クリスマスのお手伝いの仕方
どうやら私のせいでケンカ(?)が発展してしまったようなので、『困った人を見つけたら助けなさい』と私の育ての親である正親さんに言われた通りに、私はこの人を助けることにした。
でも結局私も手伝ってもらうことになるんだから、これはどうなのだろうか? まぁ深くは考えないことにした。
「ところで、何か買う予定だったんじゃないんですか?」
「まぁそうなんだけどさ。何買おうか考えてたわけです」
「私と一緒ですね!」
「そっちはアレでしょ? 愛しの彼氏に上げるプレゼントを選んでたわけでしょ? だったらさくさくーって決まるんじゃないの?」
「それが……」
うんぬんかんぬん。
怜央くんへの誕生日プレゼントネタが切れたことを打ち明けた。
「ほほう。これだからリア充は……」
「リア充?」
知らない言葉が出てきた。
「いや、なんでもない。こっちの話。じゃあ先にそっちのプレゼント買っちゃった方がいいんじゃない? 俺の方は……最悪無くても問題ないし」
「そんなことありません!!」
今の発言に私は思わず大きな声を出してしまった。この人も目を丸くしていた。
「ご、ごめんなさい。でも、恋人からプレゼントをもらって困る女子はいません! 少なくとも私は嬉しいです」
「お、おう。よっぽど好きなんすね」
その言葉に、私は恥ずかしくなってしまい、言葉を返せなかった。
そんな私を見て、彼は目を明後日の方向へと向けて、んーと考え込んだ。
「あいつ、俺からのプレゼントで喜んだことあったっけかぁ?」
「えぇ……」
そ、そんな人がいるのだろうか?
私はそのままの言葉で聞いてみた。
「そんな人いるんですか?」
「そりゃいるでしょ。俺はもらうのもあげるのも苦手だから、そーゆー催し物のプレゼントって言うのは無い方が嬉しい。気持ちだけで結構です、ってやつ」
「な、なんでぇ?」
「んー……よくあるじゃん。お返しのお返しってやつ。あれが嫌なんだよね。日本人っていう生き物は『やったらやり返す』って言う文化が良くも悪くも染みついちゃってるわけ。だからこそ『お返ししなきゃいけない』とか『なんちゃらしてもらったから』的なことが日常的になってるわけ。現にバレンタインデーのお返しのホワイトデーって言うのもあるわけじゃん。バレンタインデーとかホワイトデーとか、もうやめてほしいよな。お菓子会社の陰謀なんだから乗せられたら負けだっていうのに気が付かないもんなのかねぇ? だからクリスマスだって、静かーにケーキでも食べて、キリスト様の誕生を祝ってやればいいんだっての」
……そんなに大きな話だったっけ?
でも、それでも私はプレゼントをもらうのもあげるのも嬉しいから、その嬉しさを好きな人にも感じてほしいとは思う。でもこうやって思う人がいるなら、あげる人を選んだ方がいいのかなぁ。
「あー……」
そんなことを考えていると、彼が頭をポリポリとかきながら続けた。
「でも俺の考えは局地的な批判論であるからして、大多数の人はプレゼントを貰うと嬉しいんじゃないか? ましてや好きな人からってなると、さらに嬉しさ倍増、的な。パピコだって一人で食べるより二人で食べたほうがおいしいって言うじゃん?」
「えっ、それは初めて聞きました」
「うん。そう言う日もあるよね」
「?」
この人、時々難しいことを言うので、ちょっと難しいです。
「とにかくだ。君の彼氏へあげるプレゼントを考えよう。君の彼氏はどんな人なんだ?」
玲央くんの人物像か……。
「優しくて、落ち着いてて、頭が良いところ」
「ふむふむ。じゃあ悪いところは?」
「わ、悪いところ!?」
「もちろん。人間良いところと悪いところは表裏一体さ」
ニヤニヤしながら聞いてきました。
悪いところ……うーん……
私はたっぷり30秒は考えたでしょう。
そしてこう言いました。
「ありません!」