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キャラメイクです。そして兄貴が変態すぎてツライorz

毎日更新ではありませんが、余裕があり次第更新していきます。

「……もう良いぞ妹よ」


 モヤモヤとした意識の中、兄貴の声と共に頭を持ち上げられる感覚。薄く目を開けるといつも目にする黄ばんだ天井が見えた。


「あれ? 寝ちゃってた?」

「まぁ一時間も寝そべっていては仕方がないだろう。だが、ギアへの記憶は完了したから安心しろ」


 眠気眼を擦ると自然と欠伸が出た。本当に寝入っていたみたい。と言うか、兄貴の横で寝入っていて何もされなかったことが不思議だ。そんな疑いの目を向けられているとも知らず、兄貴は背を向けていて、忙しなくVRギアを操作していた。


 今兄貴が言った『記憶』と言うのは、脳波の検査のこと。


 何でも、VRギアはプレイヤーの脳波を読み取らせてゲーム(あちら)に反映するらしく、事前に一時間程ギアを付けて自分の脳波を記憶させる必要があるのだ。勿論記憶させなくても出来なくはないが、動きがぎこちないとか操作しにくいなどの不具合が生じるだとか。


「よし、脳波の記録完了。これで操作に関しての不具合は無いハズだ」


 そう言いながら兄貴が差し出したギアを受け取り、改めて眺めてみる。


 一昔前は電話ボックスみたいな巨大な箱型だったらしいが、最近はヘルメットみたいな被り物型が主流となっており、今私が手にしているギアはヘルメットよりも更にコンパクト化されたものだ。見た感じはヘットギアそのままなのだが、スペックは従来を大きく上回っており、情報処理能力も二、三倍速いとか。


「……てかこれ最新のギアじゃん! アンタこれ何円したの!?」

「ん? ああ、大した額じゃない。それにやるなら最新のギアをと思ってな? 思わず奮発してしまった」


 最新の機種なんて最低5万はくだらないわよ……。それをソフトも2つずつだし。


「別に無理してまで私の分買わなくても……」

「何を言うか。我は主とゲームをするためにこれを買ったんだ。何故主に自腹を強いる必要がある?」

「そ、それはそうだけど……」

「それに、我として主の寝顔が見れただけで腹いっぶべぇ!?」


 兄貴、いや変態の語尾がおかしくなったのは私がその顔に踵落としをかましたせいだ。


「うぐぅぅ……。そ、そんな照れ隠しなど不要ぞ。我と主は一心同体。主の心のうちなど手に取るように分かるのだからな!! さぁ、恥ずかしがらずにわが胸に飛び込んでぐぉふ!?」

「あ、ごめん。鳩尾に入っちゃった(棒)」


 胸を張って変態宣言をする変態の鳩尾にエルボーを食らわせてからギアを付けてさせ、私もギアを付けた。


「い……妹……よ。わ、我は床に寝転がるから……主は我のベッドを使え」

「良いの?」

「何……時間も、床に寝るのも身体に負担が、か、かかるからな。も、もし主の身体に何かあったら、ゲームを勧めた我の面目が立たない。それに、主には『ゲーム』と言うものの面白さを知ってもらいたいのだ」


 痛みに耐えながらも、紳士的なことを爽やかな笑顔で言ってくる兄貴。多分同い年の女性なら確実に落ちてると思う。

 ホント、普段がアレで無ければどれだけ嬉しいことか。



「千津が我のベッドで……。シーツに千津のニオイが……」

「自分の部屋でやるわ」


 顔を高揚させてハァハァ言い出す変態の顔面に踵落とししてそのまま自分の部屋に避難する。


 あのままゲーム開始していたらどうなっていたか……。考えるだけで寒気がする。


 取り敢えず、変態が入ってこないように部屋に鍵を掛けてベットに寝転がる。すると、手足の感覚が徐々に遠退いていき、いつの間にか私の意識は途絶えた。



◇◇◇



 気づいたら、私の目の前に見たこともない巨大な樹が立っていた。


『ふぇ!? 何こ……ってええ!?』


 突然の事に声を上げるとテクノボイスみたいな自分の声が帰ってきたので再びビックリ。とと、取り敢えず兄貴を捜そう。VRMMO初心者の私を一人にしないでほしい。


『お、捜したぞ妹よ』


 横から聞き覚えのあるテクノボイスが聞こえ振り向くと、兄貴が手を振りながら近付いてきていた。


『どうだ? 初の仮想世界(バーチャル)は?』

『ん~……慣れない感覚で酔いそう……。てかゲーム中もテクノ(こんな)声?』

『それであったら雰囲気ぶち壊しではないか。多分スタート画面で喋るなんて考えてないだけだと思うぞ』


 そんなことを話していると、目の前に巨大なウィンドゥが表示された。


【~Humor Liberty Onlineへようこそ~】


『さて、先ずは名前からだな』


 兄貴の言葉に呼応するようにウィンドゥが現れた。


【~名前を入力してください~】


 名前か……。ん~……ここは無難に本名を入れておくか? あ、でもネトゲで本名晒すのはダメなんだよね。だったら名前を捩るか全く関係ないのにするか、か……。ん~悩むなぁ。


『どうした?』


 隣の兄貴が声をかけてきた。どうやらテス選択まで進んでいるらしい。


『いや、名前が決まんなくて……因みに兄貴はどんなの?』

『ふっ……。見て驚くでないぞ?』


 そう言ってテス選択を終えて最終確認のウィンドゥを私に見せる。



【PL:我が愛しの妹を守る最後の砦(ラスト・フォートレス)


 この瞬間、私は無言で【いいえ】を選択した。


『ああ!? な、何をするのだいも――』


 そして近寄ってきた兄貴(変態)の顔、腹、急所に高速で蹴りを叩き込み、


『ちょ、いも――』


 蹴り上げからの回し蹴りに腹に踵落としを決め、


『い――』


 その上首に天○×字拳とク○スチョップを叩き込み、


『痛だだだだだだだだだァ!?』


 素早く腕をとって十字固めを決め込む。我ながらここまでの行動を意図も簡単にやってのけたことに驚いている。流石ゲームだね。


『ちょ、いも、妹! 死ぬから!! 流石にこれは死ぬから!! 流石の我でも洒落にならないからァ!?』

『あ~ら大丈夫よ? 例え変態(あにき)がねじ切れようが、リアルの身体にはなんら影響が無いんだからさ~? いっそ今ここでねじ切れときなさい』

『いや死ぬから!? 激痛でショック死なんて有り得るからね!? そして変態の称号をPLに付けるのはダメな――痛だだだだだだだだだだだ!? な、何か身体をねじ切るが増えたような気がするんだがな妹よォ!?』

『気のせい、よ!』


 とりあえず、変態を(物理的に)説得することに成功。『さ、流石にこれは……。いやでもこれで良いかも……』とブツブツ呟く変態は放っておいて、サッさと決めてしまおう。


【PL:マップ】


『それ自虐じゃ――』

『黙ってて』


 いつの間にか復活した兄貴を再び混沌の世界へご招待しておいた。べ、別に自虐じゃないもん。小学校の頃、先生に名簿で名前の『千津』を『地図』と間違えられて以来、男子にからかわれ続けたことなんかないもん。からかった男子にちょっと調教(おはなし)しただけだもん。


 とまぁおふざけは置いといて、私のPLはこれになった。


【PL:二タ】


 うん、まんま『仁多見』の『仁多』だ。気にしてはいけない。人生諦めも肝心なのだ。


 そんなことは置いといて、次はキャラメイクだ。


 『HLO』は現実の身体をスキャンしてアバターに反映させるので性別はごまかせないが、顔のパーツや体格などは弄くり回すことが出来る。なので、殆どのプレイヤーは自分好みのアバターを作り上げてゲームをプレイするのだとか。


 まぁ変な弄くり回して誰が誰だか分からなくなるのは嫌だから弄らないでおこうかな。あ、でも髪型は変えたいかも。


 私の髪は黒で肩に届くぐらいのストレートだ。友達から『ストレートいいなぁ~』と良く言われるが、私からしてみれば天パの方が羨ましいんだけどね。毛先をカールさせたりワザとボサボサにしたりと弄り放題だし、服とかも合わせやすいしね。短いストレートに合う服って似たり寄ったりだもん。因みに兄貴は天パだ。羨ましい。


 まぁ髪型は後でも変えれるからいいか。んじゃ、何も変更無しでキャラメイク終了。さて、次が一番大事なのよね。


【~本職(オキュペーション)副職(サイドライン)を選択してください~】


 さぁ来たよ今回の鬼門。ここでこれからの戦闘スタイルが決まってくる重要な選択だ。まぁメインのオキュは既に決定済みなのであまり悩まないが、問題はサイドの方だ。


 テイマーって魔物を使役して闘わせるのが基本だからステータス的に魔物に依存する傾向があるのよね。出来ればテイマーの欠点を補えるモノにしたい。取り敢えず、色々なサイドをオキュと当てはめて、納得のいくものを見つけるしかないか。


 攻撃タイプをサイドにすると火力不足な上魔法も連発できなくなるか……。逆に支援だと紙装甲と鈍足……。んー……どちらも避けたい。


 じゃあ無難にアーチャーかな? 弓なら遠距離攻撃で援護できるし、テイマーの鈍足も補える。テイムする際も不意打ちとかで狙えば問題なく倒せるでしょ。


 そんなわけで、オキュをテイマー、サイドをアーチャーに決定。


【~趣味(テイスト)を選んで下さい~】


 次はテスだ。プレイスタイルは遠距離と補助メインだから無理に戦闘向けのテスを選ぶ必要はないね。なので、少なからずネタ系もとっちゃいますか。


 てなわけで、私のステータスはこんな感じになりました。


【~最終確認~

《PL》

  ニタ

《Job》

  調教師:Lv1/弓使い:Lv1

《taste》

  鞭捌き:Lv1/(ふくろう)の眼光:Lv1/体術:Lv1/鑑定:Lv1/毛繕い:Lv1/曲芸:Lv1/錬金:Lv1/製薬:Lv1/料理:Lv1/猫の気持ち:Lv1


 これで良いですか?】


 うん、我ながら何だこのステータス。気になったのを片っ端から選んだらこうなった。



 【毛繕い】はあれだ。紅白のボールに入れたモンスターと一緒に世界を旅するあれのライバルのお姉ちゃんみたいな。毎週何曜日かに行くと毛繕いしてくれるみたいな。そんなイメージで選んでみた。【曲芸】もそんな感じ。


 【猫の気持ち】はほぼ格好付けみたいなモノね。テイマーだし。猫の心情ぐらい読み取れないと、的な。まぁこれの派生で他の動物の気持ちも読み取れるようになる、と見越した上なんだけどね。あとちょっと面白そうだったから。


 【鞭さばき】は……特に理由がない。いや、何か見た瞬間取らずにいられなかったから取ったんだけど。何故か分からない。強いて言えば本能的に……? まぁちょっと説明を読んでみますか。


【~鞭さばき~

  鞭の扱いが上手くなり、更なる連撃と拘束、調教術を身に付けることが出来る。勿論、MOB以外にも使用可】


 おいちょっと待て最後の一文明らかにおかしいでしょ。魔物以外にも使用可ってどゆこと。魔物以外に鞭使う対象が居るってこと? ……ま、まぁ家畜とかにも使えるとかそんなのだろう。間違ってもプレイヤーとかそんなオチはないハズ。そうに違いない。


『おおっ妹よ! 何と素晴らしいテスを選――』

『黙ってろ』


 今後ろで変態の声がしたって? 気のせいだよ。うん。


 今から変えよかな? ……いや鞭さばきが良くなるなら良いかな? テイムするときも使えそうだし。


 そんなわけで不安が残りつつも決定を選択。


【~お疲れさまでした。それでは、Humor Liberty Onlineをお楽しみください~】


 そのウィンドゥと共に、私の視界は真っ白に染まっていった。

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