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op10:義務と本心と


 薄暗い部屋の中で、ウッドは旅装を整える。

 傷は完全には癒えてはいないが、戦場で鍛えた身体だ。王都までの旅にも充分耐えられる。

 愛槍『バハムート』を手にとると、扉を開き外に出た。外は朝靄で視界が悪く隠れて村を出るには丁度いい。

 村の出入り口まで来ると人影が見えた。ガイア教の神官服を着た、最近見慣れた女性だ。名をフェンリア=ヒルデガルドという。

「挨拶も無いなんて、命の恩人に失礼ね」

「お前が勝手にやったことだ」

 ウッドは、そっけなく答える。

「ジェニス殿には何も?」

「会うと約束を違えることになりそうだ。とりあえず王都に戻ってから、聖地アクレセレイの教団本部に戻る」

 ウッドは冷笑を浮かべながら言った。

「本当にジェニスを殺すつもりだったの?」

 フェンリアは問い掛けた。

「あの一騎討ち、俺が手を抜いたと思うのか?」

「全然、だから聞いているのよ」

「フッ、そうだな。俺には当主として、一族の名誉と誇りを守らねばならん義務がある。そのためなら弟の命でも、自分の命でも差し出す。だが、今回の事はお前、いや、フェンリア殿には感謝している」

 フェンリアは目を見開いた。

「まさか、あなたからそんな言葉が聞けるとは思わなかったわ」

「ちゃかすな。ジェニスのヤツを殺そうとした事も本心だが、あいつが助かってホッとしている自分がいるのも本心だ。一応、あいつが赤ん坊の頃から一緒だったからな」

「私には貴族の世界はわからないわね。ジェニス殿を殺すのが嫌ならあんなに必死に追いかけなければ良かったのよ。谷に転落して死亡とでも報告しておけば問題ないじゃない」

 フェンリアは肩をすくめて、あきれたように言う。

「フェンリア殿ならどうする? なんらかの理由で妹のルノア殿が、ガイア教団から追われることになったら?」

「当然、ルノアを守るわ。教団? ガイア様? 関係ない。私にとってはルノアの方が大事。世界を敵に回しても私はルノアを守る」

 フェンリアは当然のように言い放つが、この場にガイア教の関係者が居合わせたら青くなったことだろう。

「はっきりと言うな。その真っ直ぐさ、うらやましくは思うが俺にはできん。ではさらばだ」

 ウッドは、バハムートを抱えなおすと歩き出す。

「ちょっと待って、ジェニス殿に何か伝える事はない?」

 いくばかりかの沈黙の後、ウッドは口を開いた。

「俺の前には二度と現れるな。今度、俺の前に現われたら殺す。それから、つよくなった。と」

「わかった、必ず伝えるわ。ウッド殿、今度会われるときまで御武運を」

「フッ、そうだな。なるべくなら味方同士でな」

 ウッドは、振り返ることも無く村を出て行く。

 そして、3年の月日の後、ウッドはジェニスとフェンリアの2人と戦場で再会する。ジェニスとは敵同士として、フェンリアとは味方として。


残り後1話です。最終話まで更新して今日で完結させてしまいます。


そういえばそれぞれのキャラの本編での登場箇所ですが、ジェニス君はすでに登場済みで、ミレイちゃんが1章後編、フェンリアが2章中盤、ウッドが3章中盤です。

まだ2章3章っていつになるんだろうというレベルですけど。

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