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ろくでなしの恋

作者: 村瀬ひさり

 誰と付き合っても、たいしたことないなってずっと思ってたんだ。


 ちょっと前まで付き合ってた子は学校の制服が可愛い女子高の子で、連れて歩くのにはもってこいの目がくりんとして可愛い子でさ。チェックのスカートを膝上15センチくらいにしてて、ずいぶん長い紺のソックスと黒のローファーがすんなりした足にムチャクチャ似合ってた。

 髪の毛は一回も染めていないから真っ黒で、肩のところできっちり切ったスタイルがまるで日本人形のようだった。

 だからだ。

 すぐに飽きた。

 いつもの通りの待ち合わせのときにその子とはぜんぜん違うタイプの大人の女で、ウエストがきゅっと絞ってある黒のスーツにハイヒールがバッチリ決まったのを連れて行って、「一緒にどう?」って聞いたら半べそかいて逃げるようにして帰っていった。

 そのあと何度もメールが入って、初めはぷんぷん怒っていた絵文字が付いてきてたのに相手にしてやらなかったらそのうち直で電話を掛けてくるようになってさぁ。

 面倒くさくってね、全部無視してやってたら部屋にまで押しかけてきて、だってさ、女子高校生だよ?そんなそこらへんにいるような女がやるようなこと、すると思ってなかったしさ。

 ていうか、なんか面倒なことになるのがいやだったっていうのもあってキスまででやめといてやったんだから、そんなことまでするなっていったら「抱いてくれ」って。

 あー、だからみんなおんなじだって言うんだ。

 女なんてみんなおんなじ。

 バカかお前、って言って追い返した。

 あ、何?頂いちゃえばよかったって、お前それってヤバイんだっての。

 お前さ、モテナイ君なんだろ。だからわかんないっていうの、な。

 あのな、こういうのに手を出したら後々まで面倒なんだって。なんでって、一回ナニしただけでこれはアタシのって、世界中に触れ回るような勢いになるんだって。コエーじゃん、そういうの。

 で、次に付き合ったのは女子大のお姉さまでさ。

 ああ?さっきの女?

 あれはさぁ、バイトでお願いしたんだって。

 ホントホント、マジ。

 ちょっとね、ミセで顔見知りだったから彼女の真似してくんないってお願いして。まぁそりゃ、その前に『顔見知り』になるくらいのお付き合いはあったけれどさ。2回・・・3回くらい?その程度だって。

 で、その女子大のお姉さまの話。

 いやーやっぱいいとこのお嬢さんはなにやらせても卒がなくてさ、出かけるところは大概ホテルの最上階のレストランだったり流行のイタメシ屋だったり、今度はこっちが連れまわされる側でもうなんていうの、ジャケット着てないと入れないようなとこばっかりではっきり言って肩凝ってきちゃってね。

 お仲間のお姉さま方に見せびらかされたときはもううんざり・・・うるせーんだもん、俺のこの髪の毛にふわふわのパーマかけたら絶対かわいいとかって面と向かって平気で言うんだぜ?

 そんじょそこらの女とはレベルが違ったことは確かなんだけどさ、なんていうかなぁ『ペット』扱いはもうこりごりだよ。

 いや、あっちのほうはイカったんだけどさ、それに後腐れがないって言うのをよく解ってらっしゃるって言うか、初めっからアソビだったのかな?年上の男がちらちら見え始めたらすこぉしずつ離れ始めて、こっちだってそんなに入れ込んでなかったからすぐに別れたけどね。

 だけどさ、次が違ったんだ。

 毎朝駅まで行く道の途中で会うんだ。

 こっちは自転車ですいっと通り抜ける道なんだけれど、その子はそこにある花屋でバイトしてるんだ。あ、バイトだと思う・・・か。ま、とにかくそこで働いてるんだ。

 ショートカットでいつもジーンズはいてる。足元はスニーカーで、まあこれは花屋で働いてるんだもん、当たり前だよね。エプロンは大概がデニムのロゴいり、でも時々向日葵のパッチワークがついてるのをしてるときがある。

 こないだは一抱えもある花束を造ってるところをみた。ピンクの花があっちこっちに散らばってて、なんだっけあれ、白くってちいさなヤツ、ああ、カスミソウ?そうそうそれを束ねててもっと赤い花と一緒にしてた。

 なんかさ、スンゲーかわいいって言うか、新鮮?その花束の中にその子の顔がポンとあったの見てたらこう、ぐっと来ちゃってさ。

 声はかけたよー、それやらないわけないじゃん、俺が。



 デモさ、全然違うの。

 他の女と全然違うの。マジだって、この俺が声かけてんのよ?せめて赤くなるとかしたっていいじゃん。でもさ、シカトなんだって。本気で無視されてやんの俺。

 あ、「いらっしゃいませ」は言ってもらったって。にっこり笑って頭下げてくれたって。

 でもって買いモンじゃねぇってわかったら、あ、いや名前聞いたりいつヒマ?とかそりゃいろいろ聞いていったらさ、キレーに無視。

 笑うなっての。

 俺こんなの初めてよ。

 なにアレって、思うじゃん。だからなんていうの、ムキになってモーションかけまくり。毎日毎日押しかけてって、昨日は母親に買って帰るからって薔薇を1本ラッピングしてもらってさ。これで連続6日間だっての。

 なぁ、そろそろいいと思わねぇ?俺のことちょっとは気になって来たと思わねぇ?

 笑うなよそこで!なーどう思うよ。

 だってさ、ちっともなびかネェ女なんてハジメテだもんさ、どうやっていいかわかんないっての。

 やっと高校生らしいレンアイしてるって、言うなっての。

 絞めるぞコラ。

 うーん、まぁさ、すぐにヤロウとか思わねぇよ、ていうかこっち見てくれるだけでいい。俺の顔見て笑ってくれるだけでいい。それでさ、マックかどっかいって昼一緒に喰うの。夢よ夢、いいじゃんなんかいいと思わねぇ?

 笑うなって言ってるだろうっ、なぁどうよ、俺って可笑しい?



 お前だけだって、こんなこと言えるの。

 なぁ本気のところ教えろよぉ、俺ってイケテない?


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