本戦手前、補給
『やってくれたな・・・・・』
36部隊の旦那の言葉に無言で答える。敵の防衛ラインの正面に位置する丘は地形が変わるほどの砲撃などでぐちゃぐちゃになっており、周囲には数十体の亀や狼の死体が散乱している。そんな中36部隊や他の先行部隊の連中は前方を警戒しつつ後退を始めている。
「本隊は?」
『すでにここを通過して敵本陣に迫ってる。後数分もすれば敵の最終防衛ラインを突破して蹂躙するだろうな』
「はやいな」
自分たちが苦労して突破した第一ラインのほかに第二、第三、そして最終ラインの三つの防衛線が張られているということは事前に分かっていた。それをすでに二つも突破しているという。おそらく俺たち先行部隊がかけた時間の半分ぐらいの時間で。
『先陣が、お前の隊長だ。別に不思議じゃあない。狙撃の嬢ちゃんもいるし、部隊も精鋭ぞろい。相変わらず頭一つも二つも先に行く』
感心するような呆れるような声。それを向けられた親友のことを少し思い。機体が持つ突撃銃を軽く振る。
「36の隊長・・」
『すでに補給用の燃料と弾薬を先行部隊から少しずつ拝借してある。使いたければそこにあるからもってけ』
そういってカーソルに光点が光る。ちょっと行った先に弾薬と燃料が置かれているらしい。
『一応言っておくが私は撤退の命令を出した。お前は戦闘後に残った自分の燃料と弾薬で勝手に行動した・・・・間違いはないな?』
嘘だらけの言葉に苦笑する。
「・・・了解、間違いありません」
『じゃあ、さっさと行け、いいか、必ず帰ってこ・・・・ふん、そこまで言う必要ないか・・・周りに誰もなし・・・か、ならば、帰ってこんでいいぞ?というか、いなくなってくれれば、楽になってせいせいするな・・・ふむ、割と本気でそっちのほうがいいか』
このやろう。俺ぐらいしか聞くやつがいないと分かって、最後だけ本音だしやがった。
「・・・まあ、わりと同意見なんでなんも言いませんわ」
その言葉に通信機越しに小さな笑い声。
『くっくっく・・・・自覚してやがるぶん、本当に気持ち悪いわお前・・・』
「おなじく、自分も36の隊長殿は気持ち悪いわ・・・理解ある上司ぶって本当に死んでほしいと思ってるところが特に気持ち悪い」
『当たり前だ。お前なんぞ死んでくれた方が安心して寝れるわ』
「・・・否定はしないっていうかできんな・・・」
笑うような会話ではないのにお互い小さく笑いあう。
何か通いあうものがあるのだが、お互いにそれが信用ならないということが分かっているから互いに嫌いあう。だが、互いに協力しないほど憎むわけではない。
ああ、本当に自分が気持ち悪い。




