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作戦開始。36部隊隊長

それは作戦開始時間と同時に起こった轟音によって始まった。


有効射程ギリギリからの狙撃型や砲撃型の多脚騎士による砲撃は敵防衛ラインがあると思われる位置に砲弾の雨を降らす。


左翼右翼が景気よく砲弾の雨を降らせる中、中央の36部隊を中心とする部隊は、若干抑えめに砲撃を続けている。


「・・・・・・・・・タイミング的にはそろそろだな」


指揮権を与えられた身とはいえ、正直言ってしまえば、この戦いは無駄だろうという思いが強い。


住民が逃げる時間を稼ぐ、聞こえはいいだろうがそれはこれで勝っても自分たちの席はほとんどないということの裏返しではないかと思う。


自分は部下が大事だ。それ以外のことなどどうでもいいという思いが強い。それはあのいけ好かない大尉と似ているとは思う。


だが、少なくとも自分はあいつのような人間ではないと、それだけは思う。


他人を騙し、利用し、自分とその周りが壊れた原因に自分がならないように立ち回る姑息な男。


虫唾が走る。それは指揮官ではなく詐欺師だ。自分の持てる力のすべてを使い。部下と仲間の被害を最低限に抑えて勝つのが指揮官の務めだ。それをしないで、最初から責任も果たさず。結果を出すために友軍を利用していくあれを、認める軍人はいまい。


だが、それは軍人としてみた場合だ。それを大局的にみると厄介なことにあの男は。


『隊長!右翼の牽制部隊の動きが予定と違います!・・・・・・・敵防衛ラインに突撃を始めています!』


「・・・問題ない。突撃を始める」


目の前の敵の防衛ラインを見る。明らかに右翼に気を取られている敵の動きに小さく笑う。

おそらく、ここで自分が引いたら、明らかに有利な状況で退いた無能の烙印を押されるだろう。そして突撃したのなら、あれの動きは戦局をさらに有利に運ぶのだろう。



正直、今回の作戦は乗り気ではなかった。退いていいならそこそこの攻撃で退いてもよいと思っていた。


それを、あの詐欺師が読んでいたということだ。単にあいつは他人を信用していないから、退くに退けない戦場を作る。


それは英雄の行動ではない。軍人の行動ではない。


詐欺師の行動が、ほんのちょっと戦場を後押しする。正直無鉄砲ともいえるあの突撃は、命を懸ければ誰でもできるような物で、大局全体で見れば小さな小さな押し出す力でしかない。


それを、実際にする者はいないだろう。そもそも囮だけしていろと言われて、命を懸けて被害を増やしてまで命令に背くこと自体考えるやつはいない。


だが、その小さな一押しが、戦場を少しだけ動かすのだ。今まさに俺が突撃しなければならないような状況に追い込んで、作戦を成功に向かわせているように。


あの男に英雄のように戦局を押し返す力もない、軍人のような義侠も決意もない。


ただ、最も効率がいいところに小さな一押しを押し込むのは非常にうまいのだ。


自分の命を捨て駒にして周りの捨て駒と一緒にぶち込んで戦場をほんの少し動かす。

それは誰にでもできて、誰もやらないこと。


それは、おそらく小さな小さな詐欺師ができる。一番効率がいい戦い方なのかもしれない


だが、それが、仲間を騙し、死地へ送り、それを理解してもなお仲間面して居続けている。それがいいとは決して思わない。


「・・・なんで、あれがそんなに好かれるもんなのかねぇ」


たぶん、それはあれを理解してるのが自分ぐらいだからなのだろう。


わずかに似ている部分があるから、理解できる。それゆえに、警戒し、嫌う。おそらく向こうも自分を警戒し、嫌っているだろう。


「・・・気持ち悪い・・・」


あいつを見ていると、本当にそう思うのだ。


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