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何もない哨戒

日曜更新にします。

どれぐらいそこで蹲っていただろうか

何とか気合を入れて布団に倒れ込む。

だが、寝るわけにはいかない。


「ああ~あと一時間も無いやん」


夕刻の出撃が迫っていた。


いきますかねぇ・・・・


五分もせずに起き上がる。


その瞬間視界がゆがむ。


「・・・・・・・っ」


強烈な頭痛、吐き気、けだるさでふらりと倒れそうになるのを、なんとか手をついて止める。何度か経験した感覚。むせ返るような感情が溢れる感覚。


気持ち悪い感覚だ


――――それで―はいいのか?―――


「・・・・・・・うっせえ・・・・黙れよ」



――――だろ?―――なん――それは、守―――――ある――か?


とぎれとぎれの言葉を遮る様に、頭を振る。その瞬間頭痛も、吐き気もけだるさも吹きとんでいつもの感覚を取り戻す。


「・・・・・・黙れってのくそあたまがぁ!」


頭に響く声に俺は憎々しげに叫んだ。


実際は途切れた声は聞こえていた。


だけどそれを頭で理解したくなかったのだ。


ドロドロで汚れきったその言葉を。







とまあ、そんなくだらないことはさておき。


コクピットに座るころには、出撃まで残り三十分。すでに準備は完了してある。


「・・・・・・うん、足もおっけと」


これがあの子だったら、やれセンサーがどうだ照準がどうだと、一、二時間は注文を付けるだろう。まあ、こっちはそんな精密射撃なんぞできないから前に適当に弾丸ばらまいてくれる銃ならそれでいい。


親友からの通信は入る。


「はいはい、こちら二番機」


『姉御はなんて?』


少し緊張した声、まあ、安心してほしいので簡潔に答える。


「とりあえずは了承。だけどこちらから各隊に働きかけてくれとよ」


『そうか、じゃあ、隊長たちには私からはなしてくる。相棒は?』


「・・・・まあ、とりあえずいくつか動いておくかな・・・・・後けっこう時間あるな、親友は各隊員のチェック頼むぞ。俺は少し寝る。まあ5分前によろしく」


『おいまて・・・・・・まあいい、了解。通信は切るんじゃないぞ』 


「へいへい」



出撃していつものように哨戒ポイントで機体を待機させる。辺りは一面の銀世界。雪は小ぶり。視界は多少悪いが、それでも問題は無い。


化物はレーダーに引っかからない。いや、厳密には引っかかりにくいといった所か、各種レーダーに頼るよりも肉眼やモニターで確認した方が確実で、よほど接近しない限りは明確な数をレーダーで観測する事はできないだろう。


実際自分らの前方にもいくつかカメラが設置されている。それで敵を発見し、数を推察、数が少ないなら待機している俺らが展開し殲滅。多ければ足止めしつつ基地で増援部隊の準備となる。そうなるのは、地形的にこの場所が防衛に優れている事と、三つの道から侵攻していた化物たちが一気に基地に押し寄せない工夫でもある。


例えば同時に三方向から攻撃されても、一方を後退させ、基地前まで敵を引き付けて叩くといったように、同時攻撃の時間をずらすことで、数の暴力を抑えることができる。まあ、待機されたとしても他二方向は抑えをしっかりしてるので、その待機してる化物に全力であたれる。


そんなこんなで待機していると、いくつかの光点が自分のすぐ近くに展開している。その数4つ。まあ恐らく、俺が指揮する小隊の連中だろう。機体番号を確認し、それが当たっていることを確認。


モニターの四つの光点には【灘良】という文字。

大鞍重工が開発した民間企業初の多脚騎士【奉戒型】。その系統を受け継ぐ【玖朔型】の後継機であり。今現在の真那国の主力機の一つである機体だ。はっきり言って、俺の玖朔よりよっぽど性能が優れている機体である。


「・・・・・・隊長のところに戻れ、ここは自分で大丈夫だ」


ちょいときつめの口調。嫌いというわけではないが、必要以上に会話をしようとも思わないので、自然ときつくなってしまうのはしょうがないだろう。


『いえ・・・・隊長の命なので、よろしくお願いします』


にべ無く断られる。まあ、隊長の命令なら従うしかない。と納得する


「了解、まあ、勝手に先行しないなら好きにしていいさ」


『はっ!』


それっきり無言。嫌われているわけじゃないだろうが、別段親しいといったわけじゃないからこんなもんだろう。


何で隊長や俺が旧式機に乗っているのか?それは簡単に言えば、敗残兵と乗っていた機体がそのままの状態で再編成されたからである。自分の身を守ってきた兵器を取り上げられて旧式の機体をあてがったらどう思うか、考えれば自ずと今乗っている機体を使うというのが当然だろう。少なくとも隊長ならいいのに乗れよとは思うが、元々存在無い機体で数を誤魔化しているのだから、しょうがないともいえる。


『大尉殿、一つ質問よろしいでしょうか?』


30分経ったか経たないか、そんな時間に急に話を振られて、正直驚く。


「ん?」


『大尉殿は我々が信用できませんか?』


通信機の声は固い。緊張しているのか声も震えている。


「・・・・・・」


めんどい質問来たよ・・・どうするよこれ。


言いたいことはわかる。そもそも、こいつらを使わないで単独行動しかしていないのだから、言いたいことは非常によくわかる。


「・・・・・・腕前はお前らの方が上だろう?実力は認めているよ」


事実、俺は部隊の中では実力は中の下ぐらいだろう。まあ、他の本土の連中の部隊なら中の上か、上の下ぐらいの実力はあるとは思うが、実戦経験を繰り返し、練兵されたこの部隊で、自分が平均以下だってのは嫌でもわかる。


『いえ、そう言う事を言ってるわけじゃありません!・・・・我々は、隊長とあなたに助けられた・・・・・・恩人に危険な事をさせ続けるというのは』


「俺は、別にお前ら助けたつもりねぇぞ?見捨てるつもり満々だったが?」


それは事実だ。なぜなら目の前のこいつらを前に、隊長にこう言っていたのだ。

敵から逃げる為に見捨てるべきだと。


それは通信を聴いていただろう。こいつらだってわかっているだろうに


『・・・・・・それでも、です』


含むようなこと言われても、俺は全然身に覚えはない。


「・・・言っとくが、隊長命令と、上官の指示には従う。最低限のルールの一つだな?」


だから、めんどくさいので、俺は全くこいつらの意を飲む気はさらさらないというように答える。


『・・・・・・』


「じゃあ、黙って従ってろ。命令だ」


『!・・・・・・』


通信先で息をのまれても、こっちはこれ以上問答する気も無い。


「わかったな」


正直、こいつらを率いる立場としては、問題だらけだろうが、そう言って俺は質問を打ち消した。正直、自分にこいつらの指揮は無理だと、出撃する度に思う。


そもそも何でおれに部下がいるかというと、話は少し長くなるがこういうことだ。




まず基本的に部隊は4機で1小隊、5小隊で1部隊が主流で、その20機の中に隊長がいるのが普通なのだが、俺と隊長の機体は、元々が廃棄品に近い物だったから、書類上放棄したことにする事で存在しない2機分余裕がある。もともと部隊設立で20機来ることは決まっていたので、俺が義姉さんに頼んで見逃してもらったのだ。


まあ、それはさておき、部隊はそういう風に分けられているが、うちの部隊は役目事にも分けられている。


例えば隊長が率いる3小隊、これが『主攻』と呼ばれる部隊で、基本的に隊長の指示にしたがう。基本的には【灘良型】【村正型】、【炎舞型】の混成部隊である。敗残兵らしく、統一感のない部隊だ。


俺が率いる1小隊、これは『助攻』とよばれる部隊で、味方の支援や敵の妨害を行う部隊ということになっている。俺と協力する事が前提なので後継機であり、特徴が似通った【灘良型】のみで構成されている。


そしてあの子が所属する(隊長は別の人物、ちなみに目立たないけどいいおっさん)『射攻』という狙撃を主任務にしている1小隊。砲撃戦、狙撃戦に優れている反面、接近戦では鉄の棺桶と呼ばれる【木楼型】で構成されている。


そんな感じで構成されているのだが、実際のところは、俺は単独行動が得意なので指揮権は隊長が引き継ぐのが毎度の流れとなっている。


はっきり言ってしまえば、俺は部隊を率いることは嫌いだ。責任が持てないし、そもそもあいつが守りたい者を、危ないところに自分の意志で連れて行くことなどできるとは思えない。


たぶん。俺は守れないから。


特に何かあるわけでもない哨戒任務

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