表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

しろいおうこくの くろいおひめさま

作者: 揺らぐ藻

わたしは おひめさま。


しろくてきれいなかみの おかあさまと。

しろくてきれいなかみの おとうさまと。


ふたりからうまれた まっくろなかみの おひめさま。


しつじのおじさまや にわしのおにいさまも しろいかみ。

パンをとどけてくれるおばさまや きがえをてつだってくれるおねえさまも しろいかみ。


わたしだけが くろいかみ。

みんなとちがう くろいかみ。



ごはんをたべるときの きれいなおさらも。

おへやにかざってある きれいなつぼも。

おしろのそとの あのゆきも。


みんなまっしろで きらきらしてるのに。


わたしだけ まっくろ。



まっくろは いやだ。

なんだか きたないかんじがする。


おふろでいっぱいあらった とれない。

うしさんのおちちをかけてみた とれない。


いやだ いやだ いやだ。


どうして?

どうしてわたしだけ まっくろなの?




あるひ わたしは おもいきって おかあさまにきいてみたの。


どうして わたしのかみは みんなとちがうの?


そうきいたら おかあさまは ふしぎなかおをして。

みんなとおんなじ きれいなかみだよって こたえてくれた。


そんなはずないのに。

だって わたしのかみは まっくろなんだもん。

くらくて きたない まっくろなかみなんだもん。



どうして わたしのかみは まっくろなの?


そうきいたら おかあさまは やさしいかおをして。

おとうさまの こどもだからだよって こたえてくれた。

おとうさまのかみのけも むかしはまっくろだったのよって うれしそうにして。


わたしは すごくびっくりした。

おとうさまのかみのけは まっしろにかわったのだ。



どうして おとうさまは まっしろになったの?


そうきいたら おかあさまは ちょっとこまったかおをして。

おとなになったら まっしろになるのよって こたえてくれた。


そっか おとなになったら まっしろになれるんだ。

わたしは すごくしあわせなきぶんになって まいにちがとってもたのしくなった。

だって まっしろになれるんですもの。




あるひ となりのくにから まっくろなかみのおとこのこがきた。


わたしとおなじ くろいかみ。

せは ちょっとだけ わたしがうえだったけど。


おとこのこは おうじさまだった。

となりのくにの おうじさまだった。


おとこのこは わたしをみると すごくうれしそうなかおで はなしかけてきた。

まっくろなかみを きれいだねって ほめられた。


おとこのこは くらくてきたない わたしのかみを ほめたのだ。

わたしが くろいかみなんてきたないっていうと けんかになった。


すぐに おとうさまとおかあさまがわたしのところにきて わたしをしかった。

おとこのこのほうをみると おとこのこもおじさまとおばさまに しかられていた。


わたしは そのおとこのこのことが きらいになった。



つぎのひ おとこのこがあやまってきたけど ゆるしてなんてやらない。



つぎのひの つぎのひ おとこのこと なかなおりをしなさいって おかあさまからいわれた。

なかなおりのおしょくじかいをするからって わたしはとっておきのおようふくをきさせられた。



だいじなおようふくを あんなやつのためにきるなんて ぜったいにいやだったのに。

むりやりだいじなおようふくをきせてくる おかあさまなんてだいきらいだ。

くろいかみがきれいだっていう あのおとこのこは もっとだいきらいだ。


わたしは こっそりおしろをぬけだした。

まちにいったら へいしのおじさんにみつかっちゃうから わたしはもりにかくれることにした。

おかあさまから あぶないからはいっちゃいけないよって いわれてたけど しるもんか。


もうわたしは おかあさまのいうことなんてきいてやらないんだ。





もりにはいってしばらくして おおきなくまさんをみつけた。

まっしろできれいな おおきなくまさん。


わたしがはなしかけたら くまさんはすごくこわいかおで わたしをにらんでいた。

くまさんがさけびごえをあげて うでをふった。


ぶおんって すごいおとがして きにあたって そのままきがおれる。

すごくふとい きだったのに。

わたしがすっごくがんばっても ぐらりともしないのに。


くまさんが わたしのほうにあるいてきた。

さっきよりも もっとこわいかおだった。


わたしは すっごくすっごくこわくなって ひっしでにげた。


ひっしでにげてたら あしもとのゆきがくずれて ころんでしまう。

あしがずきずきして うごけない。

こわいのよりも ずきずきがつよくなって。


わたしは ぎゅっとめをつぶって いたいのをがまんした。




しばらくじっとしていたら、ずきずきがちいさくなってきた。


がんばっておきあがってみたら まっくらでなにもみえなかった。

まっくろだ くらくてこわい。

やっぱり まっくろはきらいだ。


あちこちさわってみる つめたくてびくともしない。

だんだんさむくなってきて わたしはまた こわくなった。


このままずっとひとりぼっちなのかな?

だんだんふあんになってきて なみだがでてくる。



しばらくして ふあんとさむさとこわさがすごくおおきくなって くらくらしてきた。

からだをだきしめるようにして ひっしにがまんする。



またしばらくすると だれかのこえがきこえたきがした。

ふあんとこわいのがなくなってきて こえをだそうとしたけれど。

なぜかことばにならなくて かわりにおおごえでなきだしてしまった。


きこえるこえが だんだんおおきくなってくる。

こえがすごくちかくできこえたとおもったら こんどはゆきをほるおとがきこえた。


ここからでられるんだ そうおもったとき ゆきががらがらくずれてそとがみえた。

わたしがそとにてをのばすと そのままだれかのてがわたしをゆきからひっぱりだしてくれた。


くろくてまっくらなところからたすけてくれたのは まっくろなおとこのこだった。

まっしろなゆきのなかで そこにいてくれるんだってわかるまっくろなかみ。

ふくも かおも ても どろだらけになってて あちこちがまっくろになっていた。


でも それがなんだか すごくかっこよくて。

もうだいじょうぶだよって そういわれた。

むねのあたりがきゅんってなって くるしくなるかんじがした。 


くるしかったけど いやなかんじじゃなかった。


おとこのこにつれられて わたしはもりをあるく。


おとこのこは すきなどうぶつのおはなしとか おいしいたべもののおはなしとか いろんなおはなしをしてくれた。

わたしはなぜか うんってへんじすることしかできなかったけど。

わたしをはげますためのおはなしだってきづいて なんだかすごくうれしくなった。


おとこのこは ずっとわたしのてをにぎって つめたくなったわたしのてをあたためてくれた。

おとこのこのてもつめたくなってたけど おしろにつくころにはぽかぽかあたたかくなっていた。




おしろにかえったわたしは おとこのこといっしょに すごくおこられた。

おとこのこに ごめんねってあやまったら きにしなくていいよって ほほえんでくれた。

すっごくどきどきして かおがすっごくあつくなった。


そのあと おとこのこは おじさまとおばさまにつれられて かえっていってしまった。

さびしかったけど またあいにくるよって やくそくしてくれた。


はやくまたあいたいなあ。





わたしは おひめさま。


しろくてきれいなかみの おかあさまと。

しろくてきれいなかみの おとうさまと。


ふたりからうまれた まっくろなかみの おひめさま。


しつじのおじさまや にわしのおにいさまも しろいかみ。

パンをとどけてくれるおばさまや きがえをてつだってくれるおねえさまも しろいかみ。


わたしだけが くろいかみ。

みんなとちがう くろいかみ。

でも わたしとおうじさまは せかいでふたりだけ くろいかみ。


まっくろで かっこよくて すっごくきれいな くろいかみ。


でも まっくろなかみはおとなになったら まっしろになるらしい。

いやだ ちょっとだけいやだ。

まっしろなかみもだいすきだけど まっくろなかみもだいすきだもん。


わたしは もったいないきぶんになって まいにちがとってもたいせつになった。

だって おとなになったら まっしろになるんですもの。


あるひ わたしは おもいきって おかあさまにきいてみたの。


どうして まっくろなかみは まっしろになってしまうの?

ずっとまっくろなままでも いいのに。


そうきいたら おかあさまは くすくすってわらいだして。

まっしろでもまっくろでも みんなおんなじ きれいなかみだよって こたえてくれた。


それをきいたわたしは おかあさまといっしょにわらっていた。

人と違う事って、見方によって良くも悪くも捉えられますよね。

私はどちらかというと、個性の強い人の方が好きだったりします。


平凡な人も好きですが、誰も真似できない(真似する人が少ない)というのは、それだけで最高レベルのアドバンテージを得ている事と同義だと思ってますし。


それに、個性が強いというのは、中々見る機会がないので、見ていて面白いです。

予想できない事を平然としているのを見ると、すごく勉強になります。


ではー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ