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開始五分で帰りたくなりました

 視界が白い光に包まれて数秒。ふわふわと浮いていた脚が石畳に着くのを感じ、光が徐々に視界から消えていった。


(凄っ……)


 視界が開けた私の目に飛び込んできたのは数え切れないぐらいの人、人、人、人、人、人、人、人……。背中や腰に武器を携えている人、石畳の上に布を広げて露店を構えている人、重々しい鎧を着込んで何か話し合ってる人等がこれでもかと言うぐらい溢れ返っていた。


 マップで確認してみると、今私が居るの始まりの街"パーク"の東広場。そう言えば、この街の東と西に大きな広場があって、初心者はどちらかにランダムで転送されるんだっけ? 近くに兄貴が居ないのを見ると、どうやら西側に降り立ったみたいね。


 次にステータスを確認しよう。


【~ステータス~】

《PL》

  ニタ

《Job》

  調教師:Lv1/弓使い:Lv1

《taste》

  鞭捌き:Lv1/(ふくろう)の眼光:Lv1/体術:Lv1/鑑定:Lv1/毛繕い:Lv1/曲芸:Lv1/錬金:Lv1/製薬:Lv1/料理:Lv1/猫の気持ち:Lv1

《weapon》

  新人調教師の鞭/新人弓使いの弓

《armor》

  頭:なし

  身体:新人調教師の胸当て

  腕:新人調教師の籠手

  腰:新人調教師の腰巻き

  足:新人調教師のブーツ



 全て初期装備だ。見た目はちょっと簡素だけど、初期装備だから仕方がない。


 そんなことを考えていると、不意に頭の中に軽い電子音が鳴り出し、目の前にメッセージマークが現れる。急いでそれをタップすると、そこからウィンドゥが展開される。


『妹よ? 無事にログイン出来たか?』


 差出人は『雪華』って……。兄貴かな? 一応名前『雪』だし。考えられなくもないけど……。まぁ私のPL知ってるの兄貴しか居ないから多分そうなんだけど。取り敢えず返信しますか。


『無事にログインして、今東広場に居る』


 空中に浮かぶキーボードって結構タイプしにくい、何て感想を漏らしながら何とかそう打ち終わり、返信する。すると、10秒もしないうちに返ってきた。早っ。


『了解だ。出来ることなら我が向かいたいのだが、今我が同志を見つけてちょっと行けそうにない。代わりにこっちに来てくれないか? 我は噴水近くに居る赤髪の長剣使いだ。すまんがよろしく頼む』


 長っ。たった10秒でこれだけの量を打ったってこと? 流石ネトゲ廃人。同志ってことは、同じネトゲ仲間の人かな。まぁ知り合いに会ったら動けないのも無理ないか。取り敢えず、東広場で赤髪の長剣使いに声をかければいいのね。


 マップを頼りに西広場へと続く通りを歩いていく道中、何故か周りのプレイヤーからの視線が飛んでくるんきたんだけど何でかしら? その視線の方を見るとそこに居たプレイヤーが一斉に目線を逸らすんだけど。私の格好何処か変なのかしら? そんなことを思いながら歩いていると、不意に開けた場所に着いた。


 一歩踏み出すと『西広場』と言うウィンドゥが目の前に表示される。どうやら目的地に着いたみたいだ。さて、肝心の赤髪プレイヤーを探さなくちゃ。って思って辺りを見回してたらあっさり見つかった。


 噴水の近くに赤髪の皮の鎧を着たプレイヤーが周りにいるプレイヤーたちと談笑しているのが見えた。おそらくあれだろう。こちらも東同様人でごった返してるから近付くのも一苦労だ。


「あニャ……あニャき!!」


 ヤバい、噛んじゃった。ゲームの中で噛んじゃったよ私。地味に恥ずかしいなこの野郎。と、そんなことを思っていたら、こちらに気付いた兄貴が大きく手を振ってきた。


「おお!! いも……と?」


 呼び掛けに答えた兄貴の表情が笑みから驚きへと変わっていった。兄貴の顔に不審に思いつつも、取り敢えず人ごみからは脱出し兄貴の元へと向かう。私が近づいてきたことにより周りにいたプレイヤー達も私を見るが、見た瞬間兄貴と同じような顔になってしまった。そんなに変なの? 本気で凹むんだけど。



「そんなに変ニャの? ってあれニャ?」


 ……あれ? なんか語尾おかしくなかった? 『ニャの』って言ったよね確実に。でも語尾に『にゃ』付けるなんて一切意識してないよ。


「あれ、おかしいニャ? ニャ!?」


 ほらまた!! また『ニャ』って言った。絶対おかしいって!!


「あ、あの……。い、妹よ。それは何のつもりだ?」

「え、いニャ!? 別に語尾を意識してやってるつもりじゃないニャ!? なんか勝手に――」

「そうじゃなくて」


 私の言葉を断ち切るように発せられた声にビクッとなる。その姿に「いやそれもあるけど……」と口を濁しながら首を捻る兄貴は私を、正確には私の頭を指差した。



「その耳はなんなのだ?」


 ……はい? ……耳? え、どういうこと? 耳ならここにありますけど? と思いながら耳を触ると、兄貴は違うと首を振って、再度指を指す。


「そっちではなく、その頭に生えている猫耳(・・)はなんなのだ?」


 ……はい? え、何どゆこと? 頭に生えている猫耳って……そんなバカな。私キャラメイクで顔や身体一切弄って無いから現実とそのままの格好でしょ? 何で現実で生えてない耳、しかも猫耳が生えているのよ~。と言いながら念のため兄貴が指さす頭に手を持っていく。


 すると、指先にフワフワとした何かが触れ、同時に頭に変な違和感を感じた。指先の感触に、さらに両腕を使って頭にあるフワフワしたものを掴んだり、揉んだり、引っ張ったりする。それと比例するように頭に掴まれる感触、揉まれる感触、引っ張られる感触と痛みを感じた。


「……ニャ?」


 無意識に漏れた言葉がおかしかったことなど気にしていられない。私の頭は自分の身に起こった異変についていくだけで精いっぱいだった。頭に意識を集中したことにより両腕が頭から滑り落ちる。すると、また何かフワフワしたものに触れ、同時にお尻に違和感を感じた。


 恐る恐る下を向くと、黄色とオレンジの縞模様の細長くフワフワしたもの―――猫の尻尾が私の腰辺りから生えていた。


 またもや頭がフリーズ。頭に引き続き今度は尻尾? いったい何が起こっているのだ?


 次々に起こる謎の現象に頭が追い付かなくなった私の肩が叩かれた。振り向くと、優しそうな笑みを浮かべた兄貴が居た。その後ろには同じような笑みを浮かべている兄貴の同志さんたちも居る。


「取り敢えず……」


 兄貴が普段出さない透かした声(友人曰く、『超絶イケボ!!』)で囁くと、後ろに居た同志さんたちに顔を向けて大きく息を吸った。



「リアルおニャの子キターーーーーーー!!!!」

「「「「「リアルキターーーーーーー!!!!!」」」」」


 その時、一斉に羽ばたいた鳥達の鳴き声と共に、西広場にいた男たちの歓喜の雄たけびは青々とした空に幾重にも響き渡ったのであった。

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