クリスマスってなんかエロイよね
さすがに度が過ぎたようで、俺への態度に警戒心がプラスされてしまったようだ。とはいえ、どこか警戒心が少なかったこの子は、これぐらいがちょうどいいと言えばちょうどいいのかもしれない。警戒心を足してあげるなんて、俺ってばマジ有能。
まぁそんなこんなで、彼氏へのプレゼントを選ぶべく、俺たちは店内を見て回ることにした。俺としては木村へのプレゼントはそこそこ目安というか予定が立っていることもあり、もうこの子のプレゼントを決めたら理由をつけて帰ろうかと思っていた。そのへんに木村がいるかもわからんし。どうして神出鬼没なんだよ。匠かよ。
今俺たちがいるのは食器やらなんやらが売っている日用品(キッチン関連)コーナー。俺自身は料理しないけど、こーゆーところを見るのは好きだ。包丁とかキッチンの便利グッズを見ると、ちょっと心がくすぐられる。特に『主婦が考えた便利グッズ!』なるものには夢を抱いてしまう。もしも俺が考えた最強のキッチングッズがバカ売れしたら働かなくていいのかと思うと、俺も頑張ってみようかなと思ってしまう。もちろん思ってしまうだけであって、考えても商品化やら特許やら申請やらでめんどくさそうなので却下である。
ふと、隣で真剣なまなざしで商品を見ているこの子は、一体彼氏に何をあげたいのか。目的があってこの辺にいたわけだし、ある程度は固まっているのだろう。
「なんか大雑把なジャンルでは決めてるの?」
「えっ? もうわかんなくなっちゃったので、私が欲しいものを見て回ろうかと」
こいつ、大丈夫か?
その『間違えても自分が貰うから大丈夫』みたいな考えはどっかの木村さんに通ずるものがある。もしかして女って生き物はみんなこうなのか? だとしたら、女の人怖い。
「その彼氏さんは料理する系男子?」
「いえ。しない系男子です」
「じゃあこんなフライパンは欲しくないんじゃない?」
「……そ、そうですよね。じゃあ食器にします」
『じゃあ』の意味が分からん。選択肢が狭すぎんだろ。そして欲しいものありすぎだろ。
「あのさぁ、ちょっと落ち着いて考えてみるべ? 彼氏さんに食器をあげたいわけ?」
「いえ……」
「じゃあ彼氏さんは何が欲しい、とかじゃなくて、君は何をあげたい? 何をあげて喜んでほしい?」
そうやって考えればプレゼントはすぐに決まる、ってなんかのドラマで言ってた。もう哲学だよな。最終的には鉄とボーキなのに。あ、コレ違うやつだわ。でも一番重要なのはバケツな。
「んー……」
また考え込む。ホントにノープランで来たというのが目に見える。ロフトを過信しすぎだ。はっ! ビックカメラとロフトが合体してるこのビルって、割と効率的? でもヨドバシ派な俺には無意味だ! HAHAHAHAHA!
考えがまとまったのか、あたりをキョロキョロと見回した。
「何かお探しかね?」
「えっと、手袋をあげようと思って」
「手袋とはこれいかに」
「手袋を持ってなくて、いつもポケットに手を入れているので、手袋にしようかと……。もしかして男の人って手袋ってつけなかったりします?」
どうなんだろ? 俺はどっちでもいいけど、歩きながらスマホいじれればそれでいい派かな。前に買ったスマホもいじれる手袋が残念仕様で、親指の画面に触れるところにちょうど縫い目がきてて、画面にタッチるるたびに人差し指でタッチしなければならなかったという残念仕様だったから、もうアレは信用しないことにした。
がしかし、そろそろ帰りたくなってきた病の俺は、そんな貴重な消費者の意見を言うこともなく、ただただ肯定するのであった。
「うん。いいんじゃない? じゃあ手袋コーナーに行こう」