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義姉さん

本編にもどります

いや、本当に嫌いじゃないのよ?


俺は誰とでもなく思いつつ。ドアの前で緊張した身体をゆする様に深呼吸する。


「・・・・・・・・・・・・・・うん」


今からでも親友に、と思ってしまうが、それを我慢する。どうせ、行かなかったろ後悔するんだ。


後悔なんぞあったら、死ぬときに納得できないだろう。


ノックして、ドアを開ける。書斎のような雰囲気のある将校の私室には、古びているがいいものとわかる木目の執務机の上で、パソコンを操作していた大佐が、顔を上げてこちらを一瞥しすぐにパソコンに視線を戻し・・・と思わせてびっくりしたようにこちらを二度見する。


「ああ、ごくろ・・・!・・・あ、君か」


そう言ってこちらに向かって歩いてくる。


「ハッ!・・・第31部隊副隊ちょ・・・・」


その言葉を遮る様に手で制される。


「いらんよ。君とはそういう関係でいたくはない」


そう言ってにこやかに笑う。普段の冷酷ともいえる美男子然とした表情はそこにはなく、朗らかで優しげな女性のほほえみ。


「・・・いえ、これから言うことはそういった話になりますから」



普段は男に見まごうほどの覇気と表情なのに、不意にこういった表情を向けられると、とてもずるい気がする。


「それでもいらないよ。大事な義弟(ぎてい)の頼み事だ、そりゃ、軍として冷静に判断するが、別に口調を変える必要はあるまい」


「・・・・・・・善処します義姉(あね)さん」


義弟、義姉さん、お互い微妙に距離のあるその言葉を言ったとき、お互いに一瞬同じ男の顔が浮かんだのだろう。お互いに苦笑する。


「ふふ・・・・・・あいつが笑ってるな」


「ええ、間違いなく」


目の前の人とをつなぐ、今は亡き家族のことを少し思い出す。間違いなくあの人なら笑っているだろう。なにを、堅くなってるんだがわからないと、俺の頭をばしばし叩いて、、目の前の女性をからかいつつ、楽しげに。


「それで、君が私に会いに来るってことは、さっきのデータのことかな?恐らく、攻撃が近いことに関してだと思うが」


そう言って小さく笑い、続ける。


「ああ、逃げるなら個人的に手を貸そうか?なに、優先的にチケット配られる整備兵帰還リストをちょいといじれば」


「おい!軍として冷静な判断はどうなった!?」


俺の言葉にくすくすと笑う。


「はは、冗談だよ。さすがに今ぬけられると困る・・・・・・・それに、君が、あの坊やを棄てて逃げるとは思えない・・・ほんとうに、いい男になったよお前らは」


そう言って肩をポンッと叩かれる。一瞬、その顔がいつもの冷静な大佐の顔になる。


「だが、本当にやばくなったら逃げろ。船は用意してやる。責任も取ってやる。業も背負ってやる。坊やと一緒に逃げろ、こんなふざけたくだらない馬鹿どもの後始末など気にする必要はない。お前らに責任がないのは私が知っているし、責任を取るべきなのは、逃げた無能どもと、それを挽回できない私達だ」


その言葉に、俺は一瞬言葉に詰まる。だが、


「・・・・・・・心遣い感謝します」


まあ、あの頑固な親友が民を棄てて逃げるわけないから行くことは無いだろう。行くとしたら民の避難が終わって、兵士が引き上げる最後の船だろうし、そもそも、そんなものは来ないだろう。


「ははは、頑固だね、君と君の親友君は、本当に・・・」


なにを楽しげに笑ってるんだかこの人は


「それで、親友の考えですが」


先ほどの話を伝える。話が進むたびに大佐の顔が難しい顔で頷いていく。


「・・・というわけです」


「・・・なるほど、まあ、私のところに来る時点で厄介事だとは思ったけどな」


難しいと、だが、やらないとどうにもならないことはわかっているのだ。


「だが、私はやる価値はあると思う・・・・他の連中はどうだがって感じだがな」


そう言ってため息。


「今からでもあいつらの言葉が聞こえるよ。やれ兵士を温存しろ、時間を稼ぐのが優先だ。無駄な損失を出すわけにはいかない。責任をとれるのですか?とな」


「・・・・・・まあ、わからないでもないですがね」


「だが、引き籠っていては敵の準備が完了して苦戦は免れん。ならば、たとえ不評を買うとしても、動くべきだろうねここは」


そう言って義姉さんは、まっすぐにこちらを見る。


「隊長に伝えてくれ、お前たちの意見はわかった。他の隊にも伝えておくが、できれば君たちからも働きかけてくれ、と。それから、攻撃の指揮は君に任せるとも」


その言葉に重々しく頷く。


部屋を出て自室に戻り、溜息を吐く。


ドアを背に崩れる様に、額を片手で押さえ、小さく脱力したまま。座る。


「兄貴を思い出すときは一瞬だけ、ほんの一瞬だけ」


思い出す。笑顔で楽しげに受け応えしていた義姉さん。


「なに悲しげな眼で笑ってんだよ・・・・・」


俺が、親友たち以外で唯一護ろうと誓った人がそんなふうに笑うのを見なきゃいけないから。



だから、会いたくないのだ。





あらすじだけだと物足らないから、足していかないとなぁと思いつつ足せないもどかしさ

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