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作戦直前 作戦

基本的に自分にできることは限られている。


自分ができることなんか雀の涙のような戦果を挙げて死ぬ程度のことだけだろう。


それを、どうにかして変えようと思っても、自分には小さな光すら放つことはできない。


それを、悲しいとは思わない。悔しいと思う心もない。ただ、そんな身を仲間という、強い光を持った者たちが信じてくれる。


ならばせめて、変えられるような強い光を持つ奴の力になってやろうと思った。


それが、腐ってぐちゃぐちゃのどろどろとした魂になっても、歩きつつける理由なのだろう。


「敵の防衛ラインを突破するといっても、ただ突っ込んで突破はできないだろう?」


そういって右側の防衛ラインに向かう凸22部隊のマークをから点線で防衛ラインの別方向から攻撃する。防衛ラインを回り込むような軌道。問題は


『・・・・・・敵に気づかれるのでは?』


敵の防衛ラインを横切る形になるため、ばれる可能性が非常に高い。


「横合いからの奇襲は常とう手段だからな・・・・もちろん敵もそれは警戒している。だが、敵の攻撃のさなかに警戒できるほどの距離ではないだろう?・・・・そもそも、陽動のために攻撃をかけるんだ。それがちょっと激しい攻撃でも問題あるまい。予定通り相手を釘付けにすることには変わりない。そして」


回り込んだ点線が防衛ラインの横合いから攻撃と同時に22部隊も防衛ラインに突撃。


『・・・ですが、失敗した場合、別動隊は壊滅、死ねと同義ですが・・・』


高質化した言葉に、俺は少し考えるように言葉を止めると。


「・・・なら単独で俺が行こう。それなら問題はないはずだ」


『な!』


そりゃ驚くだろうな。


「22部隊をいきなり率いて戦って勝てるわけねぇだろうが、そういうのは副官だったお前に任せる。そして、奇襲するなら少数。というより一機でもいい。脅威が真横に現れたうえで正面から敵が来る。奇襲部隊が突破するわけじゃない。突破するのお前らで、おれはアシスト。まあ、つまり敵を倒すようなアシストはできない。敵をひるませるためだけに有利な地点を奪い、敵に対して攻撃を加える。敵はもちろんそんなことはわからない。奪還するか、目の前の敵に集中するか、どちらを選ぶとしてもそれなりに抑えを送るが残して動くかしかない・・・まあ、重要なのはタイミングとスピードだ」


自らを危険にさらして、敵を倒す男。そんな風に思っているかもしれない。


実情はあきらかに反対だ。


そもそも突撃して突破する方が自分にとってはリスクが高いのだ。


例えば、奇襲部隊を他人に任せたとして、それが成功した時点で突撃することは確定する。連携のとれた22部隊は特性を生かして動き回るだろう。突撃、回避、狙撃。そんな中にそんな動きを知らない俺に何ができる?


気づいたら味方が移動している。


気づいたら味方が攻撃目標を変える。


組織だった動きを妨げる上官など邪魔なだけだ。そして動きのあきらかにおかしい機体を敵が見逃してくれるわけもない。


ならば、動きを阻害しない単独行動のが生き残る可能性が高い。さらに、奇襲を単独で行うことで、自分で作戦の成功失敗を判断し、行動する決定権を持つのだ。


要は無理だったら奇襲失敗と報告して帰ってくればいいのだ。


作戦は先行部隊の指揮官にゆだねることになるが、それはしょうがない。俺にできることは終わり。後は親友を守るために部隊を離れて合流すればいい。


勝利を確実にすることができなかったことは残念だが、それで済む話だ。


勝率は高いのに、それを確実にするだけの、その一手を成功させるためだけに、味方をだまして死地へいざなう。


冷静に考えると先行部隊の指揮官のように警戒するのも当然だ。そして、自分の部隊でないならその一手は有効だから、止めることもしない。


さらに言えば、別に作戦失敗しようが目的の敵部隊の陽動は成功しているのだ。罰則も何もない。22部隊にとっては冗談じゃ済まないだろうが、まあ、そこは何とか口でごまかしてやればいい。そもそも22部隊の部隊での地位は最下級まで落ちている。あいつらが文句言おうが、損害がない時点で上がまともに取り合うことはない。


要はどう転んでも生き残れば自分にとって負けはないのだ。そして自分は生き残りやすくなるだろう。撤退する権利を持って戦場にいる。


奇襲に成功したら、単独で敵を相手するという危険な目にあう。


それは最低限の自分の行動に対する詫びとして受け入れる覚悟はある。それだけが、


自分の心に残る、小さな小さな気持ち悪くないものを無くさないための方法だと知っているから


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