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op11:それぞれの道と新たな旅立ちと

「そろそろかな?」

 フェンリアは、村の広場の隅に腰掛け建築途中の教会を眺めていた。そこでは、ガイア教団から派遣された神官達と一緒にやってきた大工達が忙しそうに働いている。

 フェンリアがこの村にやってきてすでに3週間が経っている。疫病を患った村人達も全快したし、布教の方も引継ぎが済んでいる。大怪我を負ったジェニスもあの天羽々あめのはばきりの大剣を振れるほどまで回復している。

「暇…… ねぇ」 

 フェンリアはため息をつく。

「フェンリア様」

 そんなフェンリアにミレイが声を掛ける。

「ん、ミレイちゃんか。ジェニス殿は一緒じゃないの?」

「いくらなんでも、いつも一緒じゃありませんよ」

「嘘っ」

 今まで眠そうにしていたフェンリアの目が、驚きに見開かれる。

「フェンリア様〜、いじめないで下さい」

 フェンリアは少しだけ真面目な顔をする。

「それで、本当の所どうなの?」

「ジェニスさんの怪我が、もう少し回復したらふたりでガーベラに行こうかと思っています」

 ガーベラ…… 確か、その地で魔王を名乗る者が建国宣言をしたはずだ。大陸各地から虐げられた魔族が集まっていると聞いた。つい先月の事だ。

「魔王軍に参加するの?」

「ジェニスさんは、魔族でも安心して暮らせる世の中を作りたいそうです。私も、そのお手伝いをしたい…… 本当に微力ですけどね」

 フェンリアは寂しげに笑った。

「あなたたちが決めたことなら、私は何も言わない。それに、私は魔族ではないし、あなた達みたいに迫害された事も無いから」

「いいえ、フェンリア様は」

 フェンリアはミレイの言葉を遮った。

「でも覚えておいて、戦うべき時とそうでない時を見極めて。戦わないと手に入らないものもあるけど、基本的に戦は憎しみしか生まない」

「フェンリア様……」

「自分の正義の為に、あちらこちらで剣を振るっている私が言えることではないけどね。おかげで『つるぎの神官』というふたつ名まで付いちゃったわよ」

 フェンリアの、寂しげな笑みを浮かべた横顔は美しかった。




 3日後、旅装に身を包んだフェンリアの姿が村の入り口にあった。村人が全員見送りに来ていた。

 中には、涙を流しながら引きとめようとした者までいる。

「皆さん、ありがとうございました」

 見送りに来てくれた人々に、フェンリアは頭を下げた。

「いいえ、貴女がいらしてくれなければ、今頃村はどうなっておったことか」

 村長は恐縮して答えた。この村にたどり着いたときの反応と比べるべくも無いが、極限状態であったとはいえ、わずか3週間の間にそれだけの信頼関係を築いていた。

「フェンリアさん、ありがとうございました」

 そう言った後、ジェニスが握手を求めた。フェンリアは、ジェニスの右手を握り一言、「御武運を」と言って笑った。

 昨夜、ジェニスはフェンリアに一緒にガーベラに行かないかと誘ったのだが、教団から誰かが派遣されるだろうと、その誘いを断った。フェンリアは当初の予定通り辺境の地の村々を回るつもりだ。

「フェンリア様、これを持っていってください」

ミレイが包みを差し出す。

「お弁当?」

「はい。こんな事しかできないですけど」

「そんなことないわよ。ありがたくもらうわ。そうそう、ミレイ。ジェニス殿を放しちゃだめよ。でないとどこかに飛んでいっちゃうからね」

「フェ、フェンリア様、な、な、なにを、い、言っているんですか」

 顔を真っ赤にして、どもるミレイ。その様子に周りから笑い声が起こる。

「それでは、またお会いしましょう。それまで皆様にガイア様のご加護がありますように」

 別れの挨拶ではなく。再会の約束を残しフェンリアは足を踏み出す。村人たちはフェンリアの姿が見えなくなるまで手を振っていた。

 剣の神官のふたつ名を持つ女性は、新たな旅路へと足を踏み出した。








最後までお付き合いいただきありがとうございました。


外伝は第3話(タイトルは『剣の神官と純白の悪魔』)のプロットもできているのですが、こうも無反応だとどうしようかと思っていたりします。(外伝やめて、投稿作品数の少ないSFで新連載とか)

「はっきり言ってつまらないです」と言われれば、外伝の連載やめようかなと思わなくも無いのですが反応自体無いですし、かと言って「面白いです」という反応もないので今後の方針を決めかねています。

読者が反応に困る中途半端な作品を書く私が悪いのだろう。たぶん(笑

とりあえず、3話目は置いておいて、本編を更新していかないとダメかな。とりあえず3話目を更新するとしても年明けになると思います。


もし、お付き合いしていただけるのであれば、本編もよろしくお願いします。

では、またどこかの物語でお会いしましょう。


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