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会議と倉庫で仕事


「次のページを見てみてくれ、これが最近の敵の動きになる。先ほども言ったように中央部の狼が減り、亀の数が増大している。つまり・・・敵の侵攻はおそらく・・・」


隊長が説明してるのを簡単にききながら思考は別のところに、

基本的にこいつが言っていることはしごく単純なんだ。


「つまり、展開する敵部隊を素早く突破し、亀どもを殲滅する矛が必要だというのはわかってもらえたと思う」


作戦といってもやることは油断している敵を正面から強襲するだけという単純な動きだ。だが、目的を考えると、必要なこともある。


敵の狼の数が少ないとは言ってもさすがに一定数はいるという事、そして以上に多い亀をどうするかだ。狼に手間取ってしまえば亀に展開されて突撃を防がれる。


つまり機動力があり、強力な武器が必要だということだ。


「・・・正直、この戦いは危険だ。だが、敵の侵攻を防ぐためには、やらなければならない・・・・・・・犠牲も出るだろう。だが、やらねばならない。私たちの背後には民がいる」


そういって親友は周囲の部下を見つめる。


「ここを突破されれば、船を待つ多くの無辜の民が死ぬだろう。それを守るために死んでいった仲間達と、それを守るためにそれらを捨てて逃げてきた俺たちの屍を超えて化け物たちが、幾多の街を焼いたように」


まあ、そうなるだろうなぁ。と適当に相づちを打ちつつ。周囲の隊員を一瞥。


「・・・・・」

「・・・・・」


親友が放つ決意に燃えている光。俺が憧れた熱を放つその光が、隊員に宿ったように、熱を帯びたその目に、俺は溜息を吐く。


「そんなことはさせない。そのためにはみんなの力が必要だ。すでに戦う理由、情報、場所、すべてそろった・・・・・・・・後はやるだけだ。死んでいった同胞と、今も震える無辜の民の為に、私に力を貸してほしい」


頭を下げる親友。これが演技全くなしのそのままの気持ちを伝えているのだから恐れ入る。


いや、もう本当に、それが本気だとここにいる隊員全員が理解しているのだ。俺のようにあきれる人間がほんとに少ない。天性のカリスマでも持ってるんだが、不思議と人を引き付けるのだ。


『了解』


俺と一部以外全員の声が響く。知るか、そんなこと。俺は自分の好きなように動くだけだ。それはお前に頼まれてやるものじゃない。俺が決めることだ。だから、俺は何も言わない。親友もわかっているのだろう。一瞥しても何も言わない。


「・・・・・ありがとう」


親友が優しく笑う。


静かに燃える闘志で部屋の気温が上がってるような気になる。本当に、暑っ苦しいことだ。


それでも、そうやってあきれてバカにしている自分だって引き付けられて作戦に参加するんだからしょうがない。


ただ、隊員の視線の先にいる親友を見て、少しだけ思う。


そういう人間になりたかったと。



緊急を要するとはいえ、準備ができるまで、パイロットにやることはないのは仕方がないだろう。


その間にも親友は、他の部隊の連中に作戦の概要を伝えるために行動していた。


まあ、基本的には作戦を伝えてそれが発令される前に、覚悟を決めてもらわないとどうしようもないから必要な行動だ。できれば、義姉さんに反対する連中が何も言えないぐらい作戦参加に肯定的になってもらいたい。


そうなると実直な親友に任せた方がうまくいくのだ。俺みたいに、胡散臭い男が説得だなんだといっても、効果なんぞ期待できない。


なので自分は別の行動をすることにする。


弾薬庫の倉庫の中で、弾薬の詰まった木箱をフォークで運びだしながら、ふと手元の書類を見る。


そこには、レジスタンスに横流しする武器弾薬のリストと、それを承認する義姉さんの認証。それから運び出しに関する責任者としての自分の名前が書かれている書類。


運び出した弾薬とそのリストを確認。あってるのを確認した後。


それを丸めてゴミ箱に、明日の朝には灰になることだろう。


「・・・いいのか?」


運び出しに協力してくれる整備の親方に、俺は頷く。書類を受理しない状態で倉庫に入れるのも、目の前のこの人のおかげだ。まあ、いろいろ癖は強いが、いい人であるのは間違いない。最も、軍隊としては問題児なんだろうが。


「武器の横流しは重罪。しかも民間人を戦わせるためとなったら・・・・そりゃやばいでしょ」


まあ、責任を取る者が必要だというのはわかる。それが義姉さんであることも十分理解できる。それが当然だとしても、この選択に迷いはない。


「いつども通り。でっち上げた書類で誤魔かしておいてくれ」


「そうすると、てめぇが書類でっち上げて運び出した盗人ってことになるが?」


ばれたら軍法会議で銃殺だと。真顔で言われる。


「いまさらだろ。最初からそれでやってるんだし・・・・・・」


「これ以上は、誤魔化せないで本土にばれるって言ってるんだ」


そういって親方は溜息を吐く。


「悪いことは言わん。正規の書類を受理させろ。そうしないと全部ばれるぞ?そうなったら」


「別にどうだっていいよ」


知ったこっちゃない。どうせここで最期を迎えるだけなんだから、別に本土の軍法会議に召集なんぞされるわけもなし。どうせ散るのなら。


「大佐の足引っ張るしかない連中に叩かれるネタ残す方が問題だろ?それに、万が一帰れたとしても、責任取って大佐が処罰とか、そんな後味悪いのはごめんだね」


「・・・・・・」


黙り込む親方と積み荷をトラックに運ぶ俺。


無言で荷物を運びこみ、何枚かあった他の物資のリストもゴミ箱に入れる。


「・・・そもそもさぁ」


不意に言葉がこぼれる。まあ、ドロドロした感情があふれていたのだからしょうがない。

もっとも、このドロドロは不快感なんかなく。純粋にいらだつだけの無害なものだったが。


「そんなとこまで追いつめて何もできなかったのは、本土の連中と、逃げた馬鹿どもじゃねぇか、少なくとも義姉さんは無理強いしていないし、民守るために、必死で戦ってんじゃねぇか、逃げる兵士をまとめ上げて、最後の誇りを抱いて死ねる場所作って、背後でおびえる連中助けるための時間稼いで、それなのに、」


敗残兵をまとめ上げ、何とか軍の体裁をとって要塞に立てこもって背後の街を守る。どんな将校もできなかったことを、たかだが一回の大佐がやって、背後の数万の民を救った義姉さんが、罪に問われるのは間違っている。たとえ本人がそれを肯定していても。俺だけは否定させてもらう。


「責任取るのは逃げた上の連中。とらなかった尻拭いすべきなのは」


脳裏に浮かぶ男の顔は怒っていた。まあ、こんな考え、あいつは嫌うだろう。


「そこまで必死に戦った義姉さんの大事な兄貴を、守れなかった俺で十分なんだよ」


脳裏に浮かぶ肉親の顔。たぶんあの世で俺に怒っているだろうがひとこと言いたい。


そもそもてめぇが死ななきゃよかったことじゃねぇかと。


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