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前哨戦

味方の砲撃が土煙をあげ敵の姿を隠し、応戦する敵の砲撃が土煙を上げて視界をふさぐ。


おそらくお互いに同じ事を思いながら続く砲撃のさなか、機体を敵防衛ラインに回り込むように進路をとる。


敵の砲撃が来ていないだから気づかれていないのだろう。


森林地帯を走り抜けながら思う。小高い丘に陣取った陣地を迂回して、崖のような急斜面を走り抜ける。普通の戦車なら横転するだろうが、六本足を鋭い釘のように崖に突き刺して進む多脚騎士は、岩盤の質によっては90度以上の角度で動くことができる。実例として、硬い岩盤の洞窟180度の角度。要は天井に張り付いて移動することができた機体もあったというのだから恐れ入る。


敵の背後の山の中腹で止まる。気づかれた様子はなし。敵陣よりも高位をとっているため敵の動きがよくわかる。


どうやら、かなり警戒しているらしく。狼がせわしなく位置を変え亀が位置を変えつつ砲撃を行い。22部隊を足止めしている。


牽制としては成功しているといったところだ。


敵はこちらに気づいていないのを確認して武器を構える。使い慣れた56mmではなく75mm突撃銃と呼ばれる攻撃力。速射性に優れたメジャー兵器である。できれば使い慣れてる軽い銃が好きだが、今回は威力がある程度無ければ牽制にもならないのだからしょうがない。できればこれで何体が仕留められればいいのだが、自分の腕前上混乱させるのが関の山だろう。


それを両手で二丁。射撃の正確性は求めていないので多少ぶれてもいいので安定しない両手持ちで構える。


左右からの轟音と衝撃が機体を揺らす。銃撃が敵の防衛ラインに激しい土煙を挙げる。そのまま機体を振るように前進させる。弾切れになったので片方を投げ捨てて開いた手でもう片方のライフルにマガジンを装填。弾丸をばらまく。ばらまかれた弾丸が煙を吐き出しながら敵陣営に到達。敵の集団を真っ白な煙が包む。


煙幕弾から通常弾にマガジンを換装。撃ちながら山を下る。おそらく22部隊はすでに突撃を敢行しているだろう。


要は相手の注意を惹き続ければいいのだ。


銃を捨てる。すでに予備のマガジンもない。75mmは威力は相当だがいかんせん弾が少ないのが、嫌いな理由の一つでもある。


剣を抜く。あんまり使い慣れていないが仕方がない。すでにこちらに気づいた狼が三匹こちらに狙いをつけ、向かってきている。


すれ違いざまに一体を切り付けてそのまま右前足でその背後の狼を蹴ってその反動で反対方向に跳ぶ。もう一体の狼の牙が先ほどまでいた場所を正確にかみついた。


そのまま煙幕の濃いところに跳んで煙に溶け込む。追撃してくる狼を剣ではらい。地面をけって後退する。


「ああ、もう・・・・ちょ、やばいってちょ!こ・・・・・・く」


さばききれないでわずかに牙が装甲をえぐり。復帰した亀の砲撃が自分の機体をかすめる。


狼も五匹に増え、さばき切るのももう限界だろう。


五匹がとびかかる寸前。横合いからの銃撃が狼を撃ち貫く。同時に煙の向こうから爆音が響き。亀の悲鳴のようなものが聞こえる。


「・・・・・・・・よし」


息を整える。22部隊が間に合ったのだろう。混乱して連携のとれない化け物たちを、22部隊が各個撃破していく。


『無事ですか!』


「・・・問題なし、さっさと行くぞ。このまま的の背後をとる・・・損害は?」


『ありません』


その言葉に少し驚く。四機ぐらいの損害が出るだろうと覚悟していたのだが。


部隊はそのまま前線を突破する。同時に自分から見て左前方。本隊がいる方から土煙が上がる。


「本体が動いた!全員突撃中止!展開して敵部隊の迎撃に専念しつつ前進!敵の背後から圧力をかける!」


すでに敵は混乱している。だが、数十匹の狼や亀がこちらに狙いをつけている。厄介な位置にいるこちらを先に叩いて本隊を押し返す腹なのだろう。


「・・・・・・まあ、そうなるわな」


剣を抜く。銃は先ほど使い切ったので持っていない。行ってしまえば戦うとなると剣で突撃となるだろう。


「・・・・・・・・・」


22部隊と化け物たちの交戦が始まる。正直味方の邪魔をする行動をとる必要はない。さりげなく後退し、交戦している22部隊の後ろにさがる。


『・・・・四番機!応答しろ!支援砲撃を頼む!四番機!』


『こちら六番機、四番機は撃破されましたこちらももう持ちません!後退を!』


『しかし・・・』


『くそくそくそがぁあああああああ』


通信機から発せられる報告や悲鳴。それを聞いているのに、機体を動かしたりはしない。すでに六機がやられているようだが敵に対する圧力はずっとかけ続けている。もう少し本体が押し込めばすぐに崩れるだろう。勝ちは確定した。後は犠牲が少なくなることを祈るぐらいしかすることはない。


「・・・・・・・・・・・・」


行っても無駄だ。そして、これは俺がやったことだ。作戦の成功率を上げるために薪のように投げ込んだ命だ。それはわかる。


『ぎゃああああああああ』


『副隊長!・・・・くそぉああああああ』


『こちら第11部隊。救援に来た!これより援護に入る』


「こちら第22部隊代行指揮官。援護感謝する共同して敵をたたきつぶすぞ」


そういって、やっと機体を動かして前に出る。味方がこちらに来るということは完全に敵の動きが崩壊しているのだろう。もはや勝敗は決した。本隊と合流し、撤退するだけだ。


ふと道すがら、横目に大破した機体が目に映る。


22部隊の隊員の機体だろう。コクピットに亀の砲撃が命中したのか胴体がえぐれている。あれでは生きていまい。


それは、誰の所為なのか?


「・・・・・すまん・・・・・」


その機体の腕の75mm突撃銃をとり。予備のマガジンももらう。つぶれたコクピットを再度見て、小さく謝る。


「許せとは言わんよ」


わかっている。死ななくてよかった者を死地に送ったのは自分。


「だけどそれでも、俺はあいつらを殺したくないんだ」


それだけ言って、機体を進める。


機体の位置を示すモニターに映る22部隊の連中の数は両手で数えられる程度にしかいなかった。



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