表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

op07:隻腕と古の剣


 大槍バハムートの穂先がフェンリアの左頬を掠め、切り裂かれたダークブラウンの髪が舞う。

 突き出したバハムートで薙ぐウッドの動きを、ソードブレーカーで受け止めたフェンリアの頬から血が一筋流れた。

つるぎの神官の名に恥じぬ動きだな」

「嫌味にしか聞こえないわね」

「人が褒めているのだ。素直に喜べばよかろう」

 フェンリアがバハムートを渾身の力で押し返す。

灼眼しゃくがんの鬼人なんて、ふたつ名の割にはおしゃべりな男ね。男は寡黙なくらいがセクシーよ」

「その軽口どこまで続くか楽しみだ」

 ウッドが腰を落としバハムートを肩の高さで構える。フェンリアも剣を構える。

「奥義! 双龍撃そうりゅうげき!」

「不可視の盾を!」

 ウッドの大技の発動と同時に、フェンリアが魔法を展開する。次の瞬間、周囲を衝撃波が襲った。周囲を照らし出していたかがり火もき消え、周囲に闇が落ちる。

「光よ。闇を退けよ」

 ジェニスの声と共に、コモンと呼ばれるアイテムを利用した魔法の光が闇を照らし出す。

 照らし出された闇の中から、肩で息をして剣を杖代わりに立つフェンリアと、涼しい顔をしたウッドの姿が浮かぶ。

 奥義双龍撃と魔法の盾の激突、ウッドの双龍撃に軍配があがったようだ。

「ジェニス、覚悟は出来たのか」

 ウッドがフェンリアから目を離さずにジェニスに問う。

「ウッド兄さん。僕は戦って生き残ることにしたんだ」

「ちょっと待ちなさい。そんな無茶を言わないで」

 フェンリアが慌てて口を挟む。今のジェニスは普通に動くこともままならない状態なのだ。そしてその相手は、『灼眼の鬼人』。戦う前から結果は見えている。

「元々、我ら兄弟の問題。フェンリア殿には口出ししないでもらおうか」

「フェンリアさん、すみません。しかし、決着は自分でつけたいのです」

 どうも、止めるのは不可能なようだ。フェンリアはため息を吐く。

「ミレイに、支えられている状態で言うセリフではないわよ」

 フェンリアはウッドに向き直る。

「すこし、時間をもらえないかしら? それとも、武器を持たない人間をなぶるのが趣味かしら?」

「5分待とう。それでよいな」

「充分よ。ミレイ、2人ほど連れて私の荷物から一番大きい剣を持ってきて」

 ミレイが頷いて駆けていく。

「ほら、貴方はここに座って、まったく無茶するんだから……」

 フェンリアはジェニスの身体に手をかざす。

「ガイアよ。戦いに赴く者に、癒しの力を」

 フェンリアの手が輝き、癒しの魔法が発動する。

「どう?」

 ジェニスは身体を動かしてみる。

「大分、動くようになりました。ありがとうございます」

「でも好調とも言えないでしょ。魔法も完璧な力じゃないから、その辺は我慢して」

「いえ、充分です」

 ミレイ達が3人がかりで2.5mはある、古ぼけた大剣を運んできた。

「何ですか? このごつい剣は?」

いにしえの神のつるぎ。旅の途中にある遺跡で見つけたのだけど、私は剣に選ばれなかった。貴方ならどうかな。と思って……」

フェンリアは剣にまかれた布を解く。ジェニスは剣から立ち上る魔力に息を呑んだ。

「どうすればいいのですか?」

「持ってみればわかるわ」

 ジェニスは恐る恐る剣の柄を握った。すると剣があわい光を放つ。剣を持ち上げてみると軽々と持ち上がった。

「か、軽い」

「剣に認められたようね。めいは『天羽々あめのはばきり』。私にできるのはここまで…… 後はジェニス殿次第」

「フェンリアさん、充分です」

 ジェニスは剣を握り直し立ち上がった。


読んでくれた方に感謝。

今日は早く帰れたので更新できました。

なんやかんやでこのお話も残り5部くらいです。毎日更新できたらあと5日分。がんばろう。


さて、本作でいにしえの神のつるぎと設定している『天羽々あめのはばきり』は、日本神話に登場する剣です。

須佐之男命すさのおのみこと八岐大蛇やまたのおろち 退治に使用した剣で、剣種としては十拳剣、柄の部分が十握ある剣です。

須佐之男命すさのおのみことの前の所有者であるイザナギが子である火之迦具土神ほのかぐつちのかみ を斬殺した剣でもあります。

形状自体は実物も無く記録も無いため不明ですが、柄の長さから大剣ではなかろうかと推測できます。

名前の意味は、あめのが尊称、羽々(はば)が大蛇を示し、『大蛇を斬った剣』という意味になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ