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op03:ジェニスとフェンリア

 

「うっ……」

 体が重い。意識を取り戻したジェニスは、身体を起こそうとした。左腕をついて起き上がろうとしたのだが肘から先がなかった。そこで、兄の奥義である双竜撃を喰らったのを思い出した。以前、兄の双竜撃が岩を粉々に切り裂くのを見たことがある。あれではどんな重装甲の鎧でも意味は無い。腕1本で済んだのは奇跡としか言いようが無い。

「気がついた?」

 ダークブラウンの髪をした神官がジェニスに声をかけた。胸に世界樹のホーリーシンボルをぶら下げている。ガイア教の神官だ。

「血が足りていないから、余り動かない方がいいわよ。あ、私はフェンリア=ヒルデガルド。ガイア教の宣教師。神官戦士でもあるわ」

「ジェニス。ジェニス=ハスだ。貴女か助けてくれたのか?」

 フェンリアは首を横に振り、ジェニスのすぐ横を指さした。そこには、ジェニスの寝ているベッドに力尽きたようにもたれかかって眠る丸いトンボメガネをした娘がいた。

「その娘が滝壷に沈んでいた貴方を見つけて引き上げたの。命の恩人なんだから起きたら礼を言ってあげて」

 フェンリアは寝ている娘に毛布をかけながら言った。

「傷はすべて塞いだけど、左腕はどうしようもないわ。それから、貴方も魔族ね。すまないと思ったけど寝ている間に魔法でスキャンさせてもらったわ。能力は魔力の力への変換。能力は使っていくうちに力加減がわかってくるでしょう。魔法をマスターできたら隻腕の魔法戦士としてやっていけるわよ」

 その言葉を聞いて、ジェニスは自嘲気味に笑う。

「隻腕でも…… 言いにくい事を、はっきり言いますね」

「ええ、どのように言っても現実は変わらないもの。貴方がこれからどのように生きるにしろ、他人である私には何の責任も取れないし、取る必要も無い。自分の人生は自分で責任取らなきゃ。それに、その娘もこの村の人たちも魔族よ。その事で自分は不幸です。なんて顔したら考え改めるまでぶん殴ってやるから」

 とんでもない事を、さらりと言うフェンリア。

「貴女。本当に神官ですか? でも下手な慰めよりはいいですね。体力が戻るまで今後の身のふり方でも考えますよ。殴られるのは御免ですから」

 フェンリアがニコリと笑った。夏の太陽のようなスカッとした笑顔だ。

「よろしい。それじゃ大人しく寝ていなさい。夕食は運んできてあげるから。それから村中、伝染病が流行っているから、体力が戻るまでこの家から出ないこと。いいわね?」

 フェンリアは念を押すとミレイの家を出た。正直、ジェニスだけにかまっているわけにはいかないのだ。

 ほとんどの者が回復に向かっているとはいえ、まだ予断を許さない者もいる。

「今日も徹夜かしら……」

 お肌によくないのよね。等と考えながらフェンリアは、村の広場に向かい歩き出した。


「推して参る!」という感じの勢いのフェンリアです。単に推参と書くよりも、こう書くと何かぶち壊しそうな感じがするから素敵(笑

この娘は、私の中ではいつもこのノリなんですよ。書いてて結構楽しい娘です。


次回はジェニスとミレイのお話になります。



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