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こいつは……ヤバい。

【~ステータス~】


《PL》

  ランカ

《Job》

  修行僧:Lv6/拳闘士:Lv5

《Taste》

  腕力強化:Lv6/嗅覚強化:Lv3/脚力強化:Lv7/掴む:Lv7/投擲:Lv6/体裁き:Lv6/遠吠え:Lv3/倹約家:Lv2/かまってちゃん:Lv4/犬の気持ち:Lv11

《weapon》

  スパイクナックル/なし

《armor》

  頭:なし

  身体:刺繍入り拳法着

  腕:毛皮の籠手

  腰:サーペントテイル

  足:ピックレギンス



「うっわ、どれもレベル高いニャ……」


 私はランカのステータスウィンドゥを前に、驚きの声を飲み込むようにハーブティーを飲んだ。今の私のステータスと見比べてもその高さは群を抜いている。低いレベルのテスは上がりやすい所存もあるが、さすが高レベルダンジョンで戦っていただけはあるわね。


 と言うか、やっぱり【犬の気持ち】のレベルが異様に高い……。これは気を付けないと。


 今、私たちは消耗した空腹度と渇水度を回復、ドロップ品の整理を兼ねてフィールドに存在する『セーフティーエリア』と呼ばれるキャンプ地みたいなところに来ている。ここならMOBに襲われることもなく休憩が出来るからすごい重宝するのだとか。


 時間は12時を過ぎたところ。お昼時なので、私たちの他にも何人かのプレイヤーが思い思いの形で休憩を取っているのが見える。その中で、私たちは手ごろな切り株に腰を下ろしてお昼ご飯を食べながら、互いのステータスを確認し合っていると言うわけだ。


 ちなみに換金用のドロップ品と分けた、所謂素材アイテムや食材アイテムは後々の非常事態(ランカが空腹度でぶっ倒れるなど)に備えて、ここで一気に調合や調理を済ませておいた。【料理】はLv7、【製薬】はLv8となかなかの成長を見せている。やっぱりシステム生産より手作業の方が経験値がおいしくて助かる。この調子でいけば、【猫の気持ち】からの脱却もそう遠くない。


「そりゃあんな危ない戦い方しても負けないわけニャ」

「…………どうもわふ」


 ステータス画面を見ながら感心していると、隣で元気のない声が聞こえる。振り向くとランカが体育座りのまま足元に置かれたハーブ焼きをもそもそと頬張っていた。それを物欲しげに見つめいるイヅナにハーブ焼きを分けてあげるその顔、意気消沈と言う言葉がよく似合っているわね。


「たかが一回調教(おはなし)しただけニャ、そんなに気にすることはないニャよ」

「あれが……『お話』……わふか? 拷問の間違いじゃないわふか……」


 よく聞こえなかったけど、さっきのことを相当気にしているみたい。まぁ私もちょっと熱が入り過ぎたって反省している。いつも兄貴やクラスの変態どもにしている癖で、容赦なくやってしまったし。女の子相手にはキツかったでしょうしね。


 しかし、ランカに問題があったのかと聞かれれば、あると答えさせてもらう。


 まず、仲間とのタイミングや連携が重要視されるパーティ戦闘において、単騎でMOBに突入すると言う行為。これはパーティ内の連携や情報共有を無視する行為であり、それは混乱に発展し、相手が強ければ全員がやられてしまうこともあり得る。

 更に、自分の役割を守らなかったこと。これは事前に私が言わなかったのも悪いが、それを差し引いても今回の行動は目に余るものがあったわ。


 パーティ戦闘は、人が多ければ多いほど一人では対処しきれない欠点を補い、穴を埋めれるのが最大の利点。しかし、それはパーティ内の連携の難しさと比例してくる。人が多ければ多いほど、緻密な連携が必要となってくるのだ。その連携を保つために、壁役(タンク)攻撃役(アタッカー)支援役(サポーター)回復役(ヒーラー)等の役割が与えられる。人数が少ない今回で言えば、超近接型のランカはタンク兼アタッカー、私はサポーター兼ヒーラーだ。


 攻撃の主力であるアタッカーとタンクは、そのほかにMOBからのターゲットを保つと言う仕事がある。これは後方のサポーターやヒーラーが安心して支援を行えるようにするためだ。しかし、ランカはワーウルフの群れと対峙した時、私に半分を押し付けて何処かへ行ってしまった。自分の仕事を放棄したのだ。


 幸い、そのワーウルフや今までのMOBは倒せたけども、もし私じゃ対処しきれないMOBに同じことをされたらシャレにならない。彼女には、パーティプレイと言うものを分かってもらわなければ。


 なんてもっともなこと言っているけど、本当は彼女の所業で死に戻ってそのまま行方をくらまされるのが嫌なだけ。知識も殆ど兄貴の入れ知恵だし、こんなことを考えている時点で言える立場じゃないのは分かってる。


 でも、彼女が今後パーティプレイをしていく上で大事なことを分かってほしいと言うのは本心だし、フレンド登録をしたのだから行方をくらまされることはまずないと思っている。


 捻くれてるな、私の心。


「……さて、そろそろ行くニャか」


 そう言って立ち上がり大きく伸びをする。結構座っていたせいか、腰がポキポキっと軽快な音を立てた。ハーブ焼きをお腹いっぱい食べて満足したのか、イヅナはゆっくりとした動きで私の頭に飛び乗り、いつもの場所に収まった。動きがゆっくりだったのは食べ過ぎたせいかしら?


 私が立ち上がってから数秒後、ハーブ焼きを食べ終えたランカがゆっくりと立ち上がり大きく伸びをする。出会った当初のような有り余る元気は何処へやら、今は大分落ち込んでいるみたいだ。本気で調教(おはなし)し過ぎたと不安になってきた。


「まぁ……あの、その、なんニャ……」


 罪悪感に見舞われた私は口をモゴモゴさせながら彼女の頭に手を伸ばし、その頭を軽く撫でた。急に撫でられたことに驚いたのか、ランカはビクッと身を震わせて私を見つめてきた。


 まるで、今されていることが信じられないかのように。


「確かに役割分担は大事だけど……元々私たちは持ちつ持たれつの関係ニャ。私が出来ないことをランカがやってくれるように、ランカが出来ないことは私がやるニャ。だから、ランカは自分が出来る精一杯のことをやればいいニャ」


 そう言ってニコッと笑いかける。雰囲気は語尾によってことごとくぶっ壊されているけど、そんなの気にしないもん。


 私の言葉に少しの間ぼーっとしていたランカは無言のまま小さく頷いた。その時、浮かべていた笑顔は無意識の内かな? なんて思ったけど、考えるのはやめよう。


「さぁ!! それじゃあ出発ニャよ!!」

「了解わふ!!」


 私の声に元気よく返事を返してくれたランカ。どうやら元気を取り戻してくれたみたいね。さて、それじゃあ行きますか!!



◇◇◇



 セーフティエリアを出た私たちは、更なる素材と経験値を求めて昼前よりも少し適正レベルの高いフィールドに来ていた。今まで戦っていたのが草原とすると、ここは森林と言えよう。日光が細い線の様に差し込んでくるのを見ると、大分深いみたいだ。因みにその情報は兄貴から聞いたものだ。完璧に依存してるけど今は気にしないでおこう。


 出現するMOBは主に昆虫系、たまにゴブリン等の人型MOBも出てくる。そして、やはりレベルが高いだけあって、出現するMOBたちも一筋縄ではいかない。しかし、元々の火力が高いランカの猛攻と、戦闘を積み重ねていくにつれて初心者同士ながらも簡単な連携が取れてきたために、危なげな場面は殆どなかったのは運がいいのかな。


 まぁ連携と言っても流石にアイコンタクトは無理で、互いの癖と言うか、攻撃パターンが何となく分かってきた、と連携と呼べるものかどうかは分からないものだけどね。でも、初心者にしては十分だと思う。しかし、それに調子づいてやられるなんて馬鹿な真似をする気はない。


 基本的な戦術は、一匹だけのところを奇襲、反撃のスキを与えないうちにランカの猛攻で倒すか、私が『陽炎』で姿を消してMOBの後ろに回り込み、鞭と矢で攻撃して撹乱させた後、ランカの重い一撃で倒す、の二つだ。


 殆どランカが居ないと始まらず、彼女に負担をかけている作戦ばかりだけど、これが一番現実的なのだ。かなり負担をかけてしまっている分、ランカのサポートにアイテムを惜しむ気はない。彼女に言ったこと同様に私は私の出来ることをする、それがランカのバックアップと言うことだ。


「わっふぅ!!」


 勢いをつけるために発せられたランカの声と共に、今まで相手取っていた体長1mぐらいの茶色い大芋虫MOB『マッドワーム』の顔面に拳が叩き込まれ、特徴であった大きな牙が折れた。そして牙に守られていた口が無防備になり、そこ目掛けて矢を複数に射かける。


 数打てば当たるの基本理念に基づいて放たれた矢の内1本が狙い通り口に突き刺さり、マッドワームが暴れるのを交わしながら近づいたランカが突き刺さった矢に拳を放って深々と突き刺した。


 矢が深く突き刺さったことによりビクっと身を震わせたマッドワームは、奇妙な断末魔を上げて身を振り回し、途中でプツリと糸が切れた様に動きを止め、そのまま地面に倒れた。


 ピクリとも動かなくなったマッドワームを見下ろしながら私たちは大きく息を吐いてそれぞれの武器をしまい、マッドワームから剥ぎ取りを済ませる。



【剥ぎ取り完了】


  ≪マッドワームの前牙×1≫


〈  地面の中で生活する大芋虫の大きな牙。これで土を崩すために大きく、細かいギザギザが付いているため触れると危険。歯の内部には細かい凹凸があり、はめると簡単には抜けなくなる。〉


 これが今マッドワームから剥ぎ取った時に手に入れたアイテムだ。細かいギザギザがあって触れると危険って、まるでのこぎりみたいだね。大きさもなかなかだし、メリエールさんところでいい武器のお店紹介してもらおうかな。



「ニタわふ」


 アイテムの説明を読み終わったとき、ランカがポツリとつぶやいた。いや、正確には囁いた。その声色は真剣味を帯びていて、私の表情も一瞬のうちに引き締まる。


「何か……聞こえないわふか?」


 ランカの言葉に、耳に意識を集中させる。すると遠くの方で、ずん、ずん、と言う微かな足音が聞こえる。それとともに地面が少しだけ揺れていた。そして木バキバキと音を立てて倒れる音、動物、恐らくMOBの鳴き声、そして足音が大きくなっていく。それに合わせて、揺れも少しずつ大きくなっていく。


 そして、身体にかかるこの重圧(プレッシャー)。明らかに今まで出会ったことのないMOBであることが、本能的に分かった。


「……何か来るわふ」


 ランカがそう言って臨戦態勢に入る。それにつられて私も矢を引き絞って、音の方へと構えた。この時、私は心の中で思った。


 『何故、逃げないのだろう』、と。


 しかし、その答えが出るよりも先に、目の前に青々と茂っていた木々が突如倒れ始める。バキバキと言う音を立てながら倒れる木々の後ろに、黒い影がゆっくりと現れた。


 くすんだ緑色の肌を持つ筋肉隆々の体躯に伸ばされ放題の髪。腰のあたりに申し訳程度に巻かれた毛皮の腰巻と皮の紐、その紐には小さな巾着袋が括り付けられている。血管が浮き上がる手には大木を削って作られた棍棒が鈍い光を放っている。


 そして何よりも目を見張るのが、2m半は余裕で超えそうなほどの身長だ。50㎝ぐらい分けてもらいたい、と不意に思ってしまった。


 突然現れた巨人は、長い前髪の間から目を覗かせて私たちを見つめる。そして、目が合う。


 その瞬間、鈍い色を放つ棍棒が振り上げられ、私目掛けて振り下ろされた。

≪テス説明≫


本編に登場したテスで、効果の説明が必要なものを説明していきます。


【投擲】:手に持ったものを投げることが出来る。投擲したものが当たった場合、ダメージが入る。レベルが上がるごとに投擲できる重さの限界が増え、与えるダメージも上がる。


【掴む】:戦闘中に相手を掴むことが出来る。また掴んでる間、相手に少量の持続ダメージを与える。レベルが上がるごとに掴める重さの限界が増え、与えるダメージ量が増える。


【倹約家】:一歩歩くごとの空腹度と渇水度の減りを0.01%抑える。レベルが上がるごとに抑える割合が大きくなっていく。


【遠吠え】:装備者の叫び声に『怯み』の状態異常を付与する。レベルが上がるごとに『怯み』の成功率があがる。


【かまってちゃん】:一発の攻撃で受ける敵の敵対心を0.01%上げる。レベルがあるごとに上がる割合が増え、敵対心上昇専用アーツを習得できる

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