などは、他の隊員が入っていて混雑してるだろうし、今はとにかく眠い。


寝ようと思っていたが、自室の前の人影をみて、それは無理かなと頭を切り替える。


「よう相棒」


そう言って風呂上りだろう。しっとりとした髪に、首にタオルを巻いた湯気が出てる隊長・・・まあ親友が苦笑に近い笑みで話しかける。


「なんだよ親友」

俺は少しだけ笑い呟く。


「何、先ほどの戦闘のちょっとした確認だ。入っても構わないだろ?」

そう言って俺の自室の扉を軽く叩く。要は中で話そうってことだろう。


「・・・・・・おっけぇ」

自室のカードを差してロックを解除して親友を招き入れる。


「さて、それじゃあ、先ほどの戦いだが・・・・・・まず、敵の侵攻に対して対応としては・・・・・・・・・・で、確かに単独行動を命じたか・・・・・・・・・・・・」


長いので要約させてもらえば


「やはり部下をいく人かつけて、亀の迎撃をおこなった方がよかったんじゃないか?」


といった意見だったので、


「いや単独行動の方がばれにくいから、ここは単独で正解だろ?敵の砲撃は防いだんだから」


「だが、問題として、お前はおされていただろう?被弾していたし、そもそも複数体の敵を相手にするなら二機ぐらい付けた方が確実だろう」


「それじゃ、ばれて狼どもが俺らを襲ったら無駄に三機の損害を出すことになる。それなら仮にばれても一機の損害ですむんだから、あの時の作戦は間違ってないだろ」


「それを、お前が言うのか、こら、・・・・・・確かに、それの方が確実だが、そんな相棒一人を危険な目にあわせるのは問題だ」


「んなこと言ってもなぁ・・・・他の奴にやらせたら捨て駒にされたみたいで不信が積もるぞ?親友」


お互いに言い合いながらも、俺は少しだけ心が軽くなっている。


「それはお前だって同じだろうが」


「そこん所は信用してるから俺は平気だよ」


こいつが仲間を見捨てるとは思わないし、向こうも俺が自分を裏切るとは思っていないだろう。


まあ、簡単に言えば、こいつは俺の無鉄砲さを心配していて、俺はこいつの仲間を巻き込むのが嫌いなだけで、


「お互いに生きてたんだからそれでいいじゃない?」


「そんなこと言ってたらお前いつか死ぬだろうが!」


お互いがお互いを一個の人間として見て、一個の人間として言い合いできることが本当に楽しいのだ。


結局この言い合いは他の隊員が風呂を出て、最後の隊員が俺と隊長を呼ぶまで続いていたのであった。


補足は特になし。

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