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めんどくさい人はキライです。

前回から遅くなってすいませんm(._.;)m

「ああああ、ありがとうごごごございいましししたぁぁあ!!!」

「どうもですニャ~」


 悲鳴じみた店主の声を背に私は露店を後にする。店主の声に周りから訝しげな視線を集めるが、気にしちゃいけない。


 私たちは今、ランカの装備を揃える為に『生産者通り』へとやってきている。一昨日やってきた時と同じように、客を呼び込む声が絶え間なく飛び交うおり、人だかりも中々のモノだ。


 そんな場所で早速手持ちアイテムを換金したのだが、店主の粋な計らいのおかげで120Gだった所持金がなんと5000Gにまで膨れ上がった。予想を良い意味で裏切ってくれた事に、今の私の顔はいい思いをした時に浮かべる『ホクホク顔』と言うヤツだろう。心なしか足取りも軽い。


「ねぇニタ? さっきの人とはどういう関係わふかぁ?」


 歓喜の余韻に浸っていると、後ろからランカの声が聞こえたので、答える代わりに振り返って首を傾げる。とは言っても、私の目の前には誰もいないんだけど。


 只でさえその容姿で目立ってしまうランカが、況してや下着姿でこんな人通りの多い場所にフラフラ出て行ったら騒ぎになりかけない。なので、イヅナのステルス魔法『陽炎(カゲロウ)』で見えなくしてもらっている。

『陽炎』の効果は、一定時間他プレイヤーは愚か、イヅナの所有者である私にもその姿は見えなくなるのであるが、何故か私にだけ声は聞こえるという良く分からない仕様になっている。因みにイヅナは私にははっきり見えるので、イヅナを頭に乗せたランカが居る場所は把握可能だ。


 あとイヅナのステータスを調べて分かったこと、それは【HLO】にはテイムMOBにもテスが用意されていることだ。

 イヅナの場合、【妖狐:Lv1 狐火:Lv1 尾裂:Lv1】の3つだけ。【妖狐】に関しては恐らく成長補正、【狐火】は今イヅナが使っている幻覚系魔法、【尾裂】も多分成長補正だと思う。数は少ないが、成長していけば自ずと増えていくと考えているけどまだ良く分からない。


 因みに、『陽炎』の持続時間は5分間。その消費MPはイヅナのMP半分と私のMP1/3と、現時点でのコストパフォーマンスはあまり宜しくない。まぁこれから頑張っていけば使い勝手が良くなっていく事を期待したい。


「別に親しい関係じゃないニャ。初日にアイテムとかを買ったぐらいかニャ~?」


 そんなこんなで、尻尾を揺らしながら寝息を立てるイヅナが乗っている空間に居るランカに何気なしに返すと、その場所からうむ~と考えるような声が聞こえた。


「お店入った瞬間店主さんが悲鳴を上げて、お店を半壊させる程逃げ回る程怖がっていたけど、本当に何にもないわふか?」

「アイテムを買ったことと、ちょっと色々と調きょ……じゃなくて調教(おはなし)しただけだニャ」

「そっか!! ならあの人いい人わふな!! ただお話ししただけで定価の1.5倍で買い取ってくれるなんてなかなかいないわふよ!!」


 今ここで確実に間違いないと言えること、それは私とランカの中で『調教(おはなし)』の意味が違うことだろう。


 因みに1.5倍は私が強要したことではない。店主さんが「いいいい1.5倍で買い取るからもう来ないで下さいおねがいします!!!!」と土下座させ……されたから仕方がなかったのだ。


 私の言葉をどう解釈したのか、パァッとランカの声色が変わり、眠りこけるイヅナが上下に激しく揺れる。……飛び跳ねて喜んでいるのかな? あと上下に揺さぶられながらも一切起きる気配がないイヅナ。図太過ぎでしょ。



 と、そんなこと今はどうでもいいわね。取り敢えず、『陽炎』が切れる前に防具店を見つけないと。



「どいたどいたどいたぁ!! エカチェリーナ様のお通りだぁ!!」


 その時、ガヤガヤと喧しい通りに怒号が雷鳴のごとく轟いた。その怒号に思わず尻尾を逆立てて、声のほうを見る。


「おら退け!! 邪魔だてめぇら!!」


 そこには、性能よりもデザインを重視したけばけばしい鎧の男たちが近くのプレイヤーを威嚇しながら進み、その後ろから赤いドレスローブの女性がその後を悠々とやって来ていた。


 容姿的にはものすごく美人。長い金髪を靡かせながら悠々と進むその姿はまさにお姫様だ。いや、その容姿だけでなく、彼女の周りに群がる男性プレイヤーたちがそのイメージに拍車をかけているのかもしれない。


「エカチェリーナ様!! 今日はどちらへ行かれるのですか?」

「私がお供いたしますぞ!!」

「いや、俺がお守りします」

「いや僕が!!」

「私が!!」


 あんたら何処ぞのおとぎ話か何かですか? 一人の姫に気に入られようと空回る求婚者にしか見えない。と言うか、ただでさえ人が多い生産者通り(ここ)で騒がないでほしい。


「……ああもううっさいわね!!」


 そんなことを思っていたら、彼らの中央に居座るエカチェリーナ……様いる? まぁいっか。取り敢えずその人が我慢の限界と言いたげに彼らを怒鳴りつける。それに今まで馬鹿みたいに騒いでいた男たちの喧騒がピタリと止まり、一瞬固まった後、全員が彼女に頭を垂れる。何処ぞの王国騎士団かお前ら。


「もも、申し訳ございませんエカチェ―――」

「私、うるさいことが一番嫌いなんです!! 前にもそう言ったはずですよ!! それを知っておきながらそのような醜態見せるなんて……もういいです、あなたたち追放」

「は―――」

「そ、そんな!!」


 『追放』って言葉に思わず声が出てしまったが、男の人の声で周りには聞こえなかったみたい。それよりも、エカチェリーナの追放と言う言葉に騒いでいた男は愚か彼女の周りを取り囲んでいる男たちの顔にも緊張が走る。言い渡された男たちは悲鳴じみた声を上げながら顔を青くし、彼女の足に縋り付くようにに懇願し始める。


「そ、そんなエカチェリーナ様!!」

「お許しを!! どうかお許しを!!」

「私はあなた様のことを思って―――」

「さっさと摘み出しなさい!!」


 いい加減イラついたのか、エカチェリーナがそう怒鳴り散らすと彼女のわきに控えていた男たちが地べたに這いつくばる彼らを無理やり立たせ、ズルズルと引き摺って人混みの中から連れ出していく。その間も男たちの許しを請う声が聞こえるが、彼女がそれに応えることはなかった。


「……ニタ?」


 今までの光景に呆気にとられていた私の袖が引っ張られ、耳元で心配そうなランカの声が聞こえた。その言葉に我に返った私の耳に、再び彼女の声が聞こえる。


「取り敢えず、早くここを離れた方がいいわふ。さっき、あのエカチェリーナって人が一瞬こっちを見たわふ」


 え、何それヤバい。ああいうのに絡まれるとめんどくさいし、只でさえ魔法の持続時間が押してるのにあの人に絡まれでもしたら確実に魔法が解けてしまう。


「分かったニャ、じゃあさっさと移動し―――」

「何処へ移動するのですか?」

「ひぎゃ!?」


 突然後ろから声をかけられて変な声が出てしまったが気にせずにくるりと振り返る。案の定、そこにはエカチェリーナが腰に手を当てながら立っていた。その光景に、思わず口が動いた。


「詰んだニャ」

「何に対して詰んだのかしら?」

「あ、いえ、何でもないですニャ。ではこれ―――」

「待ちなさい」


 そう言いながら振り返り際に逃走の準備を図るも、速攻で首根っこを掴まれたござる。そしていつの間にか、彼女に付きまとっていた男たちが私たちの周りを取り囲んでいるし、その分周りの視線が集まり過ぎてツライ。


「あなた、さっき私が追放って言ったとき、不満げに声を上げたわよね?」

「え、いや、そそそ、そんなことは……」


 まさか聞こえてたの? あれすぐに男の声で掻き消されて絶対聞こえないって思ってたのに。だから一瞬こっちを見たのか……と言うか、首根っこ掴んでぷらーん、は止めて下さい、。周りの目が集まっている分、恥ずかしさがヤバいです。


「当然ですわ。私、聴覚強化系のテスを持っていますの。たかがあれ程の叫び声ぐらいで聞き逃すほど軟じゃありませんわ」

「そ、そうで―――」

「それよりも貴女! 絶対的な権限を持つこの私に口答えするつもりとはどういうつもりかしら!?」


 鋭い剣幕を浴びせ掛けながらエカチェリーナは顔をズイッと近づけてくる。その顔に不満の文字がデカデカと浮かんでいた。


 この人、前に兄貴が言ってた【姫プレイヤー】と呼ばれる人だろう。


 ここで説明しておくと、【姫プレイヤー】とは他プレイヤーから好意を持たれ、お姫様のような扱いを受けるプレイヤーのことだ。しかも、度重なる好意によって自己中心的な思考を持ちはじめ、文字通りお姫様のような高飛車な性格になってしまい、「私は姫であり、自分のために他者がいろいろなことをしてくれるのは当たり前」「私の言うことは何でも正しい」と誤解することで、周囲に迷惑をかけていることが殆どだとか。

 兄貴も、できうる限りこういう奴とは関わるなって言ってた。放っておけば、その内誰からも相手にされなくなり、自然に消えていくらしい。


「何黙り込んでいるの? 少しは謝罪の言葉でも言ったらどうなの?」


 私がいつこの人に謝るようなことしたの? と、言いたいけど、言ったら言ったでめんどくさいことになりそう。ここは素直に謝っておこう。


「えっと、口答えしてすい――」

「離すわふ!!」


 頭を下げようとした時、ランカの怒号に似た声と共に腕を強く引かれ、エカチェリーナの拘束から逃れたと思ったら今度は目の前に胸部を覆うインナーっぽい何が迫ってきた。


「ちょ――」


 声を上げる暇もなく、私はそのインナーに顔面を突っ込まれる。胸部だから柔らかいと思ったか? 否、そこは絶壁。そのため、私は鼻を思いっきり打ち据えることに。


「ニタは何も悪いことしてないわふ!! 何で謝らないといけないわふか!!」


 鼻に走る激痛にもがき苦しんでいると、頭上からランカの罵声染みた声が響く。と、言うことは、今私を抱き締めているのはランカ、あのクッション性が皆無の絶壁も彼女のものと言うことになる。


 ……勝った。



「ってランカ!! 魔法解けてるニャ!!」

「わふ?」


 ランカの拘束から逃れながらそう絶叫するが、未だ自分の状況が把握しきれてないランカは可愛らしく首をかしげる。

 その光景に、周りの男は愚かエカチェリーナでさえも顔を真っ赤にして立ち尽くしている。まぁ突然インナー姿の少女が現れたんだもん、そんな顔しない方がおかしい。


「と、取り敢えずこっちニャ!!」


 取り敢えず今この場にいるのは危険なので、ランカの手を取って男たちに突撃。デザイン重視で防御面を全く考えてない防具だったので、無数に空いた隙間を縫うようにすり抜けてその壁を突破。


「イヅナ、もう一回『陽炎』お願いニャ!!」


 ランカの頭に乗るイヅナにそう言うと、イヅナは眠そうにフラリと立ち上がり、小さく一回吠える。これが『陽炎』の発動条件だ。


「き、消えた!?」


 後ろからエカチェリーナの声が聞こえたけど無視して人混みの開けた場所に飛び込んで突破。後ろを振り返ることなくその場を後にした。



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