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兄の事と動き出す作戦

血を分けた兄弟といっても、仲が良くない兄弟なんぞどこにでもいるものだ。


自分にとって兄は目標だった。


どんな時も、どんな敵でも、兄は不敵に笑って全部打ち砕いていった。


不良だろうと犯罪者であっても、兄は笑ってぶちのめしていったのをよく覚えている。


だけど、俺は知っていた。


それは寂しさを紛らわすための笑みだったと。


兄は、なんでもできる人だった。目標を持ったらそれに向かって知恵を絞り、力を蓄え、確実に達成する。それを繰り返して、ついに目標を失ってしまい。笑うしかできないと、つまらなそうに笑っていた。



だから、兄貴が本当に笑っていたのを見たのは、一度きりだった。


それは、燃え盛る隣の町と巨大な狼。それを倒そうとする鋼鉄の戦車やヘリ。それを無残に破壊する化け物の群れ、それから逃げている中、立ち止まった兄が、その顔を楽しげに歪めているのを、小学生の俺は震えて見つめていた。


「・・・・・・・・・・ははは」


高校に上がったばかりの兄の、そのかすれるような声は歓喜に震えていた。


「なるほどね・・・・・・俺が矮小だったと、わからせてくれたか、ははは」


それは、あまりにも幼稚で、純粋な喜び。


「・・・ならおれは今まで通りやってやるさ・・・・・必ず貴様らを砕いてやろう」


そういって身をひるがえし呆然としている俺の手をつかみ走る。


「ぼさっとするな、逃げるぞ!今はかなわない。ならば戦えるところに立たないといけない。目標見つけたんだ。死んで終わっちゃつまらん」


引かれて走る。その手から伝わる熱は熱いぐらいに熱く。俺の心を揺さぶる。


だけど、その時に気づいてしまった。


俺は、目の前の輝く者になれないのだと。考え方が違いすぎることに。





別の部隊に用意された会議室でお互いに向かい合うように立って話をする。周囲に人はいない。どうやら気を聞かせてくれたらしいが、それほどの話ではないので少し困る。

話を続けるうちに向こうもそれを察したのか、ピリピリとした空気が抜けて、それでも弛緩しないちょうどいい場の空気に落ち着いてくる。



「なるほどね、敵の総攻撃の前にこちらから打って出る。確かに、言いたいことはわかる」


第36部隊の隊長はそう言って難しげにうなる。ふてぶてしいごついおっさんだが、考えているとき無意識に耳がぴくぴく動いているのが少しだけ面白く。愛嬌を与えている。


「だが、大佐の意向に協力しろというが、具体的に何すればいい?俺たちは軍隊で軍人だ。協力するにも何もまずは命令が来ないと動きようがない。俺個人ならいくらでも協力するが、部隊を動かすのは俺の権限でできないのはわかるだろ?同じ隊長なら」


その言葉に私はうなずく。隊員に命令はできる。だが、出撃するには機体の整備員。出撃の際の入り繰りの開閉など。いろいろな面で動くことができない。


「ええ、そんなに難しいことではありませんよ。この内容を部下に話して、納得させてもらえればそれでいいんですよ。できれば、やらなければならないという空気にしてもらえればなお、助かりますが」


「・・・つまり、何らかの形で出撃を止めようとする勢力が来ても、そいつらがどうにもならない空気を生み出せということか・・・・・俺の隊ならできる・・・とは思う。だが、俺以外の隊はどうする?」


その言葉に私は頷き。


「これから説得に行きます。まずは、一番話の通じるあなたにと思いましてね」


「・・・ふん、お前さんの言葉に他意がないのはわかるが、面白くないな。まあ、わかった。俺からもほかの隊長格や隊員にそれとなく言っておくさ」


そういって小さくため息。めんどくさそうにしているが、やることはやってくれる人なので、信頼はしている。


「ありがとうございます」


さて、次はどこの隊長に話をしてきますかね。





扉が閉まり。男一人しかいない会議室。


「・・・まあ、あれの副官がいない時点で気づくべきだったな」


男はひとりごちる。警戒するほどの事ではなかった安堵も含まれる溜息を吐く。


31部隊の隊長は嫌いではない。真面目で強い信念を持つその姿には好感が持てるし、何より、何度も命を救ってもらった身だ。


何度も命を救ってもらった身なら副長も嫌うべきではないのだが、いや、それでも嫌うには十分な理由がある。


懐に入れた仲間にはとことん甘い男だ。それはわからなくもない。そして、それ以外のものをすべて捨てても別に構わないというスタイル。それも付き合いが長いから理解しているのだ。


つまり、下手にあいつにかかわったり、半端な対応すると、大変な目にあう。


あの副長にとって自分らは使い捨てのコマ程度の価値しか持ってないのだ。






大佐が会議で出した作戦に。会議室の参謀たちは色めき立って反論したらしい。


結果的には大佐が押し通す形で命令は発令された。


なお、参謀直轄の部隊にはどうやら作戦に対する不信案を出すよう打診があったと聞いたが、あっさり断られたらしい。


そういったことはそつなくこなすあたり、親友はすごいと思う。


俺だと無駄に警戒されるからなぁ




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